B.ドゥルグーンの個展「PURE」
B. DULGUUN’S SOLO EXHIBITION “PURE” 芸術家B.ドゥルグーンによる個展「ピュア」がMN17ギャラリーで開かれた。そこでは誰もが安堵感と聖域を感じることができるだろう。騒がしい通りの交通渋滞、歩道を行き交う歩行者のジグザグとした動き、群がるヒロハハコヤナギの種子、突き刺すような夏の太陽、この整然とした魅力的な個展を見ると、それらすべてが背景から消えていくようである。 小さな作品を中心とした柔らかな光が差し込むギャラリーに足を踏み入れた来訪者は心から歓迎されていると感じる。展示の間取りは、広々としたアットホームなワンルームマンションを連想さ、その作品群は十分なスペースで均等に区切られている。入って左側にスタディエリアがあり、冬の間の数ヶ月に感じたことをアーティストが心を込めて見るものに訴えかける。少し離れた壁の後ろには、「冬」と題したファブリックアートの作品があり、そこには、家族や愛する人たちがティーポット、温かいお茶、居心地の良いテーブルを囲んで、厳しい冬の寒さの中でも心を癒やしている様子が描かれている。 モンゴル人が「ホイモル」と呼ぶ最も崇敬される空間には、2つの小さな抽象的な作品「Trace-1」と「Trace-2」が展示されている。モンゴルの家庭のホイモルに飾られているアイコンのように、木製のフレームが付いたガラスの箱に大切に吊るされている。どちらの作品も白いリネンをバックに、立体的な形をした図形で構成されている。黒いステッチが織り成す不規則な曲線の上に置かれた形は、降り積もったばかりの雪の上の足跡のように、白い表面に糸を引くように描かれ、あるときは一緒になり、またあるときは離れていく。また、静かに降る雨のようにも見える。 他の作品に目を向けると、ステッチはゴールドのタッセルに変わり、ミッドナイトブルーのオーガンザ生地の縁を優しく流れ落ちている。これはこの個展のタイトルにもなっている「ピュア」と名付けられた作品である。これは、結晶のような紺色のシルクに金色の糸を縫い付けたインスタレーションとなっている。繊細なストール2枚と、丁寧に作られた透き通ったベスト3枚から構成されている。個々の作品が持つ曖昧な陰影とクリアなシルエットは、真夏の夜、星空を照らす小川から吹くそよ風のような清涼感を演出している。 ギャラリーの最後には、「Noon」と題した3枚組の作品が展示されている。ここでは、立体的なリネンの図形が、バラ色のきらめく花輪の長いたてがみの間から覗き込んでいる。まるで、夜に浄化されたその図形が、新しい朝を迎える準備ができているかのように。幾重にも重ねられたガーランドの直線が、ボリューム感のあるきらめきでステッチされたリネンの図形を包み込み、「ピュア」の金色の糸の繊細さとは異なり、「Noon」の光沢ある華やさは、まるできらびやかに街を表しているようだ。 「ピュア」は、アーティストにとって成功裏に終わった。鑑賞する者が日々の雑踏やルーティンから解放されるための収束点であるように思える。B.ドゥルグーンによるこの思慮深く誠実な個展は、夜の静けさが魂を浄化する力を持ち、失われたエネルギーを回復する力を持ち、新たな目的を持って人生の旅を続けることができるという感情を呼び起こすかもしれない。 このウランバートルでの個展に先立ち、ドゥルグーンは2021年12月にMN17…
都市から地方への移動はいつ始まるのか?
HOW CAN REVERSE MIGRATION HAPPEN? 人口移動は人間の自然な動きである。世界中で地方から都市への移住人口は、都市から地方へのそれよりも多くなる。これは世界中の国々で都市化が進む傾向にあることを示している。この傾向は発展途上国や貧困国でとりわけ顕著である。そのため、この「都市への一極集中」を調整する必要性が生じてくる。 では、モンゴルでこの人口移動はどのような状況にあるのか。人口移動がどのような結果をもたらすのか。それをどのように解決するのか。優先的に注視すべき問題は何か。このことについて人々は共通の理解を持ち、政府が効率的に対策を実行できるよう協力しなければならない。 都市への移動 モンゴルでは、地方から都市への移住人口が急増を続け、2019年末の時点で首都ウランバートルに人口全体の約半数を占める47.6%が居住しているという統計がある。首都の人口比率は、1990年に27.2%、2000年に33.1%、2010年に45.1%と増え続けてきた。そして、ゴビ−アルタイ県、ザブハン県、オブス県、アルハンガイ県、ドゥンドゴビ県、トゥブ県の人口は、過去20年で減少している(労働社会保障省)。 こうした中、地方の自然災害への対処力が低下している。都市には地方に比べて教育を受ける機会が多く、就職できる環境や条件がより整備されており、近年インフラが改善されてきたことが、都市への移住の急増を加速させている。 地方から都市への人口移動は都市化を加速させ、さらに、人口急増やそれに伴う騒音、大気や土壌、水源の汚染、インフラ敷設への過剰負担をもたらした。 ウランバートル市役所は、2017年から2020年にかけて地方から都市へ移住してくる人の登録を制限したことがある。この制限で登録される人の数は減少したものの、未登録の移住者の減少には繋がらず、この制限は移住者の83%には何の効果もなかったという調査結果がある(IOM、2021年)。2017年に首都ウランバートルで登録された移住者数は25,000人だったが、2019年には6,800人に留まっている。未登録の移住者は、経済的、社会的、および健康上のリスクに直面し、基本的な社会サービスを受けられない状況にある。…
