今回、フレルスフ大統領がイタリアを公式訪問するにあたって、同行記者団の一員となったダムバダルジャー・ジャルガルサイハンは、現地でイタリア副首相兼外務大臣を務めるアントニオ・タイヤーニ氏にインタビューする機会を得た。 ■ 13世紀のマルコ・ポーロの交流について J(ジャルガルサイハン): 今年はマルコ・ポーロの死去700周年にあたります。彼がフビライ・ハーンの宮廷へ到達した歴史的な旅を、今日のイタリアとモンゴルの関係の基礎としてどのように見ていますか。 アントニオ・タイヤーニ: マルコ・ポーロがフビライ・ハーンの宮廷を訪れた旅は、イタリアとモンゴルの文化が初めて直接出会った出来事の一つです。これは、私たちイタリア国民が何世紀にもわたりモンゴルに関心を寄せ、敬意と驚嘆を抱いてきたことの証でもあります。マルコ・ポーロの経験は、開放性、相互尊重、理解に基づく現在のイタリアとモンゴルの関係を象徴しているといえます。 J: 2024年、イタリアはチンギス・ハーン博物館でマルコ・ポーロに関する展示を実施しました。こうした文化外交は、両国国民の結びつきをどのように強めるとお考えですか。 アントニオ・タイヤーニ: イタリアとモンゴルの文化交流は近年非常に活発に進展しています。外交関係樹立55周年にあたり、チンギス・ハーン博物館で開催されたマルコ・ポーロ展やカラヴァッジョ展など重要な文化イベントが実現し、モンゴルの観客の間でイタリア文化の認知をさらに高める大きな役割を果たしました。今後も、このような取り組みを数多く展開していく予定です。 ■ 二国間関係と55周年 J: モンゴルとイタリアの外交関係は1970年に樹立され、今年で55周年を迎えました。この期間で最も重要な成果をどのように見ていますか。 アントニオ・タイヤーニ: 過去55年間で、イタリアとモンゴルは外交関係、文化交流、経済協力を拡大し、多角的なパートナーシップを築いてきました。貿易・投資分野では、特に機械設備、インフラ、繊維産業において成功裏に協力を進めてきたことが大きな成果です。 また、ハルホリンにおける共同考古学研究プロジェクトのように、文化遺産保護分野の協力も重要な位置を占めています。さらに、イタリア・モンゴルビジネスフォーラムは企業間の実質的なパートナーシップ形成を促し、両国の貿易拡大に重要な機会をもたらしました。 両国関係が戦略的パートナーシップに引き上げられたことを大変喜ばしく思います。これは戦略協力、貿易、投資をさらに強化し、国際舞台における協力関係もより深まることを意味しています。 J: あなたはモンゴルの道路・運輸省のバトボルド官房長と航空関係協定に署名しました。直行便の開設は、経済や観光にどのような変化をもたらすのでしょうか。 アントニオ・タイヤーニ: 本年1月にイタリアとモンゴル間で締結された初の航空サービス協定は、二国間関係における重要な節目となりました。この協定は、国際的な最新基準に沿って航空会社が運航するための包括的な法的枠組みを提供するものです。 両国間で直行便が開設されれば、政府機関だけでなく市民同士の交流、経済・貿易の往来が拡大し、関係発展に大きな推進力を与えるでしょう。 ■ 経済関係と貿易 J: 2022〜2024年の二国間貿易額は1億5,000万〜1億8,800万ドルの範囲で安定した成長を見せています。イタリアは、ヨーロッパにおけるモンゴルのカシミヤの第二位の輸入国です。私たちは、原料輸出から付加価値の高い製造パートナーシップへどのように移行できるのでしょうか。 アントニオ・タイヤーニ: イタリアはモンゴルを、特にカシミヤなど重要な原材料供給国として位置づけています。近年、経済関係は拡大し、イタリアの輸出も増えており、この事実がそれを裏付けています。 私たちの業界団体は、モンゴル側パートナーと協力し、ファッションや縫製・ニット製造に関する研修プログラムを実施し、2025年2月のミラノ・ファッションウィークにモンゴル人デザイナーを参加させるなど、文化交流の取り組みを始めています。次のステップは、共同工場の設立です。 イタリア企業は、モンゴル国内の製造業発展に向けて技術支援や技能育成に協力する用意があります。モンゴル大統領のイタリア訪問時に開催される経済フォーラムや、「Made in Italy」機械設備の需要増からも、両国が新しい戦略的経済パートナーシップへ進んでいることが示されています。 J: 2020年には、モンゴルの未加工カシミヤ輸出の80%をイタリアが占めていました。縫製、ニット、皮革加工分野におけるイタリア投資の可能性をどう見ていますか。 