GREY COURT 2019年10月13日から18日にかけて、フランスのパリでマネーロンダリングおよびテロ資金供与防止のための国際機関である金融活動作業部会(FATF)の相互審査会議が開かれた。この会議でモンゴル、アイスランド、ジンバブエの3ヵ国を「グレーリスト」に入れたことを発表した。FATFは各国に対して、マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策として何をするべきかについて勧告(40の勧告)を出し、その活動結果を審査(11の審査項目)、報告書を発表している。モンゴルは5つの勧告について未実施なため、審査評価(11の審査項目のうち4つの項目)について未達成と評価された。このことについて、以前私は「グレーに染まった政府」という記事で具体的に触れた。 FATFは2つのリストを出す。1つはブラックリストと呼ばれるもので、特に警戒すべき対象国リストである。もう1つはグレーリストといい、集中監視の対象となる国のリストである。グレーリストに入った国だからといって、ただちに金融活動が禁止されることではない。だが、リスクを評価し、対象国の金融活動において何に注意すべきかを勧告する。その結果、国際的な金融取引を行う海外の金融機関や投資家は、当該国に対して警戒し、取引活動により慎重になる。 グレーリストに入った原因 Ch.フレルバートル財務大臣は、「モンゴルがグレーリスト入りした原因は、自分たちの誤った政策、誤った行動の結果だと認めることをせず、改善もしようとしなかった。最も影響したものは、恩赦法である」と話した。Ts.ニャムドルジ法務・内務大臣は「透明性に関する法案が2015年1月の国会に提出されたが、否決された。しかしその後、ナーダム祭の時に可決された」と話した。 「経済の透明性に関する法」というこの恩赦法は、2015年8月7日から2016年2月20日までの期間で施行された。この法律は、それまで申告していなかった資産(現金、不動産)について、新たに申告し税金を支払えば、刑事事件として責任を追求しない。その情報を秘匿にする。そして、支払う税金の出どころを一切問わない、というものだった。この法律が施行された期間に、8,794人の個人、25,000社の法人、登録されていない448人の合計33兆3千億トゥグルグ、つまりモンゴルの年間GDPを上回る資産が申告された。 FATFのアジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)は、外部の独立した審査機関を設け、モンゴルに対して2017年のマネーロンダリングについて評価した。彼らは審査報告書に何を注意し、改善すべきかを具体的に提示した。しかし、モンゴル政府はそれらの提示された事項を十分に改善できなかったため、今回のグレーリスト入りに至った。 APGの報告書には、「モンゴルは、マネーロンダリングなどの犯罪危機への対策が弱い状況にある(15頁)。同国で最もリスクが高い犯罪は、詐欺、環境犯罪、脱税、腐敗である。次いで高いリスクにあるのが麻薬、商品の違法輸入、組織犯罪、銀行規制に関わる犯罪、強盗である」と指摘されている。 これらの犯罪によって得た収入をモンゴル、もしくは外国で資金洗浄をしている。犯罪による収入は、モンゴル国内の不動産、自動車、機械設備、高価な商品の購入に使われている。 また、「モンゴルでは法人を通じて、とりわけ建築分野で資金洗浄が行われている。贈収賄の資金は、主にその当事者の家族名義の口座を通してやり取りされている。そして外国の銀行、オフショア口座へ資金を移動している。銀行の監視システムにより、それらの不正な資金はモンゴルに戻されることもあるが、稀である。モンゴルの最も弱い分野は銀行である。」と指摘している。 この時期に国際通貨基金が、モンゴルの商業銀行が自己資本比率を積み増す際に、違法行為があったかどうかを外部監査機関に審査させるように要求し、実施されたことは、このAPGの報告書が発表されたことと偶然一致したことではない。この審査結果については、モンゴル銀行(中央銀行)が近々公表すると思われる。…