新たな路線、旧い困難
NEW SOLUTION, OLD HARDSHIPS モンゴル政府は、今年中に鉄道分野の改革に乗り出し、ズーンバヤンからハンギまでの区間、総延長227kmの鉄道を建設する予定である。ここで、この鉄道はいつどのように建設されるのか、プロジェクトの意義とは何か、そしてどのような課題があるかについて述べてみたい。 鉄道を延伸する必要性 モンゴルは、対外貿易額の95%を占めている中国とたった1つの鉄道国境駅で接続している。そして、対外貿易の僅か数パーセントを占めているロシアとは、2つの鉄道国境駅で繋がっているが、その1つ(エレーンツァブ)は現在、運用されていない。中国と接しているザミンウード/エレンホトの唯一の国境駅は、貨物量の増加に対応できない状況となり10年が経つ。特に過去2年間での状況を見ると、新型コロナウィルスによるパンデミックや夏季オリンピック、冬季オリンピックの開催などのため、中国政府は国境封鎖を行い、貨物は数ヶ月も立ち往生している。 モンゴル政府は、南の中国との国境で新しい鉄道ターミナルの建設について長年話してきたが、実現には至っていない。今回、L.オユン-エルデネ政権は、コンセッション法に基づき、「ズーンバヤン〜ハンギ間の鉄道プロジェクト」の直接契約を締結することを決定した。 昨日(2022年3月9日)、内閣会議により、このプロジェクトのコンセッション契約について、“モンゴルトランスライン合同会社”および“モンゴルトランスロジスティクス合同会社”と締結する権限が政府調達庁に与えられた。 ズーンバヤン〜ハンギ間鉄道のメリット このプロジェクトの実行可能性調査では、ズーンバヤン〜ハンギ/マンダル鉄道の開通によって、ザミンウード国境駅の負荷が減少するほか、新しい路線を通じて中国に年間1,500万トン、ロシアに年間500万トンの貨物輸送が可能となる。これによりモンゴルの石炭輸出量は50%増加すると試算されている。タバン・トルゴイ〜ガショーンスハイト間の路線で2,500〜3,000万トン、ナリーンスハイト路線で1,500万トン、合計年間6,000万トンの石炭が鉄道で輸送されることが可能になる。 サインシャンドから中国内モンゴル自治区の包頭市までの貨物輸送の距離は306km短縮され、輸送費は4分の1に削減される。中国内モンゴル自治区の包頭市とオルドス市には、冶金、鉄道車両、建設および消費財、鉱山で使われる重機関連などの多くの工場がある。これらの工場に必要なコーキングコール、鉄鉱石、蛍石を競争価格で提供する。さらに、中国の内陸部からモンゴルに輸出されるすべての製品は、より迅速に輸送されるようになる。…
開発銀行のドラマ
開発銀行が抱える不良債権に関し、「債務は債務者自身が返済すべし ~団結しよう、要求しよう~」というスローガンの下で、一部の国会議員や大臣、一般市民やほぼすべての報道機関が参加しての白熱した議論が、トゥーシンホテルで開催された。各テレビ局やSNSで全国にライブ配信されたこの議論がきっかけとなり、国民の間で不満と抗議の波を引き起こしている。 開発銀行の融資の質の低下についてはメディアでも取り上げられ、私も一年半前にこの銀行が技術的に「破綻」していることを述べた。では、なぜ、今この開発銀行に注目が集まっているのか?どのような解決策があるのかについて、国民は正しい情報と理解を得る必要がある。 なぜならば、政権を握っている人民党の指導部は、この開発銀行の債務問題を単独で解決できない状況に陥っているため、国民の支持を受ける必要があるからだ。 開発銀行の融資の半数以上が不良債権となるまで放置されてきたという事実は、モンゴル政府が長年にわたって腐敗に縛られ、この国の司法制度が汚職者やオリガルヒのために機能するようになったことを明確に示している。 開発銀行の不良債権をあらゆる方法で回収するため、権力、資金、組織、司法機関に守られている政治および経済団体と戦わなければならない。 開発銀行は、来年約10億ドルの債権を償還できなければ、利回りを保証したにもかかわらず、政府はそれを履行することができないということとなる。政府はパンデミックとの闘いや経済回復のため、1年間の予算相当の資金をすでに使い果たしているので、償還に回す資金がないのが現状だ。 また、モンゴルは腐敗を撲滅しなければ、開発銀行だけでなく、国自体が財政破綻する危機に瀕していることを政府与党はようやく理解したようだ。ここで腐敗を止めなければ、人民党は2024年の選挙で敗北する可能性が高い。 開発銀行のドラマを要約すると次のようなこととなる。 オープニング モンゴル開発銀行は、他国同様に長期的な開発プロジェクト、特にインフラストラクチャーと輸出促進プログラムに資金を提供するため、2011年に設立された。そこへ経験豊富な韓国の開発銀行の経営陣を招聘した。海外投資家向けに債券を発行し、総額6億ドルを調達した。2012年8月10日にN.アルタンホヤグ政権が発足した。経済省が設立され、B.バトバヤルが経済大臣に就いた。まもなくして政府は、海外に向けて債券(チンギス)を発行し、15億ドルを調達した。突如として多額の資金を得た政府は、それを自由勝手に使おうとしたが、そこに規則や規制を口にする韓国経営陣が待ったをかけた。それが邪魔だったため、政府は彼らとの契約を打ち切った。 こうして、モンゴルの対外債務の歴史が始まった。過去10年間、モンゴル政府はあらゆる債務を返済していない。ただ、新たな債務で古い債務を返済してきただけだった。首相は、次の世代が返済すると公然と言って憚らない。それ以来、歴代政府は開発銀行のトップに自分たちの意のままに動く人物を任命し、自分たちが得するために数十億トゥグルグもの融資を実行させてきた。そのような中、国の財産は特定の誰かのための財産ではないということを、政権を握っている人たちが示し始めている。 展開…