アントニオ・タイヤーニ: モンゴルはイタリア人投資家にとって非常に有望な市場であり、特に縫製産業の改革を進める「ホワイト・ゴールド(白金=カシミヤ)」イニシアチブが大きな後押しとなっています。イタリア企業は、イタリア大使館やCDP、ITA、SACE、SIMESTといった機関の支援のもと、最新技術、高品質な皮革・繊維加工技術、デザイン、研修ノウハウを持ち込むことができます。これはモンゴルで付加価値を生み、同時にイタリアのサプライチェーンの信頼性と持続性を強化します。 J: イタリアとモンゴルの繊維技術センターが設立されています。このような技術移転モデルを他分野へどのように広げることができるでしょうか。 アントニオ・タイヤーニ: ACIMIT(イタリア繊維機械工業会)とイタリア貿易庁の支援で設立されている同センターは、技術提供、研修、長期的な製造協力を組み合わせた優れたモデルです。このモデルは、イタリアが国際的に強みを持つ、農業生産、再生可能エネルギー、廃棄物管理、建材、持続可能なインフラの分野でも応用できます。 基本原則はシンプルで、「知識移転」、「現地能力強化」、「長期的利益を生むパートナーシップの構築」です。 ■ 今後の協力の展望 J: 今後10年間、イタリアとモンゴルの協力で最も可能性の高い分野は何でしょうか。 アントニオ・タイヤーニ: 繊維・皮革産業に加えて、再生可能エネルギー・グリーン技術、農業・食品加工産業(「健康的な食」を掲げるイニシアチブとの連携)、持続可能なインフラ・都市開発、環境配慮型エンジニアリングソリューションの4分野が特に有望であると考えています。 これらは、イノベーション、持続可能な発展、共通の価値観に基づいた戦略的協力の柱となるでしょう。…
ECONOMIC FEVER 直近でトゥグルグの対米ドル為替レートは3.4%下落している。1999年1月に1ドル=1,000トゥグルグだった為替レートは、2016年5月に1ドル=2,000トゥグルグ、2017年1月に1ドル=2,500トゥグルグまでトゥグルグ安が進行した。過去2年間で見ると2,500トゥグルグで落ち着いてはいる。もし、1ドル=2,500トゥグルグというレートが適正で、人間の体温で例えるならば、モンゴル経済は少し発熱し始めている状態だ。 人間が熱を出した時は、薬を飲めば一時的に下げることができる。経済の熱を下げるならば、モンゴル銀行が外貨準備高を減らし、トゥグルグ高を誘導するということである。しかし、モンゴル銀行がドルを放出してトゥグルグの下落を止めようとしないことに、多くの人、特にドル建てで融資を受けている企業が不満を募らせている。 熱は一時的に治まるが、根本的な原因を突き止めて治さなければ、病気は完治しない。モンゴル経済が熱を出すようになった本当の原因を見つけ出し、改善しなければ、モンゴル銀行が外貨準備高を減らしてもトゥグルグの価値は下落し、ドルレートの上昇が進み、経済の低迷は続く。 発熱の外的要因 アメリカ合衆国の連邦準備制度理事会は、政策金利を2.5%まで小幅に引き上げてきた。また、トランプ政権が行っている政策により、アメリカに進出した外国企業は自国へ資本を戻し始めた。これも世界中でドル高になっている要因だ。例えば、トルコリラ、アルゼンチンペソは暴落した。 ロシアは欧米諸国から経済制裁を受け、ルーブルのレートを維持するためにガソリン、燃料の輸出価格の引き上げを始めた。中国の人民元の対ドルレートは8%も下落しているが、今のところ石炭や銅、金にかかる関税を引き上げていない。だが、輸入割当制の実施を始めている。 しかし、モンゴルトゥグルグのレートが下落している外的要因は、国内の内的要因と比べて明らかに小さい。 内的要因 モンゴルの国債発行額は、モンゴルの返済能力をはるかに超えている。償還金や金利は外貨で支払われるため、国債がトゥグルグのレートに悪影響を与えている。 モンゴルの国債発行額は277億ドルであり、既にGDPの2.5倍以上となっている。政府が支払う債権の利息80億ドルの支払いのためIMFの拡大信用供与措置を受けて、負債を負債で支払うようになった。…