今、モンゴル経済で最も敏感な指標はインフレであり、簡単に言えば国民の日常的な消費の価格が絶えず上昇している水準のことである。2025年7月時点でインフレ率は8%に達し、中央銀行が目標としている6%を上回り、世帯の購買力に圧力を与え続けている。 今日のインフレに大きく影響した要因は三つある。第一に、食料価格の上昇である。肉、小麦粉、野菜の価格は季節的に変動し、消費者物価のバスケットに大きな負担を与えている。第二に、家賃、電気、燃料価格が上昇し、住宅関連費用が増大している。第三に、モンゴルの消費財の多くは輸入依存であるため、海外市場の変動やトゥグルグ為替レートの変化が直接影響を与えている。 2022年にはインフレ率が15%に達し、近年のピークを記録したが、2024年には5%まで低下した。しかし今年は再び上昇し、8%となった。他国と比較すると、カザフスタンは7%、ジョージアは6%、エストニアは5%であり、モンゴルの数値がやや高いことがわかる。 このような状況下で、中央銀行は政策金利を高水準の12%に維持し、マネーサプライを制限している。しかし中央銀行は真に独立することができず、政治的圧力や政府の短期的な利害に強く縛られているため、インフレを安定化させる力を弱めている。モンゴルでは金融政策が財政支出の拡大や選挙前の政治決定に直結していることが最大の弱点である。 政府もまた、暖房光熱の価格を一気に大幅に引き上げることは避けているが、実際にはこの分野で長年先送りされてきた改革が蓄積した圧力を生んでいる。価格上昇を「補助金」で一時的に抑えているが、最終的には財政赤字を拡大させ、インフレをさらに刺激する要因となっている。 モンゴル政府の対外債務は依然として大きく、国際市場での融資金利が高水準にあることが財政に極めて大きな負担となっている。対外債務の利払いのためにドル需要が増大し、トゥグルグの為替レートに下押し圧力を与える。これが輸入品の価格を押し上げ、最終的には再びインフレを煽る。政府は債務返済のために新たな国債を発行したり、海外から融資を呼び込み短期的にしのいでいるが、これは長期的な安定した解決策ではない。 もし政府が国内債券を発行すれば、プラスとマイナスの効果が併存する。プラス面としては、対外債務の高金利を回避し、為替の圧力を緩和できる。また国内の金融市場を発展させ、投資家に安定的なリターンをもたらす手段を作ることができる。マイナス面としては、国債の過剰発行は銀行融資を圧迫し、民間投資を減少させる。高金利債を発行すれば、市場全体の貸出金利をさらに押し上げ、家庭や企業への負担を増加させる。したがって、国内債の発行は適切な水準で規律を持って行うことが重要である。 モンゴルでインフレを季節的に急上昇させる主な要因は、食料価格、特に肉と小麦粉の価格変動である。したがって、食料システムを単に備蓄の形成だけでなく、備蓄–物流–卸売市場–品質管理を含む包括的な仕組みとして改善する必要がある。肉や小麦粉の戦略的備蓄、冷蔵倉庫、輸送インフラ、透明な卸売取引所の運営、食品安全基準などは供給の安定を保証し、インフレ圧力を緩和するうえで重要である。 モンゴルのインフレの基盤的圧力を減らすもう一つの道は競争政策である。これは少数企業の支配を弱め、価格カルテルを断ち切り、透明性を確保し、中小企業の参入を支援することを意味する。燃料、食肉の卸売、スーパーマーケットチェーンでは意図的な価格上昇が生じており、消費者に直接的な負担を与えている。競争環境を実質的に改善すれば、消費者に多様な選択肢が生まれ、価格安定に重要な効果をもたらす。 結論 短期的には為替変動を安定させ、燃料備蓄を適切に管理することが価格安定に重要である。しかし中期的にはよりシステム的な改革が必要である。すなわち、財政支出を高収入期に過剰に拡大しないこと、外貨準備を増やすこと、食料システムと競争政策といった長期的改革を進めることが必要である。これらを同時に実行できれば、インフレを目標範囲に段階的に抑えることが可能である。 最後に、インフレとは経済の「火」である。この火を消すためには、金融政策を引き締め、財政規律、食料システム、競争政策という四つのパッケージを同時に実施する必要がある。しかし最も重要なのは、政策を実施する機関が政治から独立し、専門的水準で意思決定を行えるようにすることである。さもなければインフレの火を消すどころか、むしろ煽るリスクが残り続けるということである。■