王が去る時…
2022年の年明けは、カザフスタンで起こった騒乱のニュースから始まった。1月9日時点で169人が死亡し、2,000人以上が負傷、5,000人が逮捕されている。デモ参加者たちは、最大都市アルマトイの政府機関の建物を占拠し、多くの商店を略奪し、数十の建物と30台以上の交通機関に火をつけた。爆発と銃撃は数日間止むことは無かった。デモ参加者たちは空港を占拠し、多くのフライトが欠航となった。当局はデモ参加者たちに占拠された空港を解放した。また、デモ参加者らは一部の都市でナザルバエフ前大統領の銅像を引き倒した。 液化天然ガスの価格を2倍に引き上げたことを端に発した今回の抗議デモは、瞬く間にカザフスタン全土で暴動へ発展した。トカエフ大統領は内閣総辞職を承認し、ナザルバエフ前大統領が務める安全保障会議議長の職を解任し、その役職を引き継いだ。トカエフ大統領は、このデモに対して「秘密裏に計画し、資金を提供したテロリスト、共謀者、犯罪者を厳しく取り締まる」と主張し、抵抗する者を警告なしに射殺する指示を治安部隊に発した。また、カザフスタン政府による集団安全保障条約機構(CSTO)への要請を受け、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、キリギスの3,000人規模の平和維持部隊がカザフスタン入りした。 また、インターネットは遮断されている。トカエフ大統領は、1月19日まで全国に非常事態宣言を発令し、23:00〜07:00時までの時間を外出禁止とした。大勢が集まるイベントの開催や、様々な交通手段での移動を制限した。ナザルバエフ前大統領の親しい側近だった国家安全保障委員会の委員長であるカリム・マシモフを解任し、国家反逆罪の容疑で拘束した。さらに、ナザルバエフ前大統領の甥、国家安全保障委員会副議長を務めていたサマト・アビシュとその兄のカイラット・サトバルドゥも拘束された。そして、エルバシ(国父)と呼ばれたナザルバエフ前大統領自身は、現在、中国にいると中央アジア専門家アルカディ・ダブノフが発表した。 騒乱が起きた原因 ナザルバエフ前大統領は、同国を30年間支配してきた。その間、国の経済を発展させることができたが、独裁的で君主制の政治体制を確立させ、国内には汚職が蔓延した。君主とその家族、親類の財産が無尽蔵に増えるにつれて、一般国民が貧困に追い込まれてきた。2021年にフォーブス誌が発表したカザフスタンの富裕実業家番付にナザルバエフ前大統領の娘ディナラ・クリバエフと娘婿のティムール・クリバエフがそれぞれ29億ドルの資産で2位と3位に入った。保有資産41億ドルで1位となったウラジミール・キムは、ナザルバエフ家の「金庫番」と呼ばれ、エルバシのためにロンドンで最も高価な住宅を購入したと報じられた。チャタムハウスの報告書によると、カザフスタン当局は、ロンドンだけでも5億2,000万ポンドの不動産を所有しており、そのうち3億3,000万ポンドの不動産をナザルバエフ家が所有しているとのことだ。 国土面積において世界第9位の国であるカザフスタンは、人口約2,000万人、ウラン生産において世界1位、ビットコインのマイニングでは世界2位、石油埋蔵量では世界11位ではあるが、天然資源の分配はあまりにも不公平に行われてきた。国民一人当たりのGDPは、8,500ドルに達しているものの、一般市民とエリートの生活水準には依然として雲泥の差がある。 社会的不平等が拡大し、インフレ、失業、特にカザフスタン南部地域の若者の失業率と社会的不平等は深刻である。そのなかでも特に教育、医療サービスにおける格差がより拡大しており、パンデミックが一層の拍車をかけ、国民の長年の我慢がついに限界に達した。政府を批判し、ナザルバエフ家と衝突した大勢(アルティンベク・サルセンバエフ、ザマンベク・ヌルカディロフなど)が殺害された。イスラム教の影響が強まり、政府は宗教と深く絡んでいる。 カザフスタンでは、ナザルバエフの許可がなければ、大きなビジネスはできないし、誰も高い地位の職に任命されない。(Aidos Satykov)元首相のアケジャン・カジェゲリディンは、軍や警察、検察や裁判所などの全ての法執行機関が国ではなく、ナザルバエフ家を守るために機能してきたと話していた。また、野党党首で元エネルギー産業貿易大臣のムフタール・アブリヤゾブは、「2019年にナザルバエフが大統領職をトカエフに引き継いだが、彼に実権を与えなかった。トカエフは“家具”であり、ナザルバエフがすべてを舞台裏で牛耳ってきた。」と言った。 一部の政治アナリストによると、81歳のナザルバエフは老いて持病を抱えているので、現状すべての権力がトカエフに移行したとのことだ。これはナザルバエフの「家族」やオリガルヒたちのビジネスや財産に大きな影響を及ぼすため、経済的動機を発端にしたデモを扇動し、事前に訓練された武装勢力をデモ参加者のなかに紛れ込ませた。その結果、大きな混乱を引き起こした反政府デモとなり、多くの警官が無残にも殺害されたと指摘している。トカエフ大統領は、一連の反政府デモは事前に計画され、組織化されたもので、クーデターを意図したものだと述べた。 いずれにせよ、2022年1月10日時点でカザフスタンのすべての政治権力は、事実上トカエフ大統領の手中にある。しかし彼は、社会が求めるように政治体制を変え、公正な選挙を実施し、社会や経済が直面している問題を解決できるだろうか?この国は議会政府と公正な司法を確立させるのか?今回の一連のデモには本当に外部の関与があったのか?私たちモンゴル人は、兄弟であるカザフスタンの国民が短期間で国を正常に戻すことを願うのみである。 モンゴルが学ぶべき教訓…