今日の国際関係の環境において、米国と中国の競争は一時的な貿易紛争ではなく、世界の政治、経済、科学技術、安全保障の秩序を再定義しつつある長期的な戦略的プロセスとして定着しつつある。当初、関税や貿易不均衡をきっかけに激化した二国間の対立は、現在では半導体、人工知能、重要鉱物、サプライチェーン、金融インフラ、軍事・戦略上の配置、地域における影響圏など、多くの分野を含む広範な内容を持つものとなっている。 この状況は、モンゴルにとって特別な重要性を持つ。モンゴルは地理的にはロシアと中国という二つの大国の間に位置し、経済的には海外市場、原材料輸出、輸送・物流の出口に高く依存しており、外交政策の面では「第三の隣国」政策を通じて政策上の機動余地を維持しようとしてきた国である。したがって、モンゴルは米中競争を単に二大国間の対立としてではなく、自国の国家安全保障、経済的安定、政策の自立性に直接的および間接的に影響を及ぼす外部環境の大きな要因として捉える必要がある。 重要な問題は、モンゴルがどちらか一方を選ぶかどうかではなく、大国間の競争が深まる中で、自国の国益、主権、戦略的均衡をどのように維持するかという点にある。言い換えれば、モンゴルにとって政策上の基本目標は、競争の一方の側に立つことではなく、競争から生じる機会を活用しつつ、戦略的脆弱性を高めないことである。 米中競争は、すでに貿易の範囲を越えている。関税をめぐる争いは目に見える部分にすぎず、その背後では、技術的優位、軍事・戦略上の配置、サプライチェーンの管理、国際ルールを定める権限をめぐる競争が展開されている。 第一に、技術分野は両国の競争における最も重要な舞台となっている。半導体、人工知能、高性能計算、データ処理インフラは、今後の経済、防衛、情報安全保障の基礎的要素へと変化した。米国は、中国が先端技術にアクセスする機会を制限するため、輸出管理を拡大している。一方、北京は自国の技術的自立性を高めるため、国家政策、資金、製造能力を集中させている。その結果、世界の技術環境は一体的なものではなく、部分的に分断された二つの異なるシステムへと移行する傾向が見られる。 第二に、軍事・戦略上の競争は、東アジア、台湾海峡、南シナ海、太平洋地域に集中している。米国は同盟国およびパートナー諸国との協力を強化し、抑止政策を強化している。一方、中国は自国周辺地域における影響力を守り、米国の軍事・戦略的関与を制限しようとしている。これがモンゴルに直接的な軍事的脅威を生んでいると結論づけるのは時期尚早である。しかし、地域の安全保障環境の不安定化、大国間の不信感、軍事化の傾向が強まることは、モンゴルの外交政策の余地に間接的に影響を及ぼす。 第三に、重要鉱物とサプライチェーンの問題が、地経学的競争の中心に入ってきた。レアアース、銅、リチウム、ニッケル、コバルトなどの原材料は、グリーン転換、先端技術、防衛産業の基本的な資源となっている。中国は、これらの加工および供給の多くの結節点において優位な地位を占めている。そのため、米国、欧州連合、日本、韓国、インド、オーストラリアなどの国々が供給源の多角化を目指していることは、モンゴルに一定の機会を開いている。 しかし、すべての機会はリスクを伴ってやって来る。モンゴルは重要鉱物の資源を有しているが、内陸国であり、加工能力は限られており、輸出物流は依然として近隣諸国のインフラ、国境、輸送政策に依存している。したがって、この分野における外国の関心を直ちに戦略的優位と見なすよりも、インフラ、加工、品質、投資の安定した環境を整備する現実的な機会として見ることが適切である。 近年、米国と中国は貿易上のいくつかの問題について一時的な合意に達し、関税圧力を部分的に引き下げた。これは世界市場に一定の落ち着きをもたらした。しかし、それは両国の競争の根本原因が解消されたことを意味しない。むしろ、短期的な経済的圧力、国内政治、サプライチェーンのコスト、市場の不安定性を考慮して行われた、戦術的性格を持つ調整と見る根拠がある。 米国は、中国の技術的成長を国家安全保障上の脅威と見続けている。中国は、米国の輸出管理、制裁措置、同盟ネットワークを、自国の発展を妨げる政策と見続けている。台湾、半導体、人工知能、重要鉱物、太平洋における影響圏などの問題は、依然として解決されていない。 したがって、モンゴルは貿易面での一時的な沈静化を、外部環境が安定したと誤って読み取ってはならない。むしろ、それを経済の多角化、輸出回廊、重要鉱物の加工、第三の隣国との協力に関する具体的なプロジェクトを前進させるための、可能性のある時間的な窓として活用する必要がある。 モンゴルにとって、時間そのものが戦略的資源である。大国が一時的に息をついている間に、小国は政策を整え、インフラを前進させ、リスクに対する防護を厚くしなければならない。次の緊張局面が始まってからそのような措置を取ろうとしても、手遅れになっている可能性がある。…
