第4次産業革命が本格化し、情報通信の発展が一層加速するなか、人類はデジタル移行を遂げつつある。この移行がモンゴルにもたらす変化、可能性、課題について議論するために、2025年9月初め、ウランバートルに国内外の学者、研究者、政府の意思決定者、産業界のメジャーな関係者らが集まった。この「ブルー・スカイ・ダイアログ」では、遊牧文化を有する内陸国であるモンゴルが、デジタルの可能性をいかに活用し、飛躍的に発展できるかについて議論された。
「モンゴル政府の第一目標はデジタル化(digital first)である。デジタル化してこそ政府の活動は効率的で、計測可能になる。2020年以降、政府の1,260のサービスをe-Mongolia、e-Businessといった多様な手段を通じてデジタル化してきた。」とウチラル第一副首相兼経済開発大臣は開会演説で述べた。170万人以上、すなわち人口の半数以上の国民がデジタルで行政サービスを受けており、遠隔の遊牧民と政府役人との関係が煩雑さから解放されている。かつては首都までの長旅を要していたパスポートの申請や事業登録なども、いまやスマートフォンの画面上で数回のタップで完了するようになった。
モンゴルは、スマートフォンから電気自動車に至るまであらゆるものを支える原料となる希土類元素やリチウムの莫大な埋蔵量を有している。デジタル時代の驚くべきパラドックスは、世界に最先端の技術資材を供給する国が、いまやそれらの素材から生まれるイノベーション・エコシステムの重要なプレイヤーとなる可能性を持っていることである。ダムディンニャム鉱業・重工業大臣によれば、「モンゴルの発展の原動力」である鉱業分野に、デジタル移行が最優先で深く浸透する見込みが高いという。
リオ・ティント社の最高イノベーション責任者であるダン・ウォーカー氏は「技術は鉱業を再定義している。」と述べ、「オユ・トルゴイ鉱山は、デジタル技術によって何を変えられるかを示す輝かしい事例となった。」と強調した。この変革は、鉱山現場にとどまらず、モンゴル経済に広く影響を与え、モンゴルが推進しようとしているデジタル・スキルへの需要を生み出している。リオ・ティント社は、ウランバートルにグローバル・テクニカル・センターを設立し、世界中の他の鉱山を支援するためにモンゴルの若者を雇用している。
オーストラリアの砂漠では巨大な無人トラックが走行し、無人列車が人間の介入なく鉱石を積み降ろしている。これら一連の作業を2,000キロメートル離れた場所から遠隔制御するようになっているが、その光景がモンゴルの鉱業分野にも間もなく映し出される時が近づいている。Google社のエンジニアであるバトトルガ氏は、オユ・トルゴイの地下には総延長300キロメートルの坑道があり、あらゆる設備、人間の行動、環境制御システムとデータにより、モンゴルが世界規模で鉱業における技術統合を展開する真のチャンスを生み出していると語った。
Plug and Play Japanの代表は、世界中で数百のスタートアップを育成してきたアクセラレーター・エコシステムの経験を共有した。モンゴルの大手企業は、航空宇宙から新素材に至るまで、幅広い分野で日本のスタートアップとの連携を模索しており、モンゴルの天然資源と日本のイノベーション力の間に新たな架け橋を築いていると述べた。
Microsoft for Startupsもまた、技術インフラを提供できるプラットフォーム大手を代表して参加した。世界の最も遠い地まで接続性と創造性を兼ね備えることで、モンゴルのような国がイノベーションの実験室になることができると強調した。
モンゴルのデジタル化の可能性には、明確な課題も浮上している。世界で17番目に広大な国土を持ちながら、最も人口密度が低い国として、国土のわずか23%しか光ファイバーに接続されていない現状では、いかにデジタル化政策を実現するかが重要である。草原地帯に都市のインフラモデルをそのまま移植することはできないため、モンゴルの独特の地理に適したイノベーション解決策を取り入れる必要がある。現在敷設されている52,480キロメートルの光ファイバー網はその基盤となっているが、真の解決策は地理条件を考慮しない技術、すなわち衛星接続やモバイル中心の通信アーキテクチャがより適している。
こうしたモンゴルのデジタル化の可能性に関する「ブルー・スカイ・ダイアログ」とほぼ同時に、国連開発計画(UNDP)はモンゴルの人工知能(AI)の準備状況を調査し、報告書を発表した。開発途上国のAI準備度は、政府の支援、政府利用、倫理的理解という3つの主要分野に基づき、12の基本指標で評価される。モンゴルは5段階評価のうち3つを獲得し、「体制形成の段階」にあるとされた。AIに対する政府支援は3.4点、デジタルサービスの実施は3.2点、倫理的準備度はわずか2.4点であった。
さらに、モンゴルはスタートアップ・エコシステムの発展度で世界100か国中81位にランクされており、IT教育分野では教員1人あたりの学生数が4,000人に達しているとの結果が出ている。興味深いことに、モンゴルの女性は男性よりもデジタル・リテラシーが10.9%高いという。オックスフォード・インサイト社の昨年のAI準備度指数によれば、モンゴルは188か国中98位であり、2023年から11ランク上昇したことになる。
モンゴルは、この革命の時代の転換点に立っている。モンゴルは、鉱業経済から知識経済への転換を遂げる潜在力を秘めている。幾世紀にもわたり数えきれない変化を目の当たりにしてきたその永遠の青空の下で、新たな革命が自発的に始まりつつある。この変革は、正しいパートナーシップ、投資、そして包括的な開発を通じてのみ実現できるのである。
2025年9月29日■