モンゴル国立フィルハーモニーのコンサートホールにおいて、馬頭琴オーケストラによる「モンゴル音楽」シリーズ公演が行われ、有名作曲家および新進作曲家の作品が披露され、観客を楽しませた。 年々規模を拡大している馬頭琴オーケストラは、マエストロD.トゥブシンサイハンの巧みな指揮の下、作曲家E.ドルジスレン、ツェン.エルデネバト、Kh.アルタンゲレル、Sh.オルジバヤル、N.ジャンツァンノロブらの優れた作品を蘇らせ、馬頭琴とモンゴル管弦楽の魅力を国内外の観客に存分に感じさせる素晴らしい夜となった。 プログラムには、Kh.アルタンゲレル作曲「天空の輪」、Sh.オルジバヤル作曲「天界」、N.ジャンツァンノロブ作曲「シンフォニエッタ」、E.ドルジスレン作曲「モンゴルの空間」組曲、ツェン.エルデネバト作曲「大いなる大地」など、馬頭琴オーケストラのための協奏曲が含まれていた。各作品は署名のようにそれぞれ独自の要素を持ち、豊かなテーマ、色彩、思想を備え、モンゴルの民族音楽と世界の古典交響楽の伝統や様式を精巧に調和させ、馬頭琴のこの上もない響きによって満場の観客の心を動かした。 いくつかの作品は、世界的に有名な偉大なクラシック作曲家のライトモチーフやリズム様式を引用し、西洋音楽文化をモンゴル作曲家・指揮者・演奏家の伝統と感性を通して、アジアとヨーロッパの境界を見事に交差させ、多彩かつ極めて独創的な響きを作り出していた。自然現象や両親の恩徳を讃える旋律が響くとき、モンゴル人の心は晴れやかになり、常に前向きに導く音色を聴くことの素晴らしさがあった。また、現代の映画音楽にも適合し得る動きや、冒険、戦闘、抒情、喜悦などの想像力をかき立て、心を震わせる見事な作品も聴かれた。 N.ジャンツァンノロブ作曲「シンフォニエッタ」は、モンゴルの現代の仕事と生活のリズム、変化と変革を繊細に感じ取り、熟考した、強い印象を残す傑作であった。作品には打楽器の鋭く力強い部分が多く、その音が会場に響くたびに観客である我々は思わず身を正して座り直すほどであった。演奏の終わりには、ホールがしばしの間静まり返った後、何が起きたのかと驚嘆するかのように拍手が起こった。クラシック音楽の歴史においても、偉大な作曲家の作品でこのような瞬間が訪れることは後に記録されている。 作曲者は、シンフォニエッタは成長し変化を続ける馬頭琴オーケストラの構成に合わせて書かれたと語っていた。この作品は時計の針の動きのようなテンポを持ち、現代モンゴル社会の変化する姿を見事に映し出した、深い意味を持つ代表的な傑作であった。 馬頭琴アンサンブルは1992年に20人の演奏家の編成で初めて結成された。今日では50人を超える演奏家を擁し、室内オーケストラの規模に達したことから、その名称を「馬頭琴オーケストラ」と改めた。モンゴルのクラシック音楽界の第三、第四、第五世代の作曲家たちは、国内にとどまらず世界レベルに達する才能を示し、この素晴らしい貴重なオーケストラを通して国際的な観客に継続して作品を届けていることは誇らしいことである。 したがって、比類なき二弦楽器である馬頭琴をはじめ、モンゴルの他の楽器を奏でる演奏家たち、国立フィルハーモニー、他のジャンルの音楽家たちのために、音響が優れ、最新設備を設計段階から考慮して備え、どの国のオーケストラでも訪れて共演や録音が可能な、世界水準のホールや施設を整える時が来たのである。アメリカ・デンバー市にあるデンバー芸術センターのボエッチャー・コンサートホールの現代的なホールを手本とすることもできるであろう。 2025年7月18日■
