腐敗に立ち向かうことを恐れない 賄賂対策庁長官を探して

Jargal Defacto
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QUEST FOR THE FEARLESS COMMISSIONER TO FIGHT CORRUPTION

Kh.バトトルガ大統領は、富の再配分が進んでおらず国民の半数が貧困に喘いでいる。いまだに腐敗は解決されていない。賄賂対策庁長官を交代させると一月前の春季国会開会式で述べた。その直後、Z.エンフボルド首席補佐官は国民の意見投票で1週間以内に賄賂対策庁長官を選定し、大統領が国会に人事案を提出すると発表した。

モンゴルのような公職が様々な繋がりを持っている社会では、誰にとってもこの長官職というのはとても危険な職のようだ。贈収賄などの腐敗を取り締まる賄賂対策庁の初代長官B.ダンガースレン氏は海外で原因不明の死をとげた。次の長官Ch.サングラグチャー氏は刑務所に収監された。3人目の長官N.ガンボルド氏は辞職に追い込まれた。4人目の長官Kh.エンフジャルガル氏は贈収賄容疑で何人かを逮捕した。首相経験者を逮捕し、「仕事をしているふり」をするようになったため、大統領は解任しようとしている。

この長官職には外国人を登用すれば、モンゴルの腐敗つまり職権で私腹を肥やす犯罪が激減すると見ている。1970年代の香港で警察庁長官にイギリス人を据え、マフィアや汚職に打ち勝った。さらに最近では高等裁判所の裁判官にイギリス人とカナダ人の2人の女性を登用している。

賄賂対策庁長官が誰になろうと次の3つのことに取り組むべきである。

1. 各政党の財源を暴く

モンゴルが民主主義に移行した28年間、そのうち22年間を腐敗に打ち勝つための戦いに費やしてきた。1996年、初めて腐敗防止法が可決成立した。2002年には腐敗防止国家プログラムが出された。2003年、国連腐敗防止条約が採択され、モンゴルはこの条約に加盟し2005年に国会で批准した。2006年に腐敗防止法が改訂され、2007年に賄賂対策庁が設立された。2016〜2023年までの第2次腐敗防止国家プログラムが採択された。腐敗防止のための法律が数多く施行されているにも関わらず、腐敗が蔓延しその規模も大きくなる一方であることに理解ができない。

賄賂対策庁は贈収賄を取り締まり、容疑者を起訴するが殆どのケースで裁判所や検察庁が無罪にしてしまう。たとえ有罪判決が出ても大統領が恩赦を与えるようになったことをどう理解できるのか?

この状況を国連腐敗防止条約の第2章「防止措置」から見ることができる。「防止措置」では、腐敗防止のために独立した機関を設ける他に、公職への立候補にかかる選挙資金や政党の資金についての透明性を高めて行かなければならないと定めている。モンゴル政府は最初の条項を2007年に満たし、賄賂対策庁を設立した。しかしその長官職についてはしばしば政治利用されてきた。2番目の条項に関しては、素知らぬ顔で政党の資金について透明化を図る取り組みを10年間も先延ばしし、ようやく2018年から始まる「計画」を打ち出した。

このようにモンゴルの腐敗の源泉となった政党の資金を透明にせず秘密にしてきた結果、政府は腐敗に溺れ、借金まみれになった。そして政府で働く者だけが得をし、民間企業で働く者は貧しくなり、国民の所得に天と地ほどの差がひらいた。交互に、時には協力して政権を握ってきた政党は自分たちの存在を国民監視の外に置くようになった。政治家はそれに気づいていても見てみぬ振りをするようになった。

誰が新しい長官に指名されても、まず初めに政党の資金、選挙にかかる資金報告書、監査結果を公開し、法律に違反した政党の党首に責任を取らせることから始めること、国民はそれを期待している。

2. 横領された財産を取り戻す

国連腐敗防止条約の第5章「財産の回復」では財産返還について定められている。それは新興国がこの条約に加盟する大きな後押しとなった。法律が不十分、法令を遵守しない、いまだ公共制度が整っていない国では賄賂犯罪が多い。またそういった国では、公共の財産を横領した者に刑事罰を下すだけで、盗まれた公共の財産を返還させることができない。

今日のモンゴルはその様な国の大きな例となっている。公共の財産を横領した者に財産を返還させるどころか、罰から逃れる機会を与えてしまっている。賄賂から発生する経済犯罪が暴かれても他のスキャンダルで忘れ去られてしまう。明るみに出た犯罪の裁判や捜査が長引き、刑罰が形骸化することが多くなった。数人が手を組み大規模な横領をしても、逮捕され刑罰を受けるのはその中で1人だけだ。それも刑務所に少しの間だけ収監され、また直ぐ恩赦を受け釈放されるようになった。損害賠償、財産の返還などにおいてモンゴルの裁判制度は全く怠慢である。刑務所を出た犯罪者は、まるで冤罪を受けた英雄であるかのように公務に復帰することが多くなった。

違法に得た資金を海外の銀行に移し、不動産も購入している。これらの海外にある資金や不動産を接収しモンゴルに返還させることにおいて、モンゴルの裁判所や警察機関の経験や知識が乏しい。一日も早く外国との法的支援契約を結ぶことを必要としている。正義を無視し公共の財産を横領した者を刑務所に送るより、財産の返還から始めなければならない。

ジョージアの元大統領サアカシュヴィリは横領された財産を取り戻すことができた。腐敗防止に関して中国は「キツネ狩り」という作戦を実施し、横領された財産を取り戻すことに成功した。2014年から国外に逃亡した2,020人の経済犯罪容疑者、そのうち公職に就いていた342人を世界70ヵ国から中国に送還し、11億4千万ドルの違法蓄財を押収した。

3. 新しい社会秩序を作る

腐敗が少ない北欧諸国では「腐敗が社会に根付かない土壌を醸成した」と言われている。社会秩序は腐敗防止のための土壌を作って保護し、維持できている。社会秩序とは、全ての国民が謙虚で節度ある行動をとる(Moderation)、自己抑制(Self-control)、共有財産の意識(Sense of common good)などから形成される。

国民共有の財産である土地、水源、公園などを目の前で奪われているにも関わらず、私たちの誰も声を上げない。公職にはその人の能力ではくコネで就くようになり、そういった人間が公共の財産を横領するのに対して社会は何の影響も与えることができない。一部の人は政党に入り、公共の財産をより上手にかすめ取ることを夢みている。モンゴルでは腐敗が社会文化、新しい秩序になっている。ルーマニアやアルメニアでは国民が腐敗を根絶するように政府に要求することができている。

モンゴルの賄賂対策庁長官に誰が就任しようと、これら3つのことを全国規模で指導して行かなければ、私たちは腐敗つまり国の発展を妨げている危機を根絶させ、貧困という泥沼から脱却することはできない。誰が腐敗した社会を子どもたちに受け継がせたいと思うだろうか?

2018年5月2日

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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