THE DUTY TO ENSURE AND PROTECT HUMAN RIGHTS
人権とは、すべての人に生まれた時から死ぬまで与えられた基本的な人権と自由を意味する。この権利は、すべての人が生まれた場所、持っている思想や信教、選んだ人生などに関係なく有するべきものである。この権利を何人たりとも奪うべきではない。しかし、法律に違反した場合や国家の安全を脅かした場合は、その権利を政府のみが制限することができる。
基本的人権には、その人の不可侵かつ他者に譲ることのできない、生命権と表現の自由などが含まれる。この不可侵の権利は名誉、正義、平等、尊敬、独立など社会的価値に基づいている。民主主義国では、これらの価値は法律で定義され、また法律で守られる。
モンゴル国憲法第16条に、国民の基本的権利と自由保障、第17条に基本的義務について定められている。モンゴルは民主主義国であるため、政府は法律によって国民の人権を保障し、また義務を果たさせる。そして、市民社会は政府の活動を監視し、政府に改善を要求する制度がある。
国際連合人権理事会(HRC)は、国連加盟国193ヵ国すべての人権の状況をそれぞれの国ごとに5年に1度審査する普遍的定期審査制度(The Universal Periodic Review-UPR)を2005年に設立した。モンゴルはこのUPRに人権報告書を3回提出しており、最初の2回の報告書に具体的な評価と勧告を受けている。先日、3回目の報告書を提出し、同理事会とオンラインで会議を行った。まもなくその勧告を受け取るようだ。
UPRの審議のため、その国の政府独自の報告書に加え、国家人権委員会、非政府組織(NGO)フォーラム、国連の各機関それぞれの報告書や評価が送られる。今回、モンゴル政府は報告書を法務内務省事務次官B.バーサンドルジが紹介し、NGOのメンバーがオブザーバーとして参加した。
モンゴルでは、人権NGOは独自のフォーラムを持ち、報告書を提出している。今回の報告書には:
- 人権国家の仕組み
- 政策連携のない発展-人権
- グループの権利
- 健康保険制度
- 表現の自由
- 拷問からの解放の権利
- 性的暴力
- 人身売買
- 家庭内暴力
- 性的マイノリティの権利
- 若者の政治参加
といった報告内容が盛り込まれている。12月10日の世界人権デーのために、これらの報告書の中からここでは1つ焦点を絞って分析していきたいと思う。
表現の自由
表現の自由を強調するには理由がある。なぜならば、この権利がなければ、その他のすべての権利が侵害されることになるからだ。憲法第16条16項に、「モンゴル国民は信仰の自由、表現の自由、言論の自由、報道の自由、平和的な集会やデモンストレーションを行う自由権利を有する。集会やデモンストレーションを行う手順は法律によって定められる」とある。この条項について、2015年に国連人権理事会が審議し、具体的な勧告を出してきた。表現の自由について7つの勧告が出されたが、モンゴルはそのいずれも実施していない。それは:
- 関連する国内の法律を国民および政府の権利について国際規約に適合させ、通信規制委員会の独立性を確保すること。
この勧告は実施されていない。モンゴル国会は2019年5月30日に通信規制法を改訂したが、その独立性を確立させていない。
- 名誉棄損は犯罪とみなさないこと。
これも実施されていない。モンゴル政府はこの勧告を実施していないどころか、より悪化させた。名誉棄損は、2017~2019年まで違反法によって裁かれていた。しかし、2020年1月10日に刑事法が改正され、虚偽報道(フェイクニュース)は、犯罪として取り締まりの対象になった。違反法が施行された2018年7月〜2019年3月までの期間に同法6条21項により46人のジャーナリストが名誉棄損で起訴された。そのうち12人は有罪判決を受け、罰金刑が科された。モンゴル・グローブ・インターナショナルセンターは、同規定を無効にするべきだと2019年10月に国連人権理事会に提出した報告書に記述している。今日、モンゴルでは、ジャーナリストの3人に1人が名誉棄損行為で警察庁から取り調べを受けている。
- メディアと市民社会の労働者が自由に、そして恐れることなく活動できる環境を確保し、彼らが政府や地方行政を取材し批判したことに対し、捜査や脅迫を受けることから守られるべきということ。
これも実施されていない。グローブ・インターナショナルセンターが300人のジャーナリストを対象に実施した「ジャーナリストの安全性水準を確認する調査」がある。この調査によれば、300人のジャーナリストの67%が何らかの脅迫や圧力を受け、時には侮辱された。58%が武器による攻撃を受けた。36%が司法機関からの圧力を受けた。18%が身体および健康に対する暴力を受けた。これらは、テレビ局やウェブメディア、新聞社に勤める35歳までの多くの若いジャーナリストが受けている現状である。
- ジャーナリストの情報源を秘匿する権利およびホイッスルブロワーの保護
これも実施されていない。国家腐敗対策プログラムのジャーナリストの情報源の秘匿権、ホイッスルブロワーの保護に関する規定は施行されていない。上記の調査対象になった300人のジャーナリストの51%が情報源を公表する必要性に迫られている。
- ソーシャルネットワーク上での表現の自由の確保
実施されていない。捜査官は、裁判所の許可なしに、検察官の許可のみで通信ネットワークにアクセスし、監視し、配信元となる情報を関係当局に出させることができる状況が、今も続いている。通信規制委員会は、SNS上でのコメントにワードフィルターを利用することを、作成した「デジタルコンテンツの一般利用規約」に義務付けている。ただし、この条件は、法務内務省の規範法に登録されていない。こういった強硬措置は登録された後に実施されるべきである。
- あらゆる権利を制限することの合法性、必要性、規範原則を順守させる。
実施されていない。2016年に可決成立した国家および公的機密に関する法律は2017年9月1日に施行された。この法律で国家機密リスト確定法が無効になった。機密情報の数は2017年に60件だったのが、2019年には565件となった。2019年2月、グローブ・インターナショナルセンターは、ジャーナリストと共同で16の政府機関に対して具体的な情報公開を要求した。これらの機関のうち5つの機関のみが完全に情報を提供した。
例えば、ウランバートル市内のA級の土地所有者の名前を提供してほしいという質問に対して、ほとんどの機関は機密情報として提供しなかった。これは機密として規定されるような情報ではない。
- インターネットの規制の枠組みの中で、プライバシーの権利や表現の自由を含む人権を全面的に確保する。
実施されていない。今でもインターネットユーザーのIPアドレスは公開されたままである。モンゴルにはデータ保護法が必要である。すべての国民は表現の自由を行使する際に特定の義務を負う。この義務は憲法第17条に定められている。「憲法、その他の法律を尊重し、遵守する。人間の尊厳、名誉、権利、正当な利益を尊重する。」
国連人権理事会の勧告を全面的に実施し、人権を保障し、保護することは国家の重要な義務である。
2020年12月10
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