モンゴルのセメント製造業界では、経済的な驚くべきパラドックス(矛盾)が生じている。それは、2025年5月2日にウランバートル市でモンゴルのセメント製造業者協会が初めて開催した「セメント・エキスポ2025」のイベント中に明確に見ることができた。すなわち、現在モンゴルにはセメント工場が7つあり、年間合計で450万トンのセメントを生産する能力があるにもかかわらず、2024年の総需要は230万トン、そのうち25万トンは輸入品、しかも品質に疑問があるセメントでまかなわれていたのである。 さらに、需要を上回る生産能力を持ちながら、新たにセメント工場の建設許可を得ようとする公式の発言もあった。これは、現在の市場を理解していないのか、それとも複数のメガプロジェクトに政府と「協力」しようとしているのか。常識的な論理では納得できない出来事が、この業界でも起き続けている。 業界の分裂 モンゴルの7つのセメント工場は、2024年に合計で220万トンのセメントを供給した。これは前年と比べて12%の増加である。もし生産能力をフル活用して230万トンを追加で生産できていたならば、何千戸もの住宅、何千キロメートルもの道路を建設することが可能だったはずである。それにもかかわらず、同年の総需要の12%を輸入に依存していた。 この矛盾の第一の理由は、中国製セメントの価格がモンゴル国内製の半額であることにある。中国のセメント生産量は年間20億トン、これは世界市場の50%にあたる。これは経済規模によるスケールメリットである。外貨で購入し、鉄道で輸送しても、関税がなければ国内製品より常に安い。地域によっては輸送距離の違いから中国製品の輸入のほうが有利であり、また都市部では国内セメントの貯蔵施設が不足していることも影響を与えている。 第二の理由は、モンゴルの電力供給が安定せず、輸入依存状態にあることである。ロシアの電力網に依存しているホブド県のセメント工場では、2024年に計画外で160時間の停電が発生し、設備の故障・損傷により生産コストが著しく上昇したと、ウェスタン・ホールド社の財務部長N.ハヤンヒャルワー氏が語っている。この業界では、電力価格の急騰と供給の不安定さが相まって、国内セメントの原価が急騰している。 第三の理由は品質の問題である。中国製の輸入セメントは、価格が安いが国際基準より多くのフライアッシュ(灰)を含み、製造日も不明瞭に表示されている。セメントは時間とともに劣化し、6か月以上適切に保管されなかった場合、強度が40%失われるという。しかも、モンゴルの国境には現在セメントの品質を検査するラボが存在しない。国際基準に準拠する国内メーカーは、ダンピング価格で販売される輸入セメントによって不公平な競争環境に追いやられている。 第四の問題は、道路の重量制限である。重量物を運搬する道路に新たな基準を導入したことにより、遠隔地から原料を輸送するコストが3倍に跳ね上がっている。道路建設の際に重量に対応した設計がされておらず、軽量道路ですら質を確保した施工がなされなかったため、破損や事故が頻発している。加えて、定期的な保守や修理がされていないにもかかわらず、突然このような要件が課されたことで、建材メーカーに大きな打撃を与え、コスト上昇から価格にも影響が及んでいる。 そして最後に、2026年からは建材製造に新規許可を出さないと建設・都市開発省の事務次官S.トムルフー氏が発表したことから、誰でも工場を建てられるが、政府と近い関係を持ち、大型プロジェクトを取得できる者だけが生き残り、その他は倒産するという構図が見えてきた。本来であれば、現在の能力の少なくとも70%を活用した後で、初めて新たな工場を建設するのが適切であるはずだ。 解決策 モンゴルは中国と経済規模で競争できないことを認め、建設の柱であるセメントの製造に特化した戦略的保護を実施する必要がある。 新たな工場を建設する代わりに、あらゆる資源を活用して現在ある工場の能力を最大限に活かす努力をし、設備を更新し、省エネ性能を高め、最新の品質管理システムを導入し、輸送・ロジスティクスのインフラを整備し、モンゴルの気候に適した特殊なセメント配合の研究開発に力を入れることが望ましい。…
ポーランド人は非常に忍耐強く、才能にあふれ、産業と文化において豊かな伝統を有する民族である。今日のポーランドは、ヨーロッパで最も急速に発展している国のひとつである。歴史上の困難や多くの試練を乗り越えたポーランド人は、科学や文化芸術の偉大な成果によって世界的に知られている。ポーランドの最初の首都クラクフをはじめ、ヴロツワフやワルシャワの各都市を訪れ、美術館、歴史的記念地、古い教会や城を巡り、産業部門では石炭、食品、製薬業といった分野を視察した。また、モンゴルとポーランドの両国民が歴史的出来事や多くの事業によって結ばれてきたことを研究し、多くの人々と出会い、その記録を読者の皆さんと共有するものである。 