「貧困のパラドックス―国民に届かない経済成長」(デファクトガゼット日本語版No.376)という記事で、私は“国有企業は100社を大きく超えており、その3分の1は赤字で運営され、財政を食い物にし、民間投資を圧迫している。エネルギー価格を補助金で抑え込んでいることは、投資シグナルを歪め、財政赤字を拡大させている”と現実を評価した。 国有企業の現状 2025年時点で、国有および国が出資する企業は109社あり、そのほぼ3分の1にあたる43社が慢性的な赤字状態にある。多くは3年連続で赤字を出し、収支は赤字のままである。2024年、国有企業は合計26兆トゥグルグの収入を得たものの、負債はほぼ2倍に増加し、11兆トゥグルグに達した。 これは2026年の国家予算(32兆9000億トゥグルグ)の3分の1に相当し、国全体の債務の24%を占めている。エネルギー部門が最大の「吸い上げ役」となり、補助金価格で運営される企業の損失を国家予算から補填し続けている。2024年11月に料金を引き上げたことは一つの前進ではあったが、財政赤字を完全に解消するには至っていない。 なぜ非効率に運営されているのか その原因は構造的かつ政治的なものである。民間企業は利益と競争によって運営されるが、国有企業は「ソフトな予算制約」の下で運営されている。すなわち、赤字は納税者の資金、または貸借対照表の外にある保証によって補填される。経営陣には政治的任命が行われ、業績よりも縁故や支援関係が重視される。 エネルギー、輸送、鉱業などの主要部門では競争が存在しないため、コスト削減や改革への圧力がない。エネルギー補助金は投資のシグナルを歪め、民間投資家を遠ざけ、国家を「吸い上げ役」にしている。その結果、国家予算を吸い上げ、民間部門を締めつけ、鉱業収入に依存する経済の脆弱性を高め続けているのである。 公約が多く、行動はゼロ:政治資金の源泉 1990年代以降、歴代政権が国有企業の改革と民営化を公約してきたが、国有企業の数はむしろ増え続けてきた。初期のバウチャー民営化では、一部の資産が国民に渡されたものの、戦略的企業は国の管理下に残された。2000年代以降、何度も計画が発表され、近年では2028年までに18~20社を民営化し、モンゴル証券取引所を通じてその10~66%を売却し、3兆7000億トゥグルグを調達するとの約束がなされた。エネルギー分野の44社を統合したエルチスト・モンゴルという持株会社も、実質的な変化を生み出せず、完全に行き詰まった。 理由は単純である。国有企業は、政権与党や公務員にとって信頼できる資金源となっているからである。党に忠実な人々への職場、同盟者への契約、不透明な調達、配当などを通じて、政治的ネットワークに資金を供給している。この利害集団、すなわち政治家、高官、内部の従業員らが改革に反対するため、公約は選挙用の芝居になってしまうのである。 成功事例 この行き詰まりは、勇気ある民営化によって打破することができる。例えば、英国におけるマーガレット・サッチャー政権のブリティッシュ・エアウェイズの民営化である。1980年代初頭、ブリティッシュ・エアウェイズは巨額の赤字を抱え、従業員数も多い国有航空会社であった。これを1987年2月11日にロンドン証券取引所で株式公開したところ、公募は11倍に達した。…
【過去10年間で14万世帯を住宅取得に導いた住宅ローン制度は、実際のコストを隠し、市場を歪め、金融政策の効果を弱めてきた。今、モンゴルは需要に基づくモデルから、供給に基づく政策へ移行する必要がある。】 過去10年余り、モンゴルは住宅へのアクセスを拡大するにあたり、一つの主要な手段に依存してきた。それが、住宅ローンの優遇融資であった。この期間に、10兆7000億トゥグルグの資金供給によって14万世帯を住宅取得に導いたことは、確かな成果である。 しかし、この成果がどのような代償によって生まれたのかという問いを、今日、必ず提起すべき時が来ている。市場金利が年20%を超えている中で、6〜8%の融資を供与し、その差額を予算から負担していながら、その会計を中央銀行のバランスシート上に置いてきたこの制度は、実際のコストを隠し、市場のシグナルを歪め、金融政策の効果を弱めてきた。 歴代のモンゴル銀行総裁らは、この制度を国家予算へ移管すると約束してきたが、実行することはできなかった。モンゴル銀行の新総裁であるS.ナランツォグトもこの問題に言及し、住宅ローン制度を段階的に政府へ移管する必要性を強調した。 国際通貨基金もまた、この種の制度を中央銀行のバランスシートから切り離し、国家予算へ移管するよう、何度も勧告してきた。なぜなら、中央銀行の本来の役割はインフレと金融の安定を担うことであり、優遇融資を配分することではないからである。 しかし、改革が遅れているのは偶然ではない。