現在、モンゴルでは人口350万人の27.1%にあたる914,000人が貧困状態にあり、1人当たりの月間消費額は42万トゥグルグ(国家統計局、2022年)未満である。経済は急成長しているものの、家庭への恩恵は少なく、国民の所得格差はますます拡大している。経済はほぼ完全に鉱業に依存しており、この状況から脱却できず、民間企業は銀行の高金利や税負担に苦しみ、成長できずにいる。その結果、実質的な失業率が上昇し、国民の海外流出が続いている。
今日の経済状況の原因を詳しく見ると、少数の商業銀行が政府や公共の権力を直接的にも間接的にも支配し、事業分野に対して高い金利で圧力をかけ、利益を搾取していることが挙げられる。
例えば、貸付金利が年間20%に達する国では、健全なビジネスを行うことは不可能であり、違法なビジネス、地下ビジネスだけが繁栄し、汚職が蔓延するのである。銀行グループに属さない企業は、金融コストの増加により人員削減を余儀なくされ、賃金の引き上げもできないため、有能な人材が国外へ流出し、国民は将来への希望を失う。これは国家にとって最大の損失であり、深刻な問題である。
では、なぜこのような状況が生じたのか?その原因と解決策は何なのか?
原因
貸出金利が下がらず、資金不足が生じている主な原因は、モンゴル銀行の金融政策にある。最近、モンゴル銀行は政策金利を10%に維持するほか、国内外の預金準備率を1%引き上げ、それぞれ11%と16%にした。これは金融の安定性を確保するどころか、むしろ資金不足を悪化させている。
商業銀行は、政策金利を基準に預金金利を競争的に設定し、利益を最大化するために貸出金利を急激に引き上げている。
2024年、モンゴル証券取引所(MSE)に上場している6つの商業銀行の純利益は、平均して50%増加し、総額1兆7000億トゥグルグに達した。具体的には、ハーン銀行が6,400億、ゴロムト銀行が4,000億、TDB銀行が3,000億、ハス銀行が1,700億、ステート銀行が1,080億、ボグド銀行が400億トゥグルグの純利益を計上した。商業銀行の総資産は64兆トゥグルグに達し、そのうち最大のハーン銀行が20兆、ゴロムト銀行とTDB銀行がそれぞれ15兆トゥグルグを占め、これら3行で市場の80%を支配しているということだ。昨年、ゴロムト銀行の資産は34%、TDB銀行23%、ハーン銀行17%増加した。
“商業銀行がこれほどの利益を上げている一方で、民間企業は高金利に苦しみ、倒産の危機に晒されている。この状況を「金利搾取」と呼ばずして何と呼ぶのだろうか。現在、銀行とそのオーナーが所有する企業だけが成長し、他の企業は債務に苦しみ、存続が困難になっている。モンゴル銀行や金融規制委員会は、この状況を見て見ぬふりをしている。なぜなら政府の特定の幹部たちが、選挙資金を銀行のオーナーから提供してもらい、実質的に銀行のオーナーの傀儡となっているほかならない。”
商業銀行のオーナーは、自行の株式を20%以上保有してはならないという法律が制定されたものの、その施行は銀行オーナーのロビー活動によって何年も延期されている。さらに最近では、外国投資家を誘致するために、この20%を34%に引き上げるという案が出されており、それをモンゴル銀行が支持している。
また、ほぼすべての商業銀行は、グループ企業として証券会社を設立し、その取引を操作している。各商業銀行は、自行の証券会社を通じてIPO(株式公開)を行い、実際よりも高い企業価値を設定して株式を販売した。その結果、現在の株価はIPO時の価格を維持できず、大幅に下回っている。他国では、商業銀行のオーナーが他の事業に関与したり、証券会社を所有したりすることを禁じている。なぜなら、銀行のオーナーに過度な権限を与えることになるからである。
さらに、上場している6つの商業銀行は、5〜10%の株式を一般公開しただけで「公開企業」と称されており、こともあろうに金融規制委員会はこれを称賛している。更に、実際には銀行の取締役会に独立した一般代表が参加しておらず、金融規制委員会もこの事実を隠している。これは「形だけの公開企業」であり、実質的には閉鎖的な銀行支配体制が維持されていることを示している。
この状況は、モンゴルの法律が富裕層にのみ有利に機能していることを示しており、政府機関が商業銀行の影響下に置かれ、政府と銀行が組んで国民を搾取している明白な例である。
解決策
モンゴル銀行の独立性を確保し、銀行業界での競争を促進し、貸出金利を引き下げ、事業者への資金アクセスを改善する形でこの業界の改革を図ることができないだろうか?例えば、
- 政策金利を半年ごとに引き下げ、最終的に5%以下にする。
- 国内外の預金準備率を政策金利と連動させ、引き下げることで融資の供給を増やす。
- 銀行の規制基準を厳格にし、金利搾取を防ぐ。
- 銀行のオーナーの他業種参入を禁止し、また、銀行の証券取引ビジネスを禁止する。
このようにして、企業が競争できる平等な機会を提供する必要がある。銀行が公開企業となる要件を厳密に示す法律を迅速に施行し、複数のオーナーをもたせ、企業の良いガバナンスを発展させる必要がある。
また、企業の負担を軽減するために、税率の引き下げと支出効率の向上を図り、税制改革を実施する必要がある。特に、中小企業向けの補助金や融資保証制度を設け、労働力の育成を支援し、競争力のある賃金を支払う企業には税制優遇措置を講じることが必要である。
さらに、農業、製造業、サービス業、人工知能(AI)分野への投資を促進し、鉱業依存を減らすことで、経済の多様化を図る必要がある。
企業が直面する官僚主義、汚職、規制の複雑さがコストを増大させているため、電子政府(e-Government)の開発をより加速させ、対面での手続きを減らし、汚職を減らす必要がある。また、裁判所で長年放置されている汚職事件を迅速に解決しない限り、国民の司法制度への信頼は失われ続けるだろう。
これらの改革措置を講じることができれば、経済は健全化し、民間企業の生産性が向上し、雇用が増加する。これにより、国民の生活水準が向上し、国外に流出する人が減ると同時に、帰国を選ぶ人が増えるだろう。
2025年1月29日■