モンゴル建設業の弱みと中小企業の競争力

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2023年にモンゴルのGDPは約70兆トゥグルグに達し、そのうち3%を建設業界が占めている。これは、金額にすると2兆1000億トゥグルグとなる。しかし、2023年の新築および大規模修繕工事の完了ベース(総生産高)では、7兆2000億トゥグルグである。建設業界で活動している企業数は7,200社あり、人口集中に伴って、これらの企業の84%、建設工事全体の50%が首都ウランバートルに集中している。

建設の種別をみると、2023年には住宅用建物は40%、非住宅用建物は34%、土木構造物は22%、大規模改修工事は4%とそれぞれ占めている(国家統計局)。建設資材生産局と都市開発・建設・住宅省の予測によると、2020年から2030年までで、主要な建設資材の需要は、2倍に増加するとされる。

1.2030年までの主要建設資材の需要(予測)

No.建設資材単位年(大きさ)
20172020202520272030
1鉄筋千.トン176.22462.33543.24098.45098.5
2レンガ百万.個77.4102.71477.8160.4199.5
3扉、窓千.m2325.9432.1621.8674.8839.5
4プレキャスト鉄筋コンクリート造千.m3239.9318.1457.7496.8618.0
5コンクリート・モルタル百万.m31.41.92.72.93.6
6セメント百万.トン1.31.82.52.83.4
7軽量コンクリート板千.m3337.0446.8643.0697.8868.1
8ミネラルスポンジ千.m315.320.329.231.639.4
9発泡ポリスチレン(EPS)千.m3353.3468.4674.1731.6910.1
10プラスチックパイプ千.km1.52.13.03.24.0
11建設用の砂と砂利百万.m31.21.72.42.63.2
12石灰千.トン169.3224.4322.9350.5436.0

出典:都市開発・建設・住宅省、建設資材生産局、建設資材生産工場のデータ集‐2023

この予測には、また近い将来需要が高まるグリーンビルディングと再生可能エネルギーを導入したビルの投入量の違いも考慮される必要があるという。

建設資材の供給

建設資材の供給全体の半数以上は、鋼柱、圧延鉄、その他の金属製品で占められており、コンクリート製品14%、木材と木工品13%、セメント10%、プラスチックパイプ、プラスチック窓、扉、アルミ製品、断熱材、窓と壁のガラス、砂利などの製品1〜3%、銅ワイヤーと銅パイプ、建築に使われる接着剤、乾燥混合物、コンクリートの化学混合物などがそれぞれ1%を占めている。

2021年〜2022年では、平均して建設資材の供給量全体のほぼ70%を輸入品が占め、国産品が30%を占めている(図1)。

1.建設資材の供給に占める国内生産と輸入の割合(2021年〜2022年の平均)

建設資材の輸入額は2021年に3億3,800万ドル、2022年には4億8,400万ドルとなっている。国内生産は少しずつ伸びているものの、この分野の競争力は弱く、輸入関税を支払っても中国製品の方が安く、国内で生産された製品は、中国製品に比べて割高となっている。2017年以降、国内で年間最大100万トンのセメントを生産できる大型工場が4ヶ所建設され、稼働を開始しているが、2022年に合計140万トンのセメントが生産されている。

輸入代替の試み

2022年末の時点で、モンゴルでは69,539の中小企業およびサービスプロバイダーが登記されており、これらの92%が従業員数10人以下、ほぼ80%が年収3億トゥグルグ以下の零細企業およびサービスプロバイダーである(国家統計局)。これらの中小企業の10%は建設業界で事業を営んでいる。都市開発・建設・住宅省によると、建設業界では輸入製品が70%を占めているが、販売されている建設資材の40%は規格条件を満たしていない低品質のものであるという。

したがって、輸入品を代替できる建設資材生産分野における中小企業の今日の競争力を測定し、客観的に評価し、競争力の強みと弱みを特定し、業界の利害関係者に的確な計画と意思決定に必要な情報や結論、勧告を提供する必要がある。

この目的のためにNGO開発ソリューションは、国際貿易センター(ITC)の中小企業競争力マトリックス手法を用いて、この業界の中小企業競争力を調査した。この調査では、中小企業の競争力は、「ミクロ」、「メゾ」、「マクロ」の3つの経済レベルと、「競争力」、「関連能力」「変化適応力」の3つの要素で評価された。