住宅ローンの優遇融資は政治的に高い支持を得ており、また建設業界や資金調達に関わる利益集団にとっても大きな収益をもたらすため、現在の制度は効果的であるというより、都合のよい制度であり続けている。これは政策上の誤りではなく、制度が生み出すインセンティブの結果である。 この政策は、世帯が住宅を取得する機会を広げた一方で、供給が限られた状況のもとで需要を支援したことにより、住宅価格を押し上げ、インフレ圧力を高める一因となり、金融政策の効果を弱めてきたことを認める必要がある。 供給側を支援するモデル したがって、問題は住宅支援を停止することではなく、それをより効率的な形へ移行することにある。 住宅ローンの優遇融資は、供給が限られた市場において需要を増加させる。ウランバートル市では、インフラを備えた土地の不足や都市計画上の障害などにより、短期間で供給を増やす余地は依然として限られている。このような状況では、融資金利を引き下げることが、価格上昇をさらに加速させる。 同時に、金融システムにも歪みが生じる。商業銀行にとって、住宅ローンの優遇融資は事業向け融資よりも収益性が高いため、資金の流れは不動産分野へ向かい、生産性に基づく投資は減少する。 最も重要なのは、この制度が金融政策の波及メカニズムを弱めていることである。政策金利が上昇しても、住宅ローンは市場の影響から切り離されたままである。住宅専門銀行を設立することは、適切な規制がない場合、市場原理に基づかない新たな資金供給ルートを生み出し、状況をさらに複雑にするリスクがある。…
モンゴルの経済統計は一見するとかなり良好である。2024年の実質GDP成長率は5.1%、2025年は5.5%となった。一人当たりGDPは7,000ドルを超え、モンゴルは高中所得国の区分に入った。鉱業、サービス業、政府支出がこのマクロ的成果を形づくったのである。だが、2024年の多次元貧困指数によれば、人口の26%が貧困の状態にある。さらに、貧困線をわずかに上回る脆弱層に属する人々まで含めれば、実際の数字は人口の3分の1に達する。 これは統計の誤りではない。政策の誤りである。成長の果実をごく一握りの者だけが享受している一方で、大多数の人々は貧困に喘ぎ、より高い賃金を求めて海外へ移住し、政府に対する信頼は低下し、社会的不満は増大し続けている。 この明白なパラドックスは、制度派経済学に基づくインセンティブの機能不全によって説明することができる。政治資金が不透明であるとき、資源配分を歪めるレントが生じる。その結果、企業は生産性によってではなく、政治に食い込む機会やアクセスによって競争する傾向を強め、民間投資と雇用の成長は鈍化する。このような体制の下では、経済成長と貧困が並存しうる。なぜなら、成長を個々の家計にまで伝達する仕組みが、構造的に弱いからである。 その原因 第一に、税と社会保険料の負担が極めて重い。雇用主が負担する社会保険料は先進国並みに高く、それが先進国よりもはるかに低い賃金水準に課されているため、正式な雇用を生み出すことが非常に高コストになっている。企業は小規模のままにとどまるか、あるいは地下経済へ移行している。若者は失業するか、国外へ出て行っている。 第二に、民間部門の雇用が不足している一方で、公務員の数は増え続けている。多くの人が事業を起こす代わりに政党員となり、公職を求めている。 第三に、国有企業は100社を大きく超えており、その3分の1は赤字で運営され、財政を食い物にし、民間投資を圧迫している。エネルギー価格を補助金で抑え込んでいることは、投資シグナルを歪め、財政赤字を拡大させている。 第四に、最も深刻な原因は、政党資金の不透明性である。巨額の未公表の「献金」は、入札、プロジェクト、住宅および事業向けの優遇融資、さらには公職そのものを「買う」ために使われるようになっている。まさに「権力は腐敗し、絶対的権力は絶対的に腐敗する」という状況である。政党の資産と資金調達が秘密にされているため、政治・経済エリートは国家を自らの目的のために利用し、司法を歪め、一般市民は正義を信じなくなっている。その結果、民間部門の活力の弱さ、パトロネージ政治、移住、そして固定化した貧困という悪循環が生み出されている。 “経済学者として見れば、これらは個別の問題ではなく、一つの総合的なインセンティブ歪曲の罠である。そのメカニズムは連鎖する歪みとして現れる。すなわち、政治資金の不透明性がレント配分を生み出し、それが市場競争の公平性を損なう。歪められた競争は企業の生産性と成長を鈍らせ、弱い企業ダイナミズムは質の高い雇用を創出する可能性を制限している。その結果、マクロ経済成長と家計の生活の質との間にある構造的繋がりが断ち切られ、貧困は固定化されるに至っている。” モンゴルには資源の豊かさがあり、若い人口があり、成長の可能性がある。だが、これまでに述べた統治メカニズムを是正しなければ、経済成長は不平等をいっそうあおるだけである。 では、どうすべきか 今日から始められる三つの明確な措置がある。…