ポーランドの略史 ポーランドの歴史はその国民の忍耐と我慢の真の表れである。966年、ミェシュコ1世が統一ポーランド国家を樹立した。1386年から1572年にかけてのヤギェウォ王朝の時代には、現在のポーランド、リトアニア、チェコ、ハンガリーの領域にまたがり、ヨーロッパで最も強力な国の一つとなった。1569年から1795年にかけて存在したポーランド・リトアニア共和国(コモンウェルス)の時代は、民主主義と文化発展の黄金時代とされている。だが、ロシア、プロイセン、オーストリアの三国により、1772年、1793年、1795年の三度にわたり分割され、ポーランドは123年間独立国家として存在しなかった。1918年にポーランドは独立を回復し、すぐに第二次世界大戦や共産主義思想による抑圧などの歴史的試練に直面し、それを乗り越えてきた。 現在のポーランドは中央ヨーロッパに位置し、ドイツ、チェコ、スロバキア、ウクライナ、ベラルーシ、リトアニア、ロシア、そしてバルト海に囲まれている。総面積は313,000平方キロメートルで、ヨーロッパで9番目に大きく、モンゴルの5分の1程度の大きさである。地理的には広大な平原と丘陵が広がり、南部にはカルパチア山脈とズデーテ山脈がある。人口は約3,800万人で、EU内で5位の規模である。首都ワルシャワは人口200万人を擁し、政治・経済・文化の中心である。ほかにも、クラクフ、グダニスク、ヴロツワフ、ポズナンなど、豊かな歴史と文化を継承した近代的で高度に発展した都市が存在する。 ポーランドの歴史におけるもう一つの重要な出来事は、1944年のワルシャワ蜂起である。ポーランドのレジスタンス運動である「蜂起軍」は、ナチス・ドイツの占領軍に対して63日間にわたり戦った。ドイツ軍はこれを武力で鎮圧し、ワルシャワ市の85%を爆破し、街は灰燼に帰した。敗北に終わったものの、この蜂起はポーランド人の自由と民族の団結の象徴として記憶されている。1980年代には、レフ・ワレサの指導のもと「連帯(Solidarność)」運動が展開され、民主主義のための闘争が始まり、10年後には共産主義体制が崩壊するに至った。 現在の民主的ポーランドは、経済規模8100億ドル、一人当たりGDPは24,000ドルに達し、EUでもっとも急速に発展している国となっている。 科学と芸術 世界の科学と芸術において、ポーランド人は大きな貢献を果たしてきた。ポーランドの18人の学者が合計19のノーベル賞を受賞している。マリア・スクウォドフスカ=キュリーは、1903年に物理学賞、1911年に化学賞を受賞し、2度のノーベル賞を受賞した。ポーランド出身のユダヤ人を含めれば、ノーベル賞受賞者の数はさらに増加する。世界的に有名な2人の偉人を紹介すると、以下のとおりである。 “ニコラウス・コペルニクス” 「地球を動かした男」と呼ばれるコペルニクスは、人類の世界観を変え、地球が太陽の周りを回っていることを証明した。1543年に太陽中心説を出版し、科学に革命をもたらした。彼を記念する多くの像の一つは、クラクフのヤギェウォ大学の広場にある。モンゴルの首都ウランバートルにある科学アカデミー前にもコペルニクスの像が建てられている。 “フレデリック・ショパン” 「ピアノの詩人」と称されるフレデリック・ショパンは、ポーランド芸術文化の象徴である。1810年に生まれた彼は、ポーランド民謡に基づくロマン主義音楽の美しい旋律を創作し、世界各地で演奏されている。ショパンはフランスで暮らしていたが、遺言により心臓が祖国に持ち帰られ、ワルシャワの聖十字教会の壁に安置された。彼の銅像や名前を冠した通りは、ウランバートル市のザイサン地区にもある。…