ウランバートル鉄道会社新社長への提言
ウランバートル鉄道と開発の行き詰まりの打開策 エルデネト市へ鉄道で行った。一週間ほど前のことだ。ウランバートルを夜出発し、翌朝には到着した。用事を済ませ、その日の夜にはエルデネト市を出発し、翌朝ウランバートルに到着した。そのため、この旅は時間を節約し、渋滞や事故など自動車で移動する際のリスクも避けられ、とても良いスケジュールだった。このような機会を提供しているウランバートル鉄道に感謝すると共に、サービスにおいて改善すべきことが数多くあることについて、自分なりの意見をSNSに投稿した。その投稿を多くの人の目に留まり、そしてその人たちがどのように受け取ったのか、またなぜこのような状況が発生したのか、どのように改善すべきかについて詳述しようと思う。また、この出来事がウランバートル鉄道会社の新しい社長就任のタイミングと重なったことを付け加えておこう。 SNSは炎上した。 2021年11月30日、Jargal Defacto(フォロワー数9万4千人)のフェイスブック及びJargal Dambadarjaa(フォロワー数26万人)のツイッターアカウントで下記を投稿した。 「ウランバートル鉄道」のウェルカムのないサービスについて: なぜ、このように投稿したと言うと: 2021年12月6日の時点で、投稿はフェイスブックで24万2千人に届き、何千もの肯定的又は否定的なコメントが寄せられた。これは、顧客とサービス提供者の双方の観点からも、モンゴルの鉄道サービスにおいて改善すべきことが数多くあることを明確に示している。 背後にある理由 ロシア・モンゴル両政府が共同で所有するウランバートル鉄道の活動が、発展への需要と供給に大きく遅れを取っている背景は、この組織の所有権と管理が、私たちが構築している市場経済の基本原則と矛盾しているからである。 ウランバートル鉄道は、ビジネスではなく、物流に追われている。価格が政府によって規制されている、赤字運営の独占企業である。この21世紀に列車は燃料や石炭で稼働しており、電化されていない。ロシアでは、すべての列車は電気で走っているが、ウランバートル鉄道の場合は、電化されていない。さらに、路線は単線であり、列車同士がすれ違う際、本線とは別の待機用の線路に止まる必要がある。…
フィンテックフロンティアサミット2021
フィンテック協会会長D.ジャルガルサイハン氏の挨拶 フィンテックフロンティアサミット2021 2021年11月24〜25日 Highland Park hall.Ulaanbaatar.Mongolia モンゴルの兄弟姉妹の皆さん。人類の発展とそのスピードは、国境を越えた自由貿易に直接関係してきた。貿易とは、貨幣と商品の交換である。貨幣は、あらゆる商品と交換できる便利な決済手段である。人類は決済手段をより簡単に、より信頼性が高く、より速く、よりアクセスしやすいものにするために常に努力してきた。そのため、如何なる技術の進歩も、まず金融分野で試されてきたと言えるだろう。 新しいテクノロジーは、人々の間の境界を排除する。15世紀には印刷機が知識の、18世紀には蒸気機関が力の、そして1990年代にはインターネットが空間と時間の境界を排除した。 21世紀初頭からは、スマートフォンで、いつでも、どこからでもビジネスができるようになった。今日ではスマートフォンで決済、借り入れ、送金もできる。金融とテクノロジーを組み合わせたフィンテックは活況を呈しており、金融サービスは世界で最も貧しい人々にも行き渡るようになった。 世界のフィンテック産業は、2020年までに7.3兆ドル規模になると評価されている。2026年までに、業界の年平均成長率(CAGR)は26.87%と予想されている。 今日、我が国では24のノンバンク金融機関(NBFI)が、フィンテック金融サービスを提供している。顧客は2018年から3倍になり、数として450万人に達し、その93%がフィンテックを利用している。ノンバンクは、現在3820人を雇用している。借り手の総数は160万人で、これは2020年の約3倍になる数字だ。 2018年に設立されたノンバンク:LendMNは、そのアプリLendMNを通じて初めてモンゴルにフィンテックを提供し、現在登録ユーザー数は約90万人となっている。合計93万人の借り手が、間接費15億トゥグルグ(MNT)、279,000時間、つまり32年を節約した。…
新しい協同組合運動
