生活の質をシンプルに

Jargal Defacto
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QUALITY OF LIFE SIMPLY PUT

政府が国民の生活水準を現実的に捉え、継続して生活の質の向上を促進する具体的な政策・方策を打ち出すことは、民主主義国家においては重要な義務である。では、モンゴル政府は国民の生活水準をどのように捉えているのか?国民にとって、政策を決定する意思決定者たちによるその過程は分かり易いものなのか?政策を具体化させる上で現状認識が重要な判断材料となっているのか?統計方法はシンプルでわかりやすく、活用しやすければ、より効率的ではないだろうか。

人間の本能として、「われわれの生活状態を改善しようとする欲求があり、それは母胎からわれわれに埋め込まれ、墓に入るまで決してわれわれから離れることがない」(アダム・スミス)。経済理論では、人々は消費を最大に増やすことを選択するとみなされている。また、他人のお金を自分のものと同様に節約して使う人は誰もいない。政府のお金は政府のものではなく、納税者のものなのだから、国家予算の運用を国民は監視し、効率的に運用するように政府に要求する権利がある。

モンゴルの現行統計方法

モンゴル政府は国民の暮らしを明らかにするために、国民の生活水準を消費に応じて順位付け、貧困、非貧困と分類している。貧困とは、低所得かつ低学歴で健康的に弱く、食糧や栄養、物やサービスが不足し、政治的な意思表示の能力が低い人々を言う。また、貧困の人々は、インフラへのアクセスビリティが低く、自由が制限され、生活が脆弱である。

国民の月間消費量は、金銭的および非金銭的な指標で計算される。住居条件、住所の明確性、識字、健康と食糧栄養状況などは非金銭的な指標であるが、実際の消費量を月単位、もしくは年単位で測定するには、調査費用が高くなってしまう。

国民の生活水準を収入によって測定することも容易ではない。なぜならば、モンゴルの全世帯の3分の1の収入は、季節的であり、農牧業、建築業、道路などの建設業に依存しているからである。収入の変動が激しく、また、実際の収入より低く申告するなど、生活水準を収入で測定することは困難であるという。

世界銀行など国際機関は、貧困計算手法の包括的な適用を推奨している。これには、食糧と非食糧、住居、耐久消費財、燃料、エネルギーなどの消費を含む。しかし、これらすべてが実際に使用されたかどうか、インフレがどのように計算されたか、価格規制、補助金がどうだったか、そしてそれが実際、世帯にどのように分配されているかを測定することは必ずしも容易ではない。

そのため、モンゴルでは、貧困ラインというたった1つの境界線を設定している。食糧貧困には、成人1人の1日のカロリー摂取量および「食品バスケット」の40%未満の使用を想定する。2016年に行われた最後の測定では、モンゴルの人口310万人の29.6%にあたる907,500人が貧困であった。

国民を消費に応じて5つに均等に区分し、「貧困」から「裕福」まで順位付けた。これはどれくらい現実味があるのか?実践的に意義があるものなのか?以下は、一人当りの月間消費量を分類した国家統計局が発表した表である。

誰にでもわかり易く、使いやすく

スウェーデンの医師ハンス・ロスリングは、世界の人々の生活を所得水準で示すシンプルな手法を提唱した。彼は世界の多くの国、特にアフリカで長期に渡り活動し、多種多様な病気について研究し、奮闘し、貧困の根源を良く知るようになった。

ハンス・ロスリングは、世界の所得水準を4つの階層に分け、飲料水のアクセシビリティ、交通手段、エネルギー(電力)、食糧、ベッドなどの要素を写真で示し、誰にでも分かりやすく明示した。これは多方面で有用なものとなった。

レベル1:世帯一人当りの1日の所得2ドル(6,000MNT)以下。

レベル2:1日の所得8ドル以下(24,000MNT)

レベル3:1日の所得32ドル以下(96,000MNT)

レベル4:1日の所得32ドル以上である。

例えば、飲料水の場合、レベル1の人々は井戸から裸足で水を汲む、レベル2の人々は自転車で汲む、レベル3の人々は集中した給水所から、レベル4の人々は、自宅で蛇口をひねれば水が出るという具合である。世界人口70億人のうち10億人はレベル1、30億人はレベル2、20億人はレベル3、10億人はレベル4にそれぞれ当てはまると推定する。レベル4では、世界中の人々は基本的に大差がなく、似たような環境で生活しているという。

モンゴルは、写真を使った誰もが分かりやすいこの手法にトイレという要素を加えて使用し、国民の生活水準を、県、郡、区で評価すれば多くの面で有意義となる。このように評価できれば、私たちは当該行政地区に居住している住民の生活の質を正確に把握できるようになる。したがって、生活の質の改善や向上のために行政の適切な政策立案、施行、効果を評価できるようになる。また、ガバナンスのマネジメントの改善においても有用であり、大きな変化をもたらすことができる。「測定できないものは管理できない」という言葉がある。公式な統計手法を用いて測定および評価できるのは、統計学者だけかもしれない。

ハンス・ロスリングの調査で、レベル1からレベル2に移行するには平均20年必要で、これは一世代に相当する。次のレベルに移行するにはそれより短い時間で到達できるという。また、レベルアップするには、その国の保健、教育の質、発展水準が最も重要な役割を果たすと指摘している。生活の質をシンプルに測定し、理解することは、国や地域、個人の成長において、目に見える変化を加速度的にもたらす。

2021年3月29日

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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