ウランは歴史を通じて神秘的な性質を帯び、戦争、平和、そしてクリーンエネルギーの象徴であり続けてきた。ウラン産業は、マンハッタン計画*から今日の環境に優しいエネルギー論争に至るまで、世界で最も戦略的重要性が高く、地政学的に繊細なテーマの一つであり続けている。現在、このウランの歴史の中心に位置するのは、広大な草原を有するカザフスタンである。
ウランの需要は世界中で増加している。原子力エネルギーは信頼性の高い電力供給の基盤であり、温室効果ガスの排出削減に重要な貢献をする低炭素の解決策と見なされるようになった。ウラン(U₃O₈、「イエローケーキ」)の価格動向はこの変化を明確に示している。2023年にウラン価格は1ポンドあたり106.6ドルに達し、過去16年間で最高水準に達したが、年末には約86.2ドルに下落した。2025年半ばには価格が1ポンドあたり約68.0ドル前後で推移し、長期契約価格は92.6ドルに達した。濃縮ウラン市場も同様に急激に引き締まり、分離作業単位(SWU)あたり190ドルに達した。これは原子力エネルギーの拡大と、人工知能に基づくエネルギー消費の増加に関連している。
世界のウラン産業
世界のウラン産業の発展は1940年代に始まった。当時、この元素は核兵器の製造に利用され、その後、平和目的の原子力エネルギー源となった。時の経過とともに、採掘、濃縮、燃料生産、廃棄物管理など、ウラン燃料の包括的なサイクルが形成された。
今日、ウランは世界の電力供給のおよそ10%を担っている。ウラン市場は少数の大手企業に支配されており、その中でカザフスタンのカザトムプロム社(Kazatomprom)が首位に立ち、カナダのカメコ社(Cameco)、フランスのオラノ社(Orano)、ロシアのウラニウムワン/ロスアトム社(Uranium One/Rosatom)、中国のCNNC社およびCGN社がそれに続いている。
世界的に見て、ウラン資源はわずかな国々に集中している。オーストラリアが採掘可能な埋蔵ウランの約28%を占め、次いでカザフスタン、カナダ、ロシアが続く。採掘量で見ると、カザフスタンは2009年以来、世界首位の地位を維持しており、世界供給量の40〜45%を単独で担っている。カナダが20%、ナミビアが11%を供給している。現代においては、世界のウランの半分以上が、より安価で比較的クリーンな技術である「地層溶解法(ISR)」によって採掘されている。
カザフスタンのウラン産業
カザフスタンのウラン産業の歴史はソ連時代に始まった。当時、広範な探査と採掘が行われていた。1991年に独立を果たした際、カザフスタンはソ連から豊富な資源とインフラを引き継いだ。1990年代後半にISR採掘技術を導入したことにより、同国は世界市場で優位に立つ基盤を築いた。
現在、カザフスタンは世界のウラン資源の12〜14%を保有しており、オーストラリアに次ぐ位置にある。約90万6千トンの埋蔵量の大部分は砂質岩層に分布しており、ISR技術が最も適している。この方法は現在、同国の採掘の90%を占めており、主にクズロルダ州とトルキスタン州に集中している。
2024年には、カザフスタンは23,270トンのウランを生産し、世界供給の40%以上を単独で占めた。2009年以来、同国は世界最大の生産国であり続けている。ウラン輸出はカザフスタンにとって極めて重要であり、2023年には34億3千万ドルの収益を上げ、同国全輸出の4.4%を占めた。2024年にはウランがハイテク輸出の62.7%を構成し、46億ドルに達したことは注目すべき成果である。
この産業の中心には、1997年に設立された国営企業カザトムプロム社があり、世界供給量の約20%を単独で支配している。カザフスタンのウラン政策は多角的なバランスを重視しており、フランスのオラノ社とのKatco、カナダのカメコ社とのInkai、日本の関西電力および丸紅、中国のCNNC社およびCGN社、ロシアのウラニウムワン社とのアクバスタウおよびカラタウなどの共同プロジェクトが進行している。これにより、市場の安定性、供給の公平性、地政学的柔軟性が確保されている。
カザフスタンの原子力エネルギー産業
カザフスタンは、単なる世界のウラン供給地ではなく、自国の未来をウランによって保証することを目指している。2024年10月6日に実施された国民投票では、「カザフスタンに原子力発電所を建設することを承認しますか?」という問いに対し、有権者の71%が「賛成」と回答し、投票率は63.7%に達した。その結果、同国初の原子力発電所建設が正式に承認された。
2025年6月、カザフスタン政府は、ロシアのロスアトム社が率いる国際コンソーシアムを、バルハシュ湖近郊のウルケン村にVVER-1200型原子炉を備えた現代的な発電所を建設する事業者として選定した。同時に、中国のCNNC社が第2プロジェクトを主導することが決定され、今後数年でカザフスタンの草原地帯に複数の原子力発電所が建設される見通しである。
しかし、この決定をめぐっては論争も生じた。環境活動家たちは、バルハシュ湖の水位、放射性廃棄物、ロシアとの協力に伴う地政学的リスクに懸念を示している。投票前には、反原発活動家の一部が拘束され、セミパラチンスク核実験場の記憶を呼び起こし、国民の感情的な反応を引き起こした。それでも政府は、原子力開発をエネルギー安全保障、低炭素エネルギー、そして長期的な経済多様化のための不可欠な手段とみなしている。
モンゴルとの比較
モンゴルもまた、カザフスタンのウラン産業と類似した条件を有している。モンゴルのウランの確定埋蔵量は約14万1千トンで、世界で上位20位以内に入る。ドルノドおよびグルヴァンブラグなどの大規模鉱床は長年にわたり調査されてきたが、商業的採掘はまだ開始されていない。すでに世界市場で支配的地位を確立しているカザフスタンと比較すると、モンゴルのウラン産業は現在、準備と探査の段階にあり、ロシア、フランス、チェコ、日本などと協力を進めている。それでも可能性は現実的であり、モンゴルは将来的に隣国カザフスタンと同様に、世界のウラン燃料供給国となりうる十分な潜在力を有している。
カザフスタンが採用しているISR、すなわち地層溶解採掘技術は示唆に富む。この方法はより安全で、環境への影響が少ないとされ、カザフスタンの地元住民からの苦情もほとんどないという。
結論
カザフスタンのウランおよび原子力発展の軌跡は、天然資源、歴史的記憶、そして未来への志向が交差する物語である。世界がクリーンエネルギーとエネルギー安全保障のために競い合う中で、カザフスタンは強力なカードを手にしている。同国はウラン生産で世界をリードするのみならず、国内で原子力エネルギーを発展させ、西側と東側の利害を均衡させる能力をも有している。クズロルダの静かな砂漠からバルハシュ湖の水辺に至るまで、カザフスタンの「核の旅」は、いま始まったばかりである。
*マンハッタン計画は、第二次世界大戦中、アメリカ、イギリス、カナダが共同で核兵器開発を目的として実施した極秘計画である。

2025年10月28日■

        
        
        
        
        