「低空経済(Low-altitude economy)」とは、3000メートル以下(主として1000メートル以下)の空域を基盤とし、有人および無人航空機(ドローン、eVTOLなど)による低高度飛行活動に重点を置く総合的な経済形態である。これは、航空機製造、低高度運航サービス、支援提供などを含み、ドローンや電動航空機を通じて物流、農業、都市管理、観光、安全保障、緊急支援サービスを担う新しいタイプの経済システムである。 主な担い手と特徴 空域:一般的には地上から1000メートル以内の低高度空域を指し、必要に応じて3000メートルまで拡張可能である。 輸送手段:ドローン(産業用・民生用など)、eVTOL(電動垂直離着陸機)、ヘリコプターなどである。 活用シナリオ:ドローン配送、eVTOLによる旅客輸送、農業、林業の植物保護、航空巡視、航空スポーツ観光、緊急救助活動などである。 低空経済は新たな交通形態と見なされており、中国の産業構造の転換と高度化を後押しし、低高度交通ネットワークを構築するうえで重要な原動力となっている。 最新の産業・政策研究の成果を見ると、世界の低空経済の発展パターンを明確に見て取ることができる。中国、米国、欧州は、現時点で市場規模、技術力、サプライチェーンの完結性の面で先行している国・地域であり、日本、韓国、中東もまた、この分野で有力な競争相手となることを目指している。 低空経済の成長と投資 中国民用航空局および多くの研究機関の予測によれば、中国の低空経済の市場規模は2025年に1兆5000億元に達し、2024年の6702億5000万元と比べて2倍に拡大する見通しである。この飛躍的発展の背後には、政策、技術、資本、人材など多方面にわたる協働の成果がある。 2030年までに、この分野では300を超えるスタンダードが整備される見込みである。低空航空機、低空インフラ、低空航空交通管制、安全監督、活用シナリオという5つの主要分野に焦点を当て、技術標準、管理規範、国内基準、国際ルールを統合した「四次元統合」型の標準供給システムの構築に力を入れる方針である。北京・天津・河北地域では、「北京の研究開発、天津の製造、河北の活用」という協力エコシステムが形成されている。 2025年11月時点で、中国における低空経済関連企業数は15万4300社を超え、2025年の最初の11か月だけで4万2900社が新たに登録された。これは前年同期比152.94%増である。民間無人航空機製品情報システムには969社が登録され、3191種類のサービスが登録され、登録機体数は478万機を超えた。…
駐モンゴル日本国特命全権大使 井川原大使は、九州大学経済学部経済学科を卒業しました。外務省では、アジア局中国・モンゴル課、経済協力局無償資金協力課副課長を務めたほか、在中華人民共和国日本国大使館、在香港日本国総領事館、在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、在アメリカ合衆国シカゴ日本国総領事館領事、外務省アジア大洋州局日中経済課首席事務官、情報分析局上級調整官、在香港日本国総領事館首席領事、外務省アジア大洋州局中国・モンゴル第一課地域首席調整官、在中華人民共和国青島日本国総領事などを歴任しました。 2023年12月より、駐モンゴル日本国特命全権大使として着任しています。 J(ジャルガルサイハン): 本日はお越しいただきありがとうございます。まずは、日本国天皇皇后両陛下のモンゴルご訪問についてお話を伺いたいと思います。今回のご訪問は、ほぼ1週間にわたる歴史的な訪問となりました。このご訪問がモンゴル、そして世界に向けて持つ主な目的やメッセージは何だったのでしょうか。 井川原賢: 本日はお招きいただき、誠にありがとうございます。冒頭からこのような素晴らしいご質問をいただき感謝いたします。今回のご訪問は、天皇皇后両陛下にとってモンゴル国への初めてのご訪問であり、無事に成功裏に終えることができました。 私自身、大使として赴任している国において、天皇皇后両陛下をお迎えできたことは大変光栄なことでした。昨年7月に行われたこのご訪問は、歴史的意義を持つ出来事であると同時に、両国関係に新たな一章を開くものとなりました。 