ニュージーランドは、2020年に92億ドルの食肉(羊肉40万トン、牛肉47万1718トン)を世界111ヵ国に輸出した。モンゴルより羊や牛の頭数が少なく、国土がモンゴルの5分の1しかないにもかかわらずだ。新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている時だからこそ、良質な食肉の需要が高まり、ニュージーランドの食肉輸出が前年比7%増となり、史上最高を記録したという。 2020年のモンゴルの輸出総額は77億ドルだった。そのうち80%を石炭、銅、金、鉄鉱石などの鉱物資源が占めている。77億ドルの輸出総額のうち、たった9,260万ドルが3万8800トンの食肉輸出によるものだった。 ニュージーランドは、食肉1キロ当たり平均10.5ドル、モンゴルは2.4ドルで販売している。 モンゴルの食肉価格の低さ、畜産業の脆弱性の原因は、家畜の放牧、衛生、飼育、供給、生産、販売、輸送の各プロセスが非効率であることと関係している。広大な土地に分散している遊牧民だけが畜産を生業にしているのでは、この分野の成長はないということを、私たちは自由市場経済を導入して30年経った今、目の当たりにしている。 私たちは、畜産業を個人事業ではなく、協力して産業としての生産性を向上させ、その能力を高めるという原則を今日まで実行できなかった。政府は、遊牧民が協力して取り組むように何度もアプローチしてきたが、その効果は芳しくはない。その理由は何なのか、どのようにしてこの問題を解決すべきなのか? 協力できない協同組合 モンゴルで最初の協同組合は、今から100年前の1921年11月2日、ボグドハーンの命令により設立された「人民相互援助協同組合」である。資産、労働、希望で団結したこの運動は、多くの雇用を生み、当時の社会労働生産の向上に大きく貢献した。 1958年3月には、モンゴル人民革命党第13回大会議が開かれ、集団牧畜協同組合(ネグデル)運動が始まった。国は1959年に国民が所有していた家畜を没収し、公共化し、共同財産として登録した。その過程で389の集団牧畜協同組合が設立され、家畜を均等に分配する仕組みを作った。この政策により「公共財産を生み出し、遊牧民の相互搾取を根絶した」と当時の当局は強調していた。 1990年の民主革命後、集団牧畜協同組合のすべての家畜は遊牧民の所有となった。その30年後、家畜頭数は2.5倍に増加し、6,600万頭に達した。このうち羊は2倍、山羊は5.3倍に増加した。 2020年の時点で、モンゴルには4,468の協同組合が登録されている。合計234,633人の組合員、496億トゥグルグの組合資本がある。3,670の組合が地方にあり、798が首都ウランバートルで活動している(国家統計局より)。全ての協同組合の3分の1は卸および小売り業の組合で、30%が農畜産業の組合となっている。しかし、殆どの協同組合は活動しておらず、単に登録されているだけである。 モンゴルの遊牧民は協力できなかった。農業畜産分野の労働生産性は低く、経済的流動性も弱い。遊牧民の労働対価は非常に低く、若者の都市への流入が続き、地方には高齢者が残されている。モンゴル人の主菜である肉については、その90%が非近代的な手法で、衛生的にも不十分な環境で多くの人の手によって人々の食卓に届けられている。 新しい協同組合、新しい地方…
ベイルートの暗闇は私たちに何を訴えるのか
現在のモンゴルは、いつ完全な暗闇に包まれ、全てが凍りついてもおかしくない危険な状況に直面している。街から全ての光が失われ、道路の信号機、エレベーターや冷蔵庫などが機能しなくなった時、国民がどれほど苦しむのかを、最近レバノンのベイルートで起きている出来事が示している。レバノンのエネルギーの80%を供給する発電所2基で燃料不足により電力を制限していたが、ついに完全に停止することとなった。電力の過度な低価格維持により、発電所は資金不足に陥り、発電能力を高めることができず、さらに腐敗化した政府の影響でレバノンでは経済が完全に停滞している。 モンゴルはまさにレバノンのようになりかけている。エネルギーを失ったエネルギー分野は破綻寸前である。私はこのことについて、ちょうど2年前に具体的に記事にした。しかし現在、状況はさらに悪化している。パンデミックはこの分野に深刻な影響を及ぼした。政府は特別法を制定し、市民や企業の光熱費を国有企業に払わせた。2020年12月以降、電力価格維持のために政府は8,260億トゥグルグを費やしている。そうしなければ、エネルギー分野は再開できなかっただろう。 エネルギー分野の破綻は、再選することだけしか考えない政治家にとっては有利であり、国民にとっては不利であるということを、西部地域における5日間の停電、ウランバートルで8月に発生した5時間の停電が物語っている。 実態 現在、モンゴルの電力供給は不安定になり、電力不足に陥っている。主な要因は、年々電力消費量が増加しているにも関わらず、国内の発電量を増やすことができず、外国から高価な電力を購入し続けていることにある。 モンゴルの電力消費量は、年々増加している。2021年には99億kWhに達し、これは前年比で12%増加となる。熱消費量は6%増加し、1,100万Gcalになる。電力消費量の80%を国内生産、20%を隣接するロシアや中国から購入し供給する。エネルギー分野は大惨事を防ぐためにあらゆる国内資源を使い果たし、老朽化したボイラーをフル稼働している。2020年に中央電力システムのピーク負荷は、1,309MWに達し、そのうち831MWはウランバートルだった。 政府はエネルギー分野に投資し、生産能力を増強している。2024年にはバガヌール区に400MWの火力発電所を建設するためのコンセッション契約が締結された。また、タバントルゴイに450MWの発電所を建設し、2025年に第一段階を稼働させる。またエレデネブレンの92MWの水力発電所の建設を来春から開始する。しかし、20年間議論を重ね、10回も起工式を行った第5発電所の建設の話は、モンゴルで大規模なプロジェクトは常に頓挫し、計画通りに進まないどころか、中止になってしまうということを物語っている。 現在、エネルギーロジスティック企業は、相互に負債を抱えており、2020年だけでもこの分野は880億トゥグルグの損失を出している。