アラブ首長国連邦(UAE)は、かつては砂漠の中の小さく貧しい首長国だったが、わずか30年ほどで世界経済の中枢の一角ともいえる強国へと発展を遂げた国である。この国を実際に訪れて学ぶ機会があったため、UAEの特徴、歴史、政治体制、経済政策、モンゴルとの関係、そしてモンゴルがUAEの発展モデルから何を学べるかについて述べようと思う。 地理と経済 UAEは中東に位置し、サウジアラビアとオマーンと国境を接している。国土面積は約83,600㎢で、モンゴルのスフバートル県とほぼ同じ大きさである。人口は約1,000万人で、そのうちわずか10%が先住民族エミラティ人で、残り90%は外国人である。 UAEは世界で最も裕福な国の一つであり、その経済は石油、貿易、不動産、観光、金融から成り立っている。GDPは約5,450億ドル(世界銀行、2024年)で、一人当たりでは約5万ドル、中東ではトルコ、サウジアラビア、イスラエルに次ぐ水準である。 1971年にアブダビ、ドバイ、シャールジャ、アジュマーン、ウンム・アル=カイワイン、フジャイラ、ラアス・アル=ハイマという7つの首長国が連合してUAEが設立された。連邦最高評議会は憲法上の国家最高機関であり、立法・行政の両権限を有する。 大統領は伝統的にアブダビの首長が務め、ドバイの首長が首相兼副大統領となっている。現在の大統領はシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン、副大統領兼首相はシェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームである。 外国人労働者の高比率に対応する制度 急速に経済成長する一方で、人口が少ないためUAEは外国人労働者の受け入れが不可欠である。2024年時点で、インド人470万人、パキスタン人200万人、バングラデシュ人100万人、フィリピン人86万人をはじめ、200以上の国籍を持つ900万人が働いている。 エミラティ人は医療・教育サービスを無料で受けられるが、外国人は民間セクターに依存し、教育・医療は高額となるため、単身出稼ぎ労働者が多く、母国へ送金している。外国人は労働許可を取得・更新する必要があり、特定の投資額や専門人材であれば「ゴールデンビザ」による長期滞在も可能である。無許可就労は禁止されており、期限切れの場合は1日30ドルの罰金が科されるなど、厳格な制度が整備されている。 経済の急成長 かつては小規模で貧しい村落が点在し、真珠養殖、漁業、ナツメヤシ栽培、ラクダ飼育、交易に頼っていたこの地域に、1950年代に石油が発見された。その後インフラ整備が進み、急速な成長が始まった。 1971年にイギリスから独立し、7首長国が統合、シェイク・ザイード・ビン=スルターン・アール=ナヒヤーンの指導の下で国家運営が始まった。1981年には湾岸協力会議(GCC)に加盟し、地域の安定と協力に寄与してきた。1990年代以降、観光、貿易、金融の分野に注力し、ドバイはその発展の象徴的存在となっている。…
バーレーン王国を訪問する機会を活かし、この国の地理、経済、人口の特徴、短期間でどのように急成長を遂げたか、またモンゴルとの協力の可能性について紹介しようと思う。 1. 地理、経済、統治体制 バーレーン王国は、ペルシャ湾に位置する小国でありながら、戦略的に重要な場所にあり、33の島々から成り立っている。国土面積は787㎢で、モンゴルのオルホン県と同程度の大きさである。総人口は約150万人で、その55%は外国人であり、主にインドやパキスタンからの移民が占める。 「湾岸のシンガポール」とも呼ばれるバーレーンは、開かれた経済とビジネスのしやすさで有名である。国土面積はシンガポールとほぼ同じであり、両国共に世界的な金融・貿易の中心地である。しかし、経済規模ではバーレーンのGDPは約500億ドルと、シンガポールの約10分の1であり、一人当たりのGDPもシンガポールの3分の1(約28,000ドル)である。バーレーンでは外国人労働者の割合がシンガポールよりも高く、労働力の多くを海外から受け入れている。 バーレーンの経済は多様化しており、石油・天然ガスが経済の18%を占めているものの、これは近隣諸国と比べて低い割合である。金融サービスが17%を占め、イスラム銀行や投資分野で湾岸地域の主要なハブとなっている。製造業は14%を占め、アルミニウムの生産では世界市場の11%を供給している。観光や貿易も発展しており、年間1,100万人以上の観光客を迎えている。 バーレーンでは、自国民と外国人に対して異なる政策が適用されている。例えば、公営住宅プログラムでは、40,000戸以上の住宅が建設され、バーレーン国民には無料で提供されている。一方、外国人は市場価格で住宅を購入または賃貸する必要がある。バーレーン国民は医療や教育サービスを無料で受けられ、食料や燃料の補助金もあり、湾岸地域で最も発展した社会福祉制度を持つ国の一つである。 バーレーンは立憲君主制であり、議会は「国民議会(National Assembly)」と呼ばれ、二院制を採用している。諮問評議会(Shura Council)は40人の議員で構成され、国王に直接任命される。代議院(Council of Representatives/Majlis…
