DO WE REALLY WANT JUSTICE?
毎年12月9日は国際腐敗防止デーとなる。この日は世界各国で腐敗撲滅のキャンペーンが行われる。世界各国では腐敗防止のためにどのような対策措置が採られてきたのか、それがどのような結果をもたらしたのかについて議論し、評価するのである。なぜならば、国の発展を妨げ、貧困を拡大させる最大の要因は、腐敗と悪しきガバナンスだからである。「腐敗」という社会問題について、特にモンゴル国民はより一層肌身に感じるようになり、腐敗撲滅のために市民社会は声を上げ、団結し、腐敗を一掃するよう要求しているが、結果は芳しくない。腐敗の代償を国民が払わされている。そのため今日では、モンゴル国民の3分の2が貧困にあり、4分の3は未だに地面に穴を掘り木の柵で囲っただけのトイレを使用している。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表している腐敗認識指数では、モンゴルは2018年に180ヵ国中93位、2019年に106位となっている。
腐敗の主な原因
モンゴル国は世界の民主主義国家同様に、立法権、行政権、司法権という独立した三権(trias politica)で構成されている。この三つの国家権力はそれぞれ独立し、権限と責任が決まっており、相互にバランスを維持し、相互に報告し合い、人権や自由、正義を遵守して機能すべきである。
しかし、モンゴルでは、この三権の独立が正しく機能していない。特に正義を確立するべき監査や司法機関の独立性が腐敗に侵食されてからは、腐敗は拡大を続けるばかりである。大きな腐敗事件は解決に至ることなく、犯罪者は罰せられることがない。腐敗により国にもたらされた数兆トゥグルグに上る損害は、犯罪者たちから取り戻されることなく、国民が不利益を被っている。こういったことが社会における国民の不満となり、政府による腐敗との戦いへの信頼を失う原因になっている。
腐敗がもたらすリスクとして挙げられることは、外国投資家がモンゴルに見切りをつけ去ってしまうことだ。また腐敗は国内経済を低迷させ、企業の競争力を失わせる。そして経済への国家の関与が高まり、多くの公共の財産に対する管理能力が失われる。そうして管理されなくなった公共の財産を、少数の者が政党の名を盾に横領し続けている。そこには、本来なら国の予算や歳出を管理すべき財務省、国有財産政策・調整庁、監査庁などの機関が目を光らせるべきだが、いずれの組織もリーダーシップの欠如が著しい。
モンゴル社会において、腐敗はすでに日常茶飯事となっている。公務に就くパブリック・サーバントたちは、賄賂なくしては動かなくなった。腐敗に関する調査に参加した人々の60%以上が、公務員の官僚主義という壁に行き当たり、その壁を乗り越えるために賄賂を贈っていると答えていた。
法務・内務省のURL(ホームページアドレス)は www.mojha.gov.mn であり、英語ではMinistry of Justice and Home Affairs と表記されている。この表記をモンゴル語に訳すと「正義・内務省」となる。同省及び、その管轄下にある警察庁、国境警備庁、判決執行庁、国家登記・知的財産庁、公文書管理庁、外国籍庁、司法分析国立研究所、法務大学、法務国立研究所、法支援センター、政府特別公務員総合病院などのエージェンシー機関の全職員が、毎朝出勤する前に「私は国に正義を確立させるために務めているのだ」と考えれば、少しは状況も変わると思う。如何なる仕事の結果も、それを行う人間の態度によって決まる。
アメリカ合衆国、インドなど多くの国では、法務省を正義の場所(The Department of Justice)だと定めている。
モンゴルは何をすべきか
まず、賄賂対策庁の権限をより一層強化し、腐敗防止のための法的環境を整備しなければならない。腐敗防止国家プログラムを積極的に実施し、腐敗事件に特化した裁判所を設立する必要がある。腐敗する者たちを罰し、実際に被った損害を賠償させるという原則を厳格に履行させる習慣をすべての機関に根づかせる必要がある。
腐敗との戦いは、賄賂対策庁だけに任せれば済む話ではない。あらゆる段階の公務員は自らの仕事を、賄賂を受け取らなくても行うべきである。また問題は、監督すべき組織自体にも、組織の透明性、責任感、正義を確立させるために管理職がリーダーシップを発揮することもなく、そのための実際の行動もないことだ。賄賂対策庁は、腐敗事件の情報をつかみ捜査をする機関ではあるが、そもそも業務で収賄をしないことが全ての公務員の義務である。賄賂を拒否することを義務化し、日々の職務を確認し、指導し、リーダーシップを発揮することは、政府管理職が次世代へ残す良きお手本であり、それは遺産になる。
モンゴルの腐敗を根絶するためには、国有企業を公開された株式会社にし、企業を株主たちの監視下に置く必要がある。今日、議論されている「行政・領土単位とその管理に関する法律」が可決成立すれば、郡や区は独自の課税や予算作成の権限を持つようになる。地方自治体が所有する企業もまた多数設立されるだろう。そのため、企業の良いガバナンスを設立時から正しく導入される必要性が出てくる。
公務員職への政党による任命という慣習を廃止し、公務員を能力に応じて任命し、再訓練や昇進制度のしくみを構築する時が来たと思う。また、腐敗の主な原因となっている政党の財源を透明化する法律を整備する必要がある。
モンゴル人は、自身が所属する政党、団体、人脈、受ける利益を見て「人々は良い政治家を中傷している」だとか、「多くのことを成し遂げた政治家を、こんなちっぽけなことで捜査するなんて」と簡単に口にする。こういった軽々しい発言や思考は、自分が腐敗側にいるのか、腐敗と戦っている側にいるかを区別できない中途半端なものにしてしまう。
モンゴルでは、選挙だけが民主主義であるといえるだろう。これからは、選挙と次の選挙の間で、公共のガバナンスのすべてのレベルでの市民参加、監視、議論といった本当の民主主義を根付かせる必要がある。ただ法律や規定を変え、様々なプログラム作成しスローガンを掲げるだけでは、腐敗は減少しないということを私たちはこの20年間、嫌というほど見てきた。
私たちは、腐敗を拒否する世代を育成し、啓蒙するような働きかけをしなければならない。正義とは、すべての社会が存在するための基盤だからだ。
2020年12月17日
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