これは、石炭価格9%、輸送費20%、為替レート7%、消費者物価指数9.6%、生産者物価指数10.1%、外国生産者物価指数3.4%、工業用水、電力、暖房、社会保険料、固定資産の減価償却、貸出金利などの費用が14.5%それぞれ上昇したことに関係していると業界アナリストたちは言っている。また、ロシアから輸入した電力量は21.8%増加、価格は15.9%上昇し、輸入電力コストは41.2%上昇している。 モンゴルのエネルギー源、送電および配電網は30〜62年前のものであり、インフラ設備の40%が老朽化している。ウランバートル市の7区にゲル地区の13,681世帯が標準的な電力網に接続されていない。 冬のピーク時に電力を制限し、電力のフル稼働がシステム全体における事故や全国的な停電に繋がっている。 今、どうするか? D.スミヤバザル市長は、ウランバートルだけの電力消費量増加に対応するための発電施設の増設・改修に3兆5,000億トゥグルグが必要であると述べた。しかし、そのような資金はこの分野から拠出するどころか、既存の負債を返済できない状況にある。国内電力の60%を生産している第4火力発電所だけでも投資銀行から借り入れた900億トゥグルグの融資を返済できない状況に陥っている。モンゴルでは、多くの他の国同様、エネルギー価格は政府によって制限および規制されている。しかし、どのように規制したら、このように電力が不足し、停電が日常となり、エネルギー分野が破綻するまでの状態になるのだろうか?…
腐敗した政府は、良いビジネスの機会を奪う
R.ヒシグジャルガル:あなたは今日のモンゴル経済をどのように見ているか。 D.ジャルガルサイハン:新型コロナウイルスの感染がこれほど広範囲に広がるとは、どの国も予測していなかった。モンゴルの国境は半年間封鎖されることで、経済活動がどのようなものになるかは明らかだった。物質的な富を生み出す産業はすべて停止した。そのため、国民の生活を守るために、政府は経済の流動性の維持に努めた。 政府は国境を約10ヶ月間封鎖したまま、ワクチン接種が始まるまでなんとか持ちこたえることができた。現在、ワクチン接種は積極的に行われているため、今後景気は回復するだろう。経済を正常に回し続けるために、まずマネーサプライを潤沢に供給する必要がある。そのために、前政権では5兆トゥグルグ、現政権は10兆トゥグルグのプログラムを実施している。このプログラムの焦点は、第一に雇用維持、第二に、何世代にもわたって存在した住宅問題の解決である。この機に既に建設が完了した住宅にソフトローンを提供している。国民は、一連の経緯をマスコミ報道からみている。そしてその成果については、時間が経てばわかるだろう。 総額2兆トゥグルグの金利3%のローンが、既に6,500億トゥグルグ分交付されている。このローンの基本金利は9%であり、差額の6%を政府が支払うことになっている。これは、国にとって大きな負担となる。この状況を受けて財務大臣は、「国家予算に想定していなかった負担が発生している。その負担を軽減するために海外から支援を受ける必要がある。」と言った。もともとモンゴルは比較的国債の発行高が大きな国である。国債は、期限内に返済すべきもの。今のところモンゴル政府は、高い金利を謳ったマザーライ国債の償還を期限内に達成できた。政府は、このように新型コロナウイルスの影響下でも、できる限り対応し、闘っている。 もし、モンゴルが新型コロナウイルスを抑え込むことができれば、7月1日から経済は急速に回復するだろう。例えば、長期にわたって自宅で自粛していた人々は、止めていた水を流すかのようにビジネスを再開し、貿易やマネーサプライに加速度的な影響を与えるだろう。したがって、経済が急激に活性化するとみている。今年の第2四半期にモンゴル経済は急成長するだろう。 R.ヒシグジャルガル:中国経済の回復、銅の価格は影響するのか? D.ジャルガルサイハン:もちろん影響する。モンゴルの経済は鉱業に依存しているので中国に石炭、銅などを輸出するためのインフラにも大きく左右される。それは中国までの鉄道建設がいつ完了するかにもよる。 その他にも石炭精鉱所の建設を始めていると聞くし、そうなれば発電所の建設も開始するはずである。このように大きなプロジェクトがスタードすれば、経済の循環が加速する。中国経済は、新型コロナウイルスの影響から急速に回復している。銅の需要は世界中でより一層高まっている。人類は次の技術革新へと突入している。モンゴルはこのことに気付いていない。技術先進国では、まず5G、次にブロックチェーン技術が勢いを増している。この2つの技術を基礎に電気自動車の製造が急増している。電気自動車の製造には銅が使われる。また、半導体チップの製造は、需要に対して供給が追い付いていない。そのため、一部では自動車の製造が予定より遅れる事態となっている。 新型コロナウイルスの感染はじきに収束するだろう。私たちは、電気自動車の時代へ移行する。これは時間の問題だ。これによりどのような問題に直面するのかと言えば、現在使用されている30〜40万台のプリウスをどうするかということだ。ほとんどのプリウスは日本からの中古車であり、1台の車に約20本の電池が搭載されている。特に、外出制限により長期間使用していない中古車はエンジンがかからないという不具合が発生しているようだ。そうなると電池を交換しなければならない。しかし、古くなった電池をどうするのか?どこに廃棄するのか?電池は環境に悪影響を与えるため、電池を処理する工場を建てる他に選択肢がない。