安物は割高につく

Jargal Defacto
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THE CHEAPER, THE COSTLIER

モンゴルでは法律で車両は右側通行と定められている。これは、道路はもちろん、あらゆる場所で自動車は右側を通行することが優先されるという意味である。従って、モンゴルの交通に関するすべてのルールやインフラは、自動車が左ハンドルであることを前提に作られたものである。

2015年末時点で、首都ウランバートルを走る自動車の数は44万台あり、その54%が右ハンドルの自動車である。その年、モンゴルへ37,000台の自動車が輸入され、そのうちの34,000台が日本からの輸入車であった。金額ベースでみると、自動車の輸入額は2億1千万ドルとなっており、そのうちの1億8千万ドル、つまり86%が日本車となっている。

日本とモンゴルの二国間で締結した経済連携協定(EPA)によって、新車もしくは製造から36ヵ月以内の自動車には関税がかからない。そして製造から36ヵ月以上の自動車には5%の関税がかかることになっている。こういった状況が、右ハンドルの日本車の輸入量増加に繋がった。日本では、10年以上走行した自動車へは重課税されるため、7〜8年走行した自動車を安価に海外へ輸出する傾向がある。モンゴル関税庁の発表によれば、2011〜2015年にモンゴルから日本への総輸出額は7200万ドルだった。これと反対に日本からモンゴルへの総輸出額は20億ドルだった。そのうち13億ドルが自動車であり、自動車全体の66%がハイブリッド車の「プリウス」である。

道路が整備されるほど増える交通事故

どの国であれ、道路交通は自動車のハンドルの位置に適合してこそ、安全で渋滞の発生も少なくなる。

2014年に首都ウランバートルでは11,630件の交通事故が発生し、その59%がモンゴルの右側通行の交通ルールに適していない右ハンドルの自動車によるものだった。道路交通庁の報告書によれば、2015年にモンゴル全土で41,064件の交通事故が発生した。そのうちの64.4%が右ハンドル車だったという。たった1年間で交通事故数が約4倍にも増加している。

右ハンドルの自動車を使用している運転手は、前の車を追い越すために車体全体でその車の左側に出て道を見るしかない。そうすると交通状況や自動車のスピードによって、交通事故につながるケースが多い。特にウランバートルの道路が整備されるほど、交通渋滞が増え、事故数も急増している。

モンゴル政府は、2012〜2015年の間だけで総延長6351㎞の道路を舗装した。そして2016〜2021年の期間に5700kmの舗装道路を整備する計画を打ち出している。地方のほとんどの道路の幅員は2車線分で作られている。しかしセンターラインがないため、運転手は目測にたより速いスピードを出して走行している。しばしば運転手は、道路上の穴や障害物を避けるために急ハンドルを切って事故を起こしている。

市内への通行料金所、駐車場料金所、空港の出入口料金所などの施設を利用する際、右ハンドルの自動車は料金を支払うために反対側の窓を開けて手を伸ばす。手が届かない場合は車を降りる時もある。これが渋滞の原因となっている。ほとんどの自動車が右ハンドルだから、モンゴルの右側通行のルールは既に通用しなくなっている。そのため、道路に示されたセンターラインは意味を持たなくなっている。どのような境界線があろうと、誰もが同じスピードで走るようになった。正しい車線を走るように指摘すれば殴られることになるほどだ。

夜間、地方の道路を走る多くの車は、対向車が来てもヘッドライトのハイビームをロービームに切り替えないため、まぶしくて道路が見えない状態で走行する。右ハンドルの車のハイビームの光軸は道路の外に向けて調整されているため、右側通行の国ではその光が対向車線に向けられることになる。そのため対向車のドライバーの目をよりまぶしくする。ヨーロッパでは、道路の通行側が正反対のフランスやイギリスの国境では、車のハイビームを下げるヘッドライトシートを有料で貼ることとなっている。このシートを貼っていない運転手には罰金が科される。

解決する方法は既にある。

道路交通の右側通行と左側通行のルールができたのは中世までさかのぼる。居住地ができるにつれ、一本の道路を多くの人が行き交うようになった。ほとんどの人が左利きではないので、馬に乗った人は左側に剣を携え、いつでも右手で剣をすぐに握れるようにしていた。すれ違うときに剣と剣がぶつからないようにするため、多くの国で左側通行が一般的となった。1700年からアメリカやフランスで農産業が急速に発展し、馬車で列を作って都会に食料を運ぶようになった。左側をよく見るために人が馬車の左側に乗り、また馬を右手に持った鞭で打つようになってから右側通行が始まった。

交通安全からみて、どの国も右側通行もしくは左側通行のルールのいずれかを選択してきた。従って、その国の交通ルールに適していない自動車の輸入や使用が禁止されるようになった。例えば、カンボジアの自動車全体の約80%はタイから輸入され、右ハンドル車がカンボジアの交通ルールに適していなかった。しかし、カンボジアは今世紀に入ってから、右ハンドル車の輸入を禁止し、自国の交通ルールに合わせるようになった。そのほかに、ロシアも日本車のハンドルを左ハンドルに変えるようになった。

Su.バトボルド政権時だった2012年に道路交通安全保障国家戦略が確定した。この戦略では、左ハンドルの自動車が占める割合を2012年の54%を基準とし、2015年までに75%、2020年に95%にするとされていた。残念ながらモンゴルの法律は長続きしないので、この戦略を誰も気にとめなくなり、逆に右ハンドルの車が、この目標の割合を占めるようになった。本来、この問題を道路運輸開発省が担当するはずだが、モンゴルでは省庁の名前や組織構造が頻繁に変わるため、多くのことが実施されず残され、誰も責任を持たなくなっている。

この問題に対する適切な解決方法は何か。2020年までにすべての車を左ハンドルにするため、右ハンドルの車を輸入しないという法律をつくり公表していれば、何人もの人の命が救われ、渋滞も減少しただろう。右ハンドルの車が多いからといって、右側通行のルールを左側通行に変えれば、モンゴルは隣国のロシアや中国と全く異なる交通ルールを有することになる。そうなった場合、モンゴルは経済回廊どころか、逆に喉に詰まらせた肉塊のように、国境で車両が詰まるということを政府の有力者たちは分かっているのだろうか。

4年前、右ハンドル車の輸入を禁止するという法律を公表することでが、誰かのビジネスを妨害することだったのだろうか?交通事故で何人の尊い人命が失われれば、重要なことに気づくのだろうか。

2016年9月28日

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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