重要な産業

Jargal Defacto
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THE VITAL SECTOR

鉱業はモンゴルにとって重要な産業である。首都ウランバートルを除きモンゴルは人口密度が非常に低く、広大な国土には牧畜と畜産物以外に主だった産業がない。だからモンゴルは鉱物資源の探査と採掘を主要産業にして資本を蓄積しようと努力している。

その蓄積した資本で産業の多様化を図り、特定の製品・サービスで国際市場において競争し、安定した外貨収入源を確保する。これを社会・経済を発展させる確固とした基盤としなくてはならない。

しかし残念ながら、私たちは資本を蓄積するどころか大きな負債をつくり、多様な産業基盤を作れずにいる。政治家はポピュリズムに走り、失業率の上昇や貧困が広がり、国民が外国に出稼ぎに行く傾向がみられるようになった。

鉱物資源の管理ができていない。法制度は脆弱で、鉱物資源の恩恵を受けているのは政府と関係する一部の人のみだ。地方では過疎化が進み、ウランバートルは失業者と中古車で溢れ、スモッグに覆われた都市となってしまった。

鉱業分野において何をどのように変える必要があるのか、モンゴルの未来に向けて協議すべき時期が来ている。

鉱物資源の探査 

鉱業は大きく2つの分野に分かれる。その一つは鉱物資源の探査だ。世界では各国が地質図を作成し、どんな鉱物資源があるかを正確に把握しようとしている。地質調査は科学的、物理的に実施され、まず大まかな資源分布を把握する。その後、可能性の高い場所で集中的に探査を行い、埋蔵量を詳細に確定する。

モンゴル政府は20万分の1スケールの国土地質図を2020年までに完成させるとしている。有望な鉱床の5万分の1スケールの地質マッピング、広域地質調査を2020年までに国土の40%で、2030年までに国土の半分で実施する予定だという。

より正確なマッピングをするためには、多くの探査と膨大な資金が必要となる。そのためモンゴルのような広大な国土を持つ国は、外国からの投資に頼らざるをえない。投資を呼び込むためには透明性があり、安定したビジネス環境を整備しなくてはいけない。さもないと世界の国々と競争できないからだ。投資家が望んでいるのは、探査だけではなく鉱物資源を採掘し、安定的に利益を得ることだ。さらに公的ライセンスが有効で確実なものであれば、投資条件としてはなお良い。

鉱床を発見した場合、その埋蔵量を確定するために探査時の何十倍もの資金を投入する必要がある。数百本単位のボーリング調査を行い、採取したサンプルを分析機関に送る。鉱体形成図を作成するためだ。

鉱物埋蔵量は、鉱石埋蔵量合同委員会(JORC)規定により確定される。その後、当該鉱床の採掘権を実績ある大企業(メジャー)が買収し、採掘を始める。しかし、鉱物埋蔵量が小規模な鉱床の場合は、小企業が証券取引所に上場し、株式を発行して資金調達を行う。そして採掘していくことができる。

現在、モンゴル鉱業・重工業省は、全国で実施されたすべての探査報告書を収集し、地質データベースを充実させている。

鉱物資源の採掘 

鉱業分野のもう一つの分野は採掘である。鉱床の埋蔵量が完全に確定し、利益が見込まれた場合は必要なインフラを整備し、採掘を始める。採掘期間は埋蔵量によって数年或いは数十年も続く。採掘時は自然環境をできるだけ破壊しないようにする。そして鉱山閉鎖後に自然を採掘前の状態に復元しなければならない。この自然環境を復元するために、採掘と同時に一定の資金を自然環境復元基金として積立てなければならない。

鉱物資源採掘は膨大な資金を必要とする。採掘が開始され数年後に売上が出るため、法律及び事業の長期的な安定性が求められる。鉱体が大きければ大きいほど電力・水・鉄道などの大型インフラ敷設を必要とする。

大きな鉱山プロジェクトは、必要な資金を詳細かつ具体的に計算し、市場で調達する。投資家はすべてのリスクを勘案し、いくつか段階に分けて投資をする。世界で名だたる実績・経験を持つ大手採掘企業は、今まで大きなプロジェクトを成功させてきた。

モンゴル通信社の報道によれば、1990年からの27年間でモンゴルへの海外直接投資は190億米ドルに上る。その80%が鉱業分野への投資だ。モンゴルでオランダ、中国、イギリス、シンガポール、カナダなどの国をはじめとする世界112ヵ国13,000社が設立された。そして38,000の職場を提供し、その労働者の80%をモンゴル人が占めている。

鉱業の最新動向

モンゴルでは政権が変わりやすく、鉱物資源法を幾度も改訂してきた。政策で失敗と成功を繰り返しているが、モンゴルにとって鉱業はなくてはならないものとなっている。

2017年の11ヵ月において鉱業分野からの歳入は20%を占める。鉱山関連の企業は1兆4千億トゥグルグの税金を国に納めている。これは前年度7640億トゥグルグの2倍だ。また、今年度10ヵ月間の輸出全体の約80%を鉱物製品が占めている。鉱物の輸出額は前年同期比15億米ドル上がり、そのうち85%が石炭である。

採掘事業に関して不明瞭な点が多くなり問題となっている。鉱山企業と地元住民との間に軋轢が生じるようになった。鉱山企業が国に支払っている税金や料金を、政府が地方に交付していないことに原因がある。

他方では、採掘企業は社会的責任を果たすため、率先して様々なプロジェクトを実施していることを特記しなければならない。

例えばオユ・トルゴイ社は、地方開発のために2015年から毎年500万ドルを「ゴビのオユ開発基金」というNGOを通して交付している。この地方開発資金の運用管理を県、郡の行政担当者、市民団体の代表者13名で形成する活動委員会が担っている。この委員会は、2015年にダランザドガド郡に幼稚園2園、学校2校の体育館、バヤン‐オウォー郡に保健センター、ハンボゴド郡に学校、幼稚園、家畜保健センター、マンライ郡にボイラー施設などを建設した。また2016年にはハンボゴド郡に飲料水供給施設、植物栽培施設、野菜のビニールハウスなどの建設プロジェクトを実施している。

世界銀行はオーストラリアからの420万米ドルの援助で、2013年からゴビ地域の地下水の管理改善プロジェクトを実施している。これは鉱山採掘に関する多くの問題の現実的な解決策だ。水資源の適切な管理において重要な役割を果たしている。

モンゴル全土には29本の河川流域がある。その内3河川(17県の99郡とウランバートルの1区で、これは全体の34%にあたる)の地下水質、流量及び水準変動、採掘活動からの影響を監視する114本のボーリング点によってデータ収集ができるシステムが設置されている。

ボロー社は露天掘りで採掘した92.7ヘクタールの土地で埋立てを行い、再生不可能となっていた土地を保護地とする活動を実施した。採掘前にあった77.5ヘクタールの放牧地、15.2ヘクタールの森林の代わりに160.4ヘクタールの放牧地、45.7ヘクタールの森林を「自然環境の改善と復元」として造成した。

モンゴルの鉱山企業の社会的責任への意識が向上している。情報・知識を共有する協議が市民の間で広く行われることによって、この重要な産業に関する多くの問題を解決できる日もそう遠くないだろう。

2017年12月20

 日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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