ご存じのとおり、モンゴル国のウフナー・フレルスフ大統領は、訪問期間中、天皇陛下と皇后陛下を心から温かく迎え、特に歓迎式典や公式行事において、両国関係の友好ムードが鮮明に示されました。 また、モンゴル国民の皆さまが心からのもてなしと温かい歓迎でお迎えくださったことは、日本国民に非常に強い印象を与えました。これらの様子は、日本およびモンゴルの報道機関でも広く紹介されました。 J: 日本国内では、この訪問についてどのように報じられ、国民はどのように受け止めたのでしょうか。 井川原賢: モンゴルの報道やSNSを通じて、日本国民はまず、天皇陛下と皇后陛下に対して、モンゴル国民および政府がどれほど敬意をもってお迎えくださったかを知りました。次に、モンゴル側が周到に準備したすべての行事に対し、天皇陛下と皇后陛下が非常に満足されている様子を見て、日本国民も大変うれしく、誇らしい気持ちになりました。 J: 天皇陛下と皇后陛下は、海外訪問の機会がそれほど多くないと伺っています。そのような中で、なぜモンゴルが海外訪問先に選ばれたのでしょうか。 井川原賢: ご指摘のとおり、天皇陛下と皇后陛下は、国際親善を目的とした海外訪問をインドネシア、英国から始め、その後にモンゴルを訪問されました。モンゴルは3番目の訪問国となります。これは、モンゴルを特別に重視し、親しみと敬意を持って接していることの表れではないかと思います。…
モンゴル国政府が2025年12月16日に「経済的自由に関する法律」案を審議し、国会へ提出することを決定したことは、公共の強い関心を集めている。経済的自由という概念そのものは国の発展方向性を規定するほどの基本問題であるため、この法律を制定する前に国民が理解し、議論し、意見を表明することが重要である。 では、経済的自由とは一体何を意味するのか。簡単に言えば、経済的自由とは、国民や企業が自らの財産・労働・資本を活用して、何を生産するか、どのように生産するか、誰に・どの価格で販売するかを、国家の許可を得ることなく自ら決定する権利を指す。利益を得れば自ら受け取り、損失を出せば自ら責任を負うということである。言い換えれば、経済的な意思決定を国家ではなく、市場と個人自身が行う仕組みである。 しかし、経済的自由を「国家がビジネスをうまく規制すること」、「国家が価格を維持すること」、「国家が産業を支援すること」、「国家が市場に介入して均衡させること」と混同することが多い。これらはすべて国家による介入であり、経済的自由はまさにその対極の哲学に基づくものである。自由市場とは、国家が市場のプレイヤーではなく、ルールの執行者・裁判官であるべきだという考え方である。 この観点から見れば、現在審議されている法案には明らかな矛盾が見られる。名称は「経済的自由」であるものの、内容としては「国家がうまく調整すればビジネスは順調に進む」という、柔らかい介入主義的アプローチが優勢である。例えば、法案には国家が教育・医療・インフラ・公共サービス・技術的ソリューションなどの基礎的な市場分野に参与し、資金拠出できると規定されており、これは国家を市場のプレイヤーとして残すことを意味している。これにより国家とビジネスの境界が曖昧になり、汚職や利益相反が体系的に生じるリスクが残り続ける。 もし経済を本当に「完全に自由」にしようとするのであれば、民間が実施できる仕事を国家が行うことを禁じる明確で厳格な条項が不可欠である。「国家の介入を減らす」という一般的な表現は、現実において成果が乏しい。それよりも、「民間が自由市場の原理で実施可能な一切の活動を国家が行うことを禁ずる」と明確に規定すれば、国家介入の実質的な限界が設定される。 また、この法案で最も欠けている重要な点は、価格・為替レート・賃金を市場によって決定する原則がまったく盛り込まれていないことである。価格は市場のシグナルであり、為替レートはリスクと責任の表現である。国家が価格を維持したり、為替レートに介入したりすると、市場は誤ったシグナルを受け取り、品不足、闇市場、汚職が生じる土壌が形成される。したがって、経済的自由に関する法律には「価格・料金・賃金・給与・為替レートは市場の自由な関係によって決定される。国家がこれらに直接的または間接的に介入することを禁ずる」という原則が必ず盛り込まれるべきである。 加えて、国家規制の上限を明確に定めていない点も問題である。「国家安全保障」、「公共の利益」といった広範な概念を用いれば、ほぼあらゆる制限を正当化できてしまい、市場の信頼を損なう。経済的自由を制限するいかなる規制も、必然的で、最小限で、期間が明確で、司法の監督に開かれているべきだという原則が本法案には欠けている。 