この調査は、ウランバートル市と12の県で活動的に事業を行っている建設資材メーカー101社を対象としている。これらのうち、36%が零細企業、31%が中小企業、33%が中企業であり、半数以上が首都ウランバートルに所在している。

これらの企業の事業を種類別でみると、27%がコンクリート・モルタル、コンクリートブロック、コンクリート構造物などの資材、18%が窓、扉などの資材、12%が砂利、砂、セメント、石など骨材、残りはその他の建設資材を生産している。国際貿易センターは、各国の競争力を比較する基準を設定し、その基準の60%以上の場合は強いレベル、60%以下の場合は弱いレベルとされる。モンゴルの比較基準は44.2であり、弱い値と強い値はそれぞれ26.5と70.7である(図2)。

2.競争力の比較基準

調査の全体指数から次のことが見えてくる。

企業能力:全体評価は55.8点、競争力60点、関連能力48点、変化適応力59点となっており、関連能力は低いが、比較基準を上回っている。ビジネスが成長するにつれて、企業能力は向上する傾向にある。建設資材メーカーである中小企業は、関連能力により注意を払う必要がある。

ビジネスのエコシステム:全体評価は58点、競争力64点、関連能力63点、変化適応力47点である。3つとも比較基準を上回っている。変化適応力は最も低い。

マクロ環境:全体評価は66点、競争力44点、関連能力78点、変化適応力77.4点である。競争力の点数は比較基準を下回っており、関連能力および変化適応力は強いと評価されている。

6.中小企業の競争力マトリックス概要

平均点数(0-100)指数競争力関連能力変化適応力
企業能力全体55.860.148.459.0
零細企業52.259.844.852.2
中小企業56.160.150.258.0
中企業57.460.949.362.1
ビジネスのエコシステム58.164.162.947.4
マクロ環境66.243.577.877.4
比較基準:44.5
弱い基準:<26.5強い基準:>70.7

競争力:比較基準を上回っているが、強いレベルではない。零細企業の品質管理が弱く、国内または国際的な品質証明書を受け取ることは少ない。資源管理においては、中企業が強いレベルで評価されている。これは、ビジネスが成長するにつれて収入と費用の会計および資金管理が改善されていることを示す。生産効率を示す指標は、比較基準より高く評価されており、ビジネス規模と負の相関関係がある。

関連能力:サプライヤーとつながる能力は比較基準を上回っているが、消費者や機関とつながる能力は弱い。消費者と効果的な関係を築き、消費者情報を活用することにあまり注意を払っていない。また、商工会議所や専門団体と連携することが一般的ではない。誰もがサプライヤーとつながる能力により重点を置いている。

変化適応力:事業計画と財務は強く、スキルは比較基準を上回っているが、イノベーションは低いと評価されている。事業計画と財務実績は、事業規模に応じて向上している。中企業は、優秀な人材確保において高く評価されている。しかし、いずれの規模の企業でもイノベーションが比較基準を下回っており、特に零細企業の評価は低く評価されている。

7.中小企業の競争力マトリックス概要と基本的指数の基準

基本指数企業能力ビジネスのエコシステムマクロ環境
  全体零細中小中企業  
競争力生産効率58.259.258.656.959.150.7
資源管理66.064.163.371.381.246.0
品質管理55.850.760.057.850.731.3
関連能力消費者42.441.645.539.272.685.9
供給者66.162.764.470.164.268.9
研究所30.722.636.133.539.762.6
変化適応力事業計画と財務74.165.672.378.861.676.8
スキル61.158.756.863.748.385.6
イノベーション36.125.640.637.536.673.7
比較基準:44.2
弱い基準:£26.5強い基準:³70.7

ビジネスのエコシステム:関連能力は、消費者やサプライヤーとは比較基準を上回り、機関とは比較基準を下回っている。しかし、マクロ環境では消費者、サプライヤー、機関とつながる機会は強い一方で、中小企業はその機会を最大限に活用できていない。

変化適応力はマクロ環境では高く評価され、ビジネスのエコシステムでは低く評価されている。一方で、競争力はマクロ環境では低く、企業およびビジネスのエコシステムでは比較基準を上回っている。

モンゴルの建設資材生産分野と、この業界で主な役割を果たしている中小企業の競争力の現状を簡単に説明すると、このような弱みと現状が見えてくる。ここには、労働力の需要と供給、季節労働、低賃金など、業界のあらゆる要素が含まれているわけではない。

2024年11月7日■

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