なぜならば、ロシアと中国は、古い電池の空輸を禁止しているからだ。 R.ヒシグジャルガル:全国労働党による「大統領を指名しよう」というキャンペーンで、大勢の人があなたの名前を挙げ、全国労働党はあなたを大統領候補に指名する提案をした。あなたがその提案に応じなかった理由は何か? D.ジャルガルサイハン:私を指名してくれた全国労働党や多くの人に感謝を伝えたい。私はこれについて慎重に考えてみた。しかし、私は非政治的な社会活動家なので、今後も社会活動を続けて行くことが使命だと思った。一般的に、民主主義と民主主義の価値観は、政府組織が上からではなく、市民によって下からサポートされるべきである。なぜならば、民主主義政府は、市民社会によって監視されて修正されるものだからだ。私たちメディアには重要な役割がある。しかし、まだ私たちはその役割を十分に理解していないと思う。 私たちは、人類の半分が手にできなかった民主主義、その基盤となる人権と自由市場、どこに住み、何をするかを選択するなど大きな自由を手にした。したがって、この価値観を強化し、維持し、自国の土壌に、人々の脳に根付かせるためには、一人ひとりの参加が必要不可欠である。市民の参加無くして政権を選択できず、そして国は発展しえない。政府とは、他の人々の資金、つまり税金で運営されているため、人々が思うほど良く機能する機械ではない。…
経済リバイブ
現在モンゴルでは、人口の60%がワクチン接種を済ませている。そのため、経済を回復させ、正常に戻す必要がある。L.オユン-エルデネ首相は、パンデミック下における経済を強化するための国家委員会を設立した。政府と民間の代表で構成されるこの委員会は、輸出の増加、輸入に代わる国内生産の支援、政府と民間企業のパートナーシップの強化、投資の増加を目指すものである。また、この活動をサポートする法案を国会に提出するようである。しかし、どんなに委員会を設立し、法律を策定しても、政府がこれまで打ち出してきた一部の経済政策や原則を変えなければ、経済の回復と長期的発展は不可能である。ではどのような政策や原則を変える必要があるのか? 経済成長の主な目的は、国民の生活の質を向上させることである。しかし、モンゴルの1人当たりのGDPを見ると、2013年は4,501ドルだったのが、2020年では4,127ドルとなっており、過去7年間増加していないことが分かる(国家統計局)。モンゴルは中程度の発展国である。この1人当たりのGDP指数は、15,000ドルを越えてはじめて先進国の仲間入りとなる。 この水準に到達するためには、国に貯蓄が絶えず増加し、投資が増え、教育が改善され、最新技術が導入されていなければならない。政府はこの方向に取り組むべきである。政府は国の予算、つまり税金による公的資金を適切に管理し、最大限効率的に運用し、可能な限り管理的ではなく、市場原則を実施しなければならない。つまり、次の4つのことをしないことである。 どんな政権もこれについて公約をするが、実際には国有企業や地方自治体の企業を数多く設立してきた。今日、モンゴル政府は、鉱業、エネルギー、交通、航空および鉄道など多くの分野で企業や金融機関を所有している。政府・自治体は、339の会社を所有しており、そのうち232社が地方の所有、107社が国の所有であるという。それらのうち、片手で数えられるだけの企業のみが黒字であり、残りは赤字で債務超過となっており、国の予算で助成されている。それらの総債務額は37兆トゥグルグに達しており、まもなくモンゴルのGDPを上回ろうとしている。 国有企業という名目であるが、実際には政党所有の企業であるため、知識や能力よりも政治的な基準が優先され、企業の人材登用は全国で崩壊している。公務員の数は205,000人、国有企業で働いている人の数は66,000人であり、これは社会保険料を支払っている人の3分の1を占める。国有企業は、民間企業を買収ているので初期投資が抑えられ、政府と意思決定者との関わりが深いため、市場を独占し、自分たちに優位な状況を作っている。その結果、発展の主な原動力である自由競争が失われつつある。 政府は価格、賃貸、賃金の水準を設定又は規制しようとすればするほど、特定の個人やグループにとって不当な利益をもたらし、社会全体に害を及ぼすのである。例えば、住宅ソフトローンは、一見借り手にとって有益に見えるが、金利差額はすべての納税者によって間接的に支払われている。その結果、住宅価格が上昇し、建築会社に有益なものとなっている。 他にも、電気料金は低く抑えられすぎており、電力会社は生産力を上げることができなくなり、そのため、いつでも電力が完全にストップし、ブラックアウトする可能性が高い状況にある。 最低労働賃金を設定したことにより、パートタイム勤務の機会が失われ、その結果、学生や若者をはじめ多くの人が働く機会を失った。 政府によるこれらの規制によって、最終的にはモノ不足が発生し、闇市場が隆盛し、商品やサービスの品質が低下する。 政府の活動は予算を超えてはならない。モンゴル政府は、このことを長年疎かにしてきた。そのため、今日では負債の罠に嵌っている。負債を負債で返済し続けている。負債は雪だるまのように転がれば転がるほど大きくなり、今や国の債務はGDPの3倍にもなっている。 欧州連合では、持続可能な成長を確保するために、加盟国の財政赤字はGDPの3%以下、国家債務はGDPの60%を超えていけないというルールがある。このルールに違反した場合は、GDPの0.5%に相当する罰金が科される。2020年のモンゴルの財政赤字は、GDPの12.3%に相当している。 過剰なマネーサプライは、価格上昇を引き起こす。パンデミック時の経済(パンデノミクス)回復のための政府の政策プログラムが、この国のマネーサプライを急増させている。企業の事業リスクが無くならない中で3兆トゥグルグを3%(実際の貸出金利は9%)の金利で交付した。これが銀行の賃貸対照表における取引および預金残高を増やした。中央銀行の証券残高はおおよそ1兆2,000億トゥグルグに増加した。本来、政府のプログラムは、この残高を減らすことを目的としていたはずだ。…
