LAST PUSH OFF THE CLIFF
国会が銀行法を改定しようとしている。銀行の監査監督、リスクマネジメントを国際規制であるバーゼル合意に合わせ、中央銀行の独立性を高める必要性があることは確かだ。しかし、一部の大衆迎合主義の政治家が、よりによって商業銀行の金利に最高限度を定めることを推し進めている。これは崖っぷちのモンゴル経済を突き落とす「破滅」への最後の一歩だ。
金利が高い本当の理由
現在、商業銀行の貸出金利は平均して年22%、預金金利は14%で、これは市場において通貨の供給量に対し借り入れ需要が非常に多いことを示す。経済の基礎となる企業活動に自由はあるものの、財源が乏しく、貸出金利が高いということだ。企業活動が拡大しないから失業率が高く、100万人の労働人口のうち10%の人々が韓国、チェコなどの外国へ出稼ぎに行っている。
鉱物資源、畜産物が多いモンゴルの経済は資金不足で渇き続けている。モンゴルは民主主義、自由経済の道を選び、その歩みはまだ20年と発展途上にある。平均所得はいまだ低く、大きな資産相続者や預金を多くもっている人が少なく、資本家はごくごく一握り。国民がもっているお金が少なく、そして国外からの投資を呼び込むことができないため、モンゴル人は借金で生きるようになっている。
必要以上の資金があり、それを運用したい人々は、資金を必要としている層による新しい価値を作り上げるための事業に投資することによって経済が発展する。この投資を仲介する役割を担う二つの大きなパイプがある。金融機関と株式市場だ。しかし、今日のモンゴルでは金融機関のパイプだけが開放的であり、株式市場のパイプはほとんど閉鎖的であると言っていい。
政府は、ビジネス環境を整備し、すべての企業へ平等に機会を与えなくてはならない。そして労働者を守ることや、企業の環境破壊を取り締まる義務がある。しかし国会議員が自らビジネスに関わり、自分の利益を優先させるのでモンゴル経済は停滞している。
政権の中枢にある者達が隠しだてするようになり、土地などの公共の資産を、私腹を肥やすために取引する。そこに賄賂が横行し、民間企業が力をつけることを妨げている。このような環境で、少数の権力者たちが直接的、間接的に利権を求め、二分して争っている。それで内閣の寿命が半年となった。
政府が安定せず政策に一貫性が無いため、国内企業だけでなく外資企業のビジネスも成長しない。国有企業を私物化する政治家たちが、業績を悪化させ赤字を出す。それを国の財源で補填する。社会で重要な学校、保育園、病院を建てる財源は、彼らによって奪い取られている。そして政府、政党を利用できる権力者の私腹を肥やす。
モンゴルの市場で資金が不足している主な理由は、政府が大きすぎることだ。これは赤字を出し続ける国有企業、公共の資産を食いつぶしている権力者たちを指す。彼らは汚職や賄賂を断つ代わりに、商業銀行の金利に最高限度を定めようとしている。
金利の最高限度を定める
過去、多くの国々が金利に上限を設けようと試みたが、成功した事例はどこにもない。世界銀行の調査によると、1935年フランス、1954年日本、1968年ナミビア、2007年ウルグアイ、2013年キルギスなど世界76カ国でこの金利に最高限度を定める政策を実施してきた。
この政策により、日本やドイツでは低所得者向けの製品、サービスが急激に減った。ラテンアメリカの18カ国の銀行は、様々なコストを補うため顧客から手数料を徴収するようになった(カペラ、ムルシア、エストラーダ、2011年)。しかしアメリカでは金利制限を廃止したことにより、中小企業の資金需要へ応える機会が増えた(ライウェン、2003年)。これにより金利制限がある州から無い州へ人が流入するようになり、金利制限がある州では違法な貸金業が増えた(ボーデンホーン、2007年)。日本では借り入れ申請数が減少し、違法な金融業者からの借り入れが増加した(エリソン、ポスター、2006年)。
遵法精神の強い日本でさえこのような結果が出ている。これがモンゴルならば、金利の最高限度を定める法律が、モンゴル経済を次の危機に陥れるだろう。
金利をどのように下げるか?
政府が金利を定めるのではなく、市場つまり需要と供給の自然の流れで下げる。長期的に金利を下げるためにまず初めに商業銀行の活動を独立させ、市場の自由競争を活性化させる必要がある。そうすることによって新しい製品ができ、銀行のサービスをすべての人が受けるようになる。総所得における利子所得の割合が少なくなる。そしてマイクロクレジット商品の質も改善する。
モンゴルの市場経済における政府の干渉を減らし、賄賂を無くす。最初に国有企業を株式会社に移行し民営化にする。自由に物の価格を決めさせ経営を健全化させる。そうして競争力をつけさせる必要がある。
他方では、金融保護の制度を整備し、国民に金融リテラシーを身に付けさせる必要がある。
これを全て行う過程において株式市場が発展し、資金を仲介する第2のパイプが動きだし、銀行の金利は自然に下がる。
2017年11月22日
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