現在、モンゴルでは人口350万人の27.1%にあたる914,000人が貧困状態にあり、1人当たりの月間消費額は42万トゥグルグ(国家統計局、2022年)未満である。経済は急成長しているものの、家庭への恩恵は少なく、国民の所得格差はますます拡大している。経済はほぼ完全に鉱業に依存しており、この状況から脱却できず、民間企業は銀行の高金利や税負担に苦しみ、成長できずにいる。その結果、実質的な失業率が上昇し、国民の海外流出が続いている。 今日の経済状況の原因を詳しく見ると、少数の商業銀行が政府や公共の権力を直接的にも間接的にも支配し、事業分野に対して高い金利で圧力をかけ、利益を搾取していることが挙げられる。 例えば、貸付金利が年間20%に達する国では、健全なビジネスを行うことは不可能であり、違法なビジネス、地下ビジネスだけが繁栄し、汚職が蔓延するのである。銀行グループに属さない企業は、金融コストの増加により人員削減を余儀なくされ、賃金の引き上げもできないため、有能な人材が国外へ流出し、国民は将来への希望を失う。これは国家にとって最大の損失であり、深刻な問題である。 では、なぜこのような状況が生じたのか?その原因と解決策は何なのか? 原因 貸出金利が下がらず、資金不足が生じている主な原因は、モンゴル銀行の金融政策にある。最近、モンゴル銀行は政策金利を10%に維持するほか、国内外の預金準備率を1%引き上げ、それぞれ11%と16%にした。これは金融の安定性を確保するどころか、むしろ資金不足を悪化させている。 商業銀行は、政策金利を基準に預金金利を競争的に設定し、利益を最大化するために貸出金利を急激に引き上げている。 2024年、モンゴル証券取引所(MSE)に上場している6つの商業銀行の純利益は、平均して50%増加し、総額1兆7000億トゥグルグに達した。具体的には、ハーン銀行が6,400億、ゴロムト銀行が4,000億、TDB銀行が3,000億、ハス銀行が1,700億、ステート銀行が1,080億、ボグド銀行が400億トゥグルグの純利益を計上した。商業銀行の総資産は64兆トゥグルグに達し、そのうち最大のハーン銀行が20兆、ゴロムト銀行とTDB銀行がそれぞれ15兆トゥグルグを占め、これら3行で市場の80%を支配しているということだ。昨年、ゴロムト銀行の資産は34%、TDB銀行23%、ハーン銀行17%増加した。 “商業銀行がこれほどの利益を上げている一方で、民間企業は高金利に苦しみ、倒産の危機に晒されている。この状況を「金利搾取」と呼ばずして何と呼ぶのだろうか。現在、銀行とそのオーナーが所有する企業だけが成長し、他の企業は債務に苦しみ、存続が困難になっている。モンゴル銀行や金融規制委員会は、この状況を見て見ぬふりをしている。なぜなら政府の特定の幹部たちが、選挙資金を銀行のオーナーから提供してもらい、実質的に銀行のオーナーの傀儡となっているほかならない。” 商業銀行のオーナーは、自行の株式を20%以上保有してはならないという法律が制定されたものの、その施行は銀行オーナーのロビー活動によって何年も延期されている。さらに最近では、外国投資家を誘致するために、この20%を34%に引き上げるという案が出されており、それをモンゴル銀行が支持している。 また、ほぼすべての商業銀行は、グループ企業として証券会社を設立し、その取引を操作している。各商業銀行は、自行の証券会社を通じてIPO(株式公開)を行い、実際よりも高い企業価値を設定して株式を販売した。その結果、現在の株価はIPO時の価格を維持できず、大幅に下回っている。他国では、商業銀行のオーナーが他の事業に関与したり、証券会社を所有したりすることを禁じている。なぜなら、銀行のオーナーに過度な権限を与えることになるからである。 さらに、上場している6つの商業銀行は、5〜10%の株式を一般公開しただけで「公開企業」と称されており、こともあろうに金融規制委員会はこれを称賛している。更に、実際には銀行の取締役会に独立した一般代表が参加しておらず、金融規制委員会もこの事実を隠している。これは「形だけの公開企業」であり、実質的には閉鎖的な銀行支配体制が維持されていることを示している。…
