大きな期待が寄せられたモンゴル経済フォーラム

ダンバダルジャー ジャルガルサイハン
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海外の投資家と観光客の誘致を目的としたモンゴル経済フォーラム2023は、今年「Welcome to Mongolia」というスローガンの下、首都ウランバートルで開催された。今回の経済フォーラムは、ナーダム祭を迎えていることもあり、国会議事堂およびチンギス・ハーン博物館で開催された。フォーラムは2日間にわたって行われ、国内外から2,200人のゲストや代表者が参加した。今回のフォーラムの内容、そして期待されることは何かについて紐解いていきたいと思う。
経済成長時の資金調達には3つの方法がある。それは自己資本、負債、そして外国資本である。だが現状、モンゴル政府は歳入を超える歳出を抱えているため、自己資本、積立金というものは少なく、融資を受けようとも既に法律で定められた限度額に達しているため、外国資本を誘致するという選択肢のみとなる。また、外国の観光客を多く呼び込むことを政策として掲げている。(2023年に100万人の観光客)そして外国資本を誘致するために国内で取り組むべきことは山積している。

 

外国投資は、政府目線で

モンゴルが民主主義国家と市場経済への移行を始めた1990年以降の33年間で、総額400億ドルの投資が外国から流入してきた。そのうち50億ドルは最初の20年間で、350億ドルは2010年以降に流入したものである。外国投資の4分の3は、鉱山採掘分野を占め、11%が貿易やサービス分野を占めている。

この経済フォーラムでは、投資とビジネス環境を改善するために講じている措置についてモンゴル政府により紹介された。それによれば、経済開発省は投資法改正案を作成しており、その改正案には、投資支援、投資家の権利と法的利益の保護、政府からの具体的な支援などが盛り込まれている。さらに、一部分野の法律で禁止されている投資制限に関する条項を撤廃するという。また、投資家は国際仲裁裁判所を通じて、投資に関する問題を解決することができるようになる。

また、国内企業と外資企業の法人登記期間や印紙税手数料の差を撤廃し、土地利用期間を明確にし、煩雑なビザや滞在許可の取得手続きも改善される。

さらに、税制および非税制上の優遇措置、投資環境の安定化、および5000億トゥグルグを超える投資条件を安定させるための規制がそのまま維持される。また、環境、土地、税務局、県などで重複していた監査を無くすために、これらの機関で合同監査を年に2回実施するという。

ザンダンシャタル国会議長は、このフォーラムで2019年の憲法改正でモンゴル国の開発政策は安定して維持されることが定められており、経済や投資環境の安定状況を確立するための関係法令の改正が実施されたと述べた。

しかし、モンゴルでは多くの優れた法律や規定が確定されてはいるが、それらの法律の施行が裁判段階で行き詰まってしまうことについて、このフォーラムでは議論されなかった。また、外国投資には、法律に加えて、自国通貨の為替レートが安定していなければならない。

 

外国投資家目線で

この経済フォーラムには、500人の外国代表者が参加し、そのうち3分の1はリオ・ティントグループの関係者だった。オユトルゴイプロジェクトの投資家であり、時価総額1000億ドルをほこり、従業員数5万5000人を抱える150年の歴史を持つ世界第2位の鉱山会社の取締役全員と経営陣がモンゴルを訪れた。また、同グループの株主、35カ国で展開されている同グループのプロジェクト資金提供者となる大手銀行および金融機関45社と国際大手メディアの代表らも参加した。

リオ・ティントグループ取締役会会長ドミニク・バートン氏は、「オユトルゴイは、2030年には世界4位となる大規模の銅採掘鉱山になる予定である。現在、150億ドルが投資されている。地下深部1,500mにマンハッタンほどの大きさの鉱体があり、ブロック技術によって採掘を始めている。そこには2万人が働いており、そのうちの90%がモンゴル人で、年間51億ドルの国内取引が行われている」と語った。続けて彼は、「モンゴルには明確なロードマップと、多様で安定した経済を創造する十分な可能性があるため、私たちは積極的かつ責任ある企業として貢献しなければならない。これは、必ずしも鉱業分野である必要はない」と述べた。まず、彼らは再生可能エネルギーやゴビ地帯の灌漑事業で政府と協力することになっている。

また、モンゴルのウラン分野で投資契約を結ぼうとしているフランスのオラノ社の代表オリヴィエ・トゥーメール氏は、(原子力エネルギーに利用される)黄色粉末の製造における硫酸の使用について語った。そして、銅の精錬工場が稼働すると硫酸が大量に発生するため、その硫酸を利用する新たな接続が形成されることになるという。

いずれにせよ、モンゴルでは多数の大規模プロジェクトの実施が予定されている。

 

経済の多様化について

経済フォーラムでは、経済の多様化を図るために鉱業のほか、観光や牧畜など原材料資源を有する分野への投資を誘致することで、経済の多様化を図ることについて議論が行われた。例えば、太陽光や風力による再生可能エネルギーの利用、鉄鋼や銅の生産、石油精製所、自由農業圏の創設、皮革や食肉工場の建設などについて議論された。

また、フシギーン・フンディなどの自由貿易特区化、エンターテイメント、物流などのサービス提供が可能であり、自由貿易圏内の法律による関税、雇用、税金の特別制度が設けられるようになるという。

モンゴル政府は、過去2年間で国境検問所の通過能力を大幅に増強した。また、近い将来、ハンギ−マンダル、ガショーンスハイト−ガンツモドの国境検問所が鉄道で接続され、より安価で、より多くの物資の輸送が可能となり、輸出能力が向上するという。現在、各県は舗装道路で結ばれており、ビジネスの基礎インフラが形成されつつあるという。

モンゴルはアジア太平洋貿易協定に加盟したことで、同地域において1万1000品目の一般特恵関税制度GSP+ステータスが利用可能となり、特恵関税条件下でEU諸国に7,200種類の商品を輸出できるようになった。これによって対外貿易に有利な条件を作り出し、輸出市場を拡大する。また、日本との経済連携協定の締結により、5,700種類の品目が関税譲歩のもとで輸出されることになっている。

この経済フォーラムでは、“約400人が持続可能な開発政策”、“経済と持続可能な開発”、“新たな未来−新たな機会”、“都市開発”などについて多くの議論が交わされ、具体的な勧告を策定した。今回の経済フォーラムは、モンゴル史上最大規模で、最大の参加者を集めたカンファレンスとなり、モンゴルにとって大きな期待を含んだものとなった。■

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