モンゴルのパンデノミクス
人類は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大(パンデミック)とおよそ2年間も戦ってきた。だがその戦いは今も続いている。現在(2021年8月26日)世界中の感染者数は2億1500万人、死亡者数は450万人に上っている。多くの国で社会や経済が困難な状況になり、発展途上国は絶望し、一部の国はコロナウイルスの前にひざまずいている。モンゴルでは、20万2000人が感染し、919人が死亡している。 世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大するにしたがって、多くの国では社会・経済のデジタル化が加速し、グローバリゼーションが減速し、それまでの地政学的戦略が激変している。各国はこれらの3つの主要な動きに適応し、習慣を変え、政府の政策を調整している。 モンゴルは2020年2月から国境を封鎖したため、その後の10ヶ月間は国内での感染は確認されなかった。この期間に先進国ではワクチンの開発、試験、製造が始まった。これは新型コロナウイルス感染拡大との闘いにおいて、モンゴルにとっては有利な点となった。2020年から相次いで施行された厳しい外出制限によって、モンゴル経済は停滞した。GDPは過去30年間に無かったほど減少し、2020年の成長率はマイナス5.3%となった。 2021年1月、L.オユン・エルデネの内閣が発足し、「健康を守り、経済を復活させる10兆総合計画」が発表された。保健、経済という2つの分野で行われているこの戦いにおいて、モンゴルはどの様な結果を出したのか?そして何に注意すべきなのか? 医療分野 今日まで、モンゴルは560万回分のワクチンを輸入しており、その73%が購入したものである。全人口の68%が1回目接種を受けており、63%は2回目の接種を受けている。モンゴルのワクチン接種率の高さは、世界でも上位15ヵ国に入っている。国立伝染病研究センターの調査によれば、ワクチンは感染を75%、死亡を93%予防できている。そのため、人口の6%が感染し、そのうちの0.5%が死亡しているというこの数字は、世界平均に比べて5分1と低くなっている。死亡者の80%はワクチン接種を受けていない、もしくは1回目の接種を終えた人々だった。感染拡大は収まらない状況ではあるが、モンゴルは人口が少なく、迅速なワクチン接種ができた結果として、感染者の症状が軽く、治癒も早くなっている。これについて、モンゴルの保健分野、医療従事者が懸命に尽力し、重要な役割を果たしているといえる。国家非常事態委員会は、人口の70%がワクチン接種を完了すれば、「集団免疫」が構築されると発表している。 教育分野にも新型コロナウイルスの感染拡大がおおきく影響してきた。国民の不満が高まり、2年近く中断していた教室での対面授業が、この9月1日から再開される。既に12~17歳の子どもの82%が1回目のワクチン接種を終えているが、モンゴルでの1日当たりの感染者数は2,000人を超えている。この数日、地方での感染が拡大しており、感染者全体の3分の1はデルタ株である。世界中でこのデルタ株は新しい難題を引き起こしている。今回のパンデミックは、モンゴルの保健分野のインフラの弱点を浮き彫りにさせ、この分野の人材の育成、財政、業務活動において注視すべき、改善すべき課題を明らかにしてくれた。 経済分野 2021年7月、モンゴルのGDPは前年同期比で6.3%増加し、2020年のマイナス5.3%の低迷からV字回復を果たした。財政赤字はGDPの5.4%に相当し、前年の12%より大幅に減少した。世界中で物流コストが高騰し、モンゴルの対外貿易にも影響しているが、輸出の大部分を占める石炭、銅、鉄鉱石の価格は上昇しているので、政府歳入が増加した格好だ。 政府は、経済支援策の一環として、国家予算とは別に10兆トゥグルグを市場に供給するとし、現在までその3分の1が実行されている。財務大臣の発表によれば、そのうち2兆トゥグルグは雇用支援策として22万5,000人の雇用維持に費やされているという。政府は、モンゴル銀行に積み立てられた商業銀行からの資金を使って、ローン金利9%のうち6%を負担し、個人や企業に対して金利3%の超ソフトローンを交付させている。この6%は、2兆トゥグルグの予算に対して年間1,200億トゥグルグの負担となる。 政府は、今年上半期に企業や一般家庭の水道光熱費、ゴミ廃棄物収集料金として、6,500億トゥグルグをエルデネト鉱業株式会社に負担させた。また国民の年金担保ローンを帳消しにするため、9,640億トゥグルグをエルデネス・シルバー・リソース国有会社に負担させた。 政府は、人口の60%に対して72種類の福祉サービスを提供している。25万人が対象となる食糧クーポン、120万人の子どもには毎月10万トゥグルグの現金を給付している。2021年には、福祉手当と子どもの給付金に約2兆トゥグルグを充てる。国民全体の3分の1が貧困の状態である。…