2023年の時点で、モンゴルの縫製分野には1,342のメーカーが操業している。しかし、これらの4分の1が企業で、残りは個人事業者である。また3分の1はウランバートル市にあり、残りは地方に所在している。 310社の企業のうち、259社が有限会社、31社が協同組合、5社が国有企業(軍事および警察機関の制服を縫製する)、4社が株式会社である。この業界の総従業員数は6,100人で、全体の64%は1〜2人の従業員で営業しており、平均従業員数は4.5人である(縫製分野総合専門協会)。 しかし過去には、この分野に30,000人が従事し、モンゴルの輸出の30%を創出し、製品の97%をアメリカに輸出していた時代があった。1995年から2005年にかけて、中国、韓国、台湾、シンガポールから縫製会社66社が、縫製・ニット製品に関する多国間協定のモンゴルのクォータを利用するためにモンゴルに来ていた。2005年初めにこの協定が終了し、これらの企業はモンゴルから撤退した。そしてモンゴルの縫製分野は崩壊状態に陥った。 そこで、NRCC社は、NGO「開発ソリューション」の発注により、アメリカ国際開発庁の資金提供を受け、この分野の現状とその復興開発に関する調査を2023年に実施した。 この調査では、首都ウランバートル、ダルハン・オール県、オルホン県、ドルノド県、ザブハン県の生産者103人、全県と首都ウランバートルの消費者402人が対象となり、加えて縫製業者30社、政策立案者、実施者、研究者10人が参加した。 この分野の現状 この分野における公式事業と非公式事業の差は大きい。縫製事業者の大半は女性である。主な製品は、伝統的衣装や衣類である。縫製事業者の半数以上はこのような製品を生産している。大量生産はカスタム生産よりも多様化する傾向にある。生産者は形態によって異なるが、平均してキャパシティーの60%を使用している。労働生産性において首都ウランバートル、ダルハン・オール、オルホン県はトップとなっている。輸出はほとんど行われておらず、販売の大部分は国内市場で行われている。 製品コストの40%を原材料費が占め、その次に人件費が占めている。企業にとって税金は、3番目に大きな支出であり、個人事業者では管理費である。生産コストは地域によって異なる。この分野の原材料のほとんどはモンゴル国内で生産されておらず、輸入されている。国内で生産されているのは一部の革や副資材のみである。 課題 この分野の最大の課題は人材不足である。最も不足しているのは、仕立屋、編み手、デザイナーなど専門スタッフである。小規模生産者が多く、職業訓練の質が低下している。零細生産者の増加の背景には、(1)この分野には家庭の問題により柔軟性のある時間で働く必要がある女性が中心となっていること、(2)少ない投資で小規模で運営できること、(3)長年にわたって家庭の生産を支援するための政府および国際機関の政策プログラムの実施成果などがあると、生産者や専門家が見ている。 次の課題は、運転資金の不足である。運転資金不足により、企業や地元の製造業者は原材料を期限までに調達することができない状況にある。また、企業にとっては、原材料の不足、供給の遅延、知識やノウハウの不足などが課題となっている。個人事業者にとっては、機械設備の不足、成人の身体サイズの基準が時代遅れになっているなどの問題がある。地方では、先進的な技術や機械設備が不足しているため、生産者は作業の一部をウランバートルにある業者に発注しており、これにより支出が増えるという課題を抱えている。仮に、先進的な技術や機械設備を導入したとしても、改善できない状況にあるという。 協力の必要性…
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