真の意味で経済的自由を保障するというのであれば、国家がビジネス活動を行うこと自体も禁止する必要がある。国家が営利目的の経済活動を行わず、国有企業・プロジェクト・プログラムを段階的に縮減し、民営化し、市場へ移行させるという基本方針が必要である。これを行わなければ、国家自身が市場の競争者として残り続ける。 このような法律には「国家の経済的基本任務」という特別条項を設け、国家は人命と財産の安全を守ること、環境安全を確保すること、契約履行と財産権は司法を通じて保護すること、公正な競争を維持することのみを任務とする、と明確に示すべきである。それ以外の経済活動に国家が関与すべきではない。これは国際的には「夜警国家(ナイトウォッチマン・ステイト)」と呼ばれている。 近年、モンゴル経済の成長が鈍化し、投資が縮小し、ビジネス環境が不安定になったことは、国家の過度な介入、重複した規制、ライセンス・許認可の負担と直接関係している。このような状況において、経済政策を部分的に調整するのではなく、自由市場の基本原則を法律で保障する必要性が現実的に高まっている。 結論として言えば、経済的自由とは、「国家が調整する」という論理を排し、「国家は保護し、市場が決定する」という原則へ移行することである。「経済的自由に関する法律」がその名称にふさわしいものであろうとするならば、自由市場の根本法でなければならない。 最後に、現実を踏まえれば、モンゴルが教育・医療分野における国家の関与を突然全面的に停止することは不可能である。したがって、これらの分野を国家のみで担うのではなく、民間部門と効果的に組み合わせ、競争と選択肢を増やす方向で段階的に運営していく必要がある。…
今回、フレルスフ大統領がイタリアを公式訪問するにあたって、同行記者団の一員となったダムバダルジャー・ジャルガルサイハンは、現地でイタリア副首相兼外務大臣を務めるアントニオ・タイヤーニ氏にインタビューする機会を得た。 ■ 13世紀のマルコ・ポーロの交流について J(ジャルガルサイハン): 今年はマルコ・ポーロの死去700周年にあたります。彼がフビライ・ハーンの宮廷へ到達した歴史的な旅を、今日のイタリアとモンゴルの関係の基礎としてどのように見ていますか。 アントニオ・タイヤーニ: マルコ・ポーロがフビライ・ハーンの宮廷を訪れた旅は、イタリアとモンゴルの文化が初めて直接出会った出来事の一つです。これは、私たちイタリア国民が何世紀にもわたりモンゴルに関心を寄せ、敬意と驚嘆を抱いてきたことの証でもあります。マルコ・ポーロの経験は、開放性、相互尊重、理解に基づく現在のイタリアとモンゴルの関係を象徴しているといえます。 J: 2024年、イタリアはチンギス・ハーン博物館でマルコ・ポーロに関する展示を実施しました。こうした文化外交は、両国国民の結びつきをどのように強めるとお考えですか。 アントニオ・タイヤーニ: イタリアとモンゴルの文化交流は近年非常に活発に進展しています。外交関係樹立55周年にあたり、チンギス・ハーン博物館で開催されたマルコ・ポーロ展やカラヴァッジョ展など重要な文化イベントが実現し、モンゴルの観客の間でイタリア文化の認知をさらに高める大きな役割を果たしました。今後も、このような取り組みを数多く展開していく予定です。 ■ 二国間関係と55周年 J: モンゴルとイタリアの外交関係は1970年に樹立され、今年で55周年を迎えました。この期間で最も重要な成果をどのように見ていますか。 アントニオ・タイヤーニ: 過去55年間で、イタリアとモンゴルは外交関係、文化交流、経済協力を拡大し、多角的なパートナーシップを築いてきました。貿易・投資分野では、特に機械設備、インフラ、繊維産業において成功裏に協力を進めてきたことが大きな成果です。 また、ハルホリンにおける共同考古学研究プロジェクトのように、文化遺産保護分野の協力も重要な位置を占めています。さらに、イタリア・モンゴルビジネスフォーラムは企業間の実質的なパートナーシップ形成を促し、両国の貿易拡大に重要な機会をもたらしました。 両国関係が戦略的パートナーシップに引き上げられたことを大変喜ばしく思います。これは戦略協力、貿易、投資をさらに強化し、国際舞台における協力関係もより深まることを意味しています。 J: あなたはモンゴルの道路・運輸省のバトボルド官房長と航空関係協定に署名しました。直行便の開設は、経済や観光にどのような変化をもたらすのでしょうか。…
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