WHO BENEFITS FROM TRANSFORMING BANKS TO JOINT-STOCK COMPANIES?
モンゴルは商業銀行の所有権が一部の人達に集中することを嫌い、法律の改正を行っている。2022年半ばまでに社会的に影響の大きな(商業銀行の総資本の5%以上を占める)5行については公開株式会社へ、2023年末までに残りの7行を株式会社に移行させるという。そして個人が保有する株式は20%までとする。
この突然とも言える銀行改革では、なぜ所有権を分散させるために所有者の複数化が必要なのか?この改革を実行するにあたって直面する課題とは何か?経済における利点は何か?これらを国民と社会全体が理解し、受け入れる時が来た。
改革の必要性
12の商業銀行の預金と貸付の金利が高くなっているため、銀行は企業への貸付、経済への融資ができなくなっている。主な理由は、ほとんどの銀行の所有者が1人もしくは2人であり、そのため銀行のガバナンスが弱く、業務が不透明であり、自己資本が不足していることにある。銀行の内部および外部監査は、銀行の所有者に左右されて来たため、ガバナンスは弱まる一方である。銀行は経済を歪め、ビジネスでの競争を妨害し、不正行為を助長する組織となった。
総資本の10%しか保有していない銀行の所有者は、残りの90%を占める顧客や社会から銀行業務を秘匿にしている。商業銀行は、個人や企業の秘密情報を、銀行の所有者に有利に働くよう不正に使用するようになった。モンゴルの大手銀行は、所有者がもっている多種多様なビジネスのためだけに機能するようになり、公正な競争機会を阻害している。大手銀行は所有者が輸入している車や食糧を使用し、所有者が建てたマンションやアパートに融資を提供している。
また銀行の所有者は、国家予算を横領し、その金を自己資本にし、鉄道など大規模なインフラプロジェクトを政治家と共謀し、自行の関連会社で請け負っている。小規模銀行は初めから破綻しており、政府基金の資金を横領している。
その結果、銀行の不良債権はポートフォリオ全体の10%以上を占め、リスクをカバーするはずのファンドや自己資本が不足する事態となっている。モンゴルは2017年に対外債務の危機に陥り、国際通貨基金(IMF)から融資(EFP)を受けることとなった。その融資を受ける条件として、商業銀行の自己資本比率を引き上げることに合意した。その審査を国際金融コンサルタントのダフ&フェルプス社が実施した。ダフ&フェルプス社は、モンゴルの商業銀行の自己資本増加の90%が国際銀行基準に準拠していないとした報告書を出した。モンゴル銀行(中央銀行)は、この報告書を公表せず、隠し続けている。結果、モンゴルはIMFと合意した4億5000万ドルとそれに伴う50億ドルの融資のわずか半分しか受け取ることができなかった。IMFがモンゴルに実施したEFPプログラムは失敗に終わった。そしてモンゴルはマネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)のグレーリストに載ることとなった。
これらのことが背景となり、モンゴル銀行は政策金利を500ポイント※引き下げたものの、商業銀行は融資を提供する資金が不足する状況に陥っている。さらに、2020年にコロナウイルスが世界的にも流行し、断続的に実施された外出制限により企業活動が停滞し、国は経済的、医療的に大きなダメージを受けている。
* ポイントは金利の表示単位で0.01%のこと。500ポイントは金利5%となる。
試練
銀行改革の方向性は正しいが、その実行においては評価が現実的でなければならない。現在の所有者に損失を与えないこと、投資家の信頼を築くこと、また、株式が売却されないなど多くの試練が待ち受けている。
銀行の公正な価値を確定するためには、まず、不良債権をリスクファンドおよび自己資本で解決し、銀行の貸借対照表から消し去る必要がある。
韓国は、1998年のアジア通貨危機から脱出するために、韓国資産管理公社(KAMCO)を設立し、政府が不良債権を買い取った。2020年の腐敗認識指数で181ヵ国中111位にランクしたモンゴルでは、政府が腐敗に侵されているこの状況でそのような会社を設立すれば、政治家の働きかけにより、不良債権が高値で買い取られる可能性が高い。
銀行を所有者が関与しているビジネスや融資から完全に分離し、専門かつ独立した経営を行うことによってのみ、投資家の信頼を得ることができる。信頼がなければ、誰も株式を買ってリスクを負いたいとは思わない。
新規公開株(IPO)の前には企業を評価するたくさんの方法がある。最も一般的な方法の1つは、現在の利益が10年間継続すると推定することである。モンゴルの12の商業銀行の総利益は、2020年に2,900億トゥグルグ(モンゴル銀行の情報)である。銀行全体の時価評価額は3兆トゥグルグであり、そのうちの80%を売却すれば、2兆4000億トゥグルグが現在の所有者の元へ入る。これは所有者の資産を押収もしくは奪取しているということではなく、実際の価格で売買する公正な取引である。この資金は、また証券取引市場へ何らかのファンドを通じて銀行以外の企業の株を購入するものとなる。
これらすべてが正しく行われ、国際基準に準拠していれば、外国投資家を誘致することができる。それに伴って経営ノウハウも入ってくる。しかし、銀行改革が失敗すれば、投資家は銀行の株式を購入しなくなり、商業銀行の所有者は5人以上という法律に違反することになる。そうなれば、モンゴル銀行は他にどんな措置を取ることができるだろうか?
利点
商業銀行は少数の所有者の利益やビジネスのために機能するのではなく、複数の所有者がおり、腐敗がなく、管理された透明で良いガバナンスを確立しなくてはならない。その時にこそ、銀行間の健全な競争が生まれ、貸付金利が低くなる。
貸付金利が下がれば、個人や企業の消費が喚起され、ビジネスが拡大し、物価が下がる。貸出の低金利と十分な供給は、モンゴル経済発展に最も欠けている条件である。
ビジネスが拡大するにつれ、雇用が創出され、貧困が減少し、新しい技術が導入され、企業間の競争力向上に繋がり、製品やサービスを輸出する条件が整備される。
そのため、銀行の単独所有者の株式に制限をかけることは、銀行にも銀行の所有者にも、企業にも、国の経済発展という側面からも、誰にとっても有利となる。
今日では、世界50ヵ国で銀行の所有権が制限されており、そのうち16ヵ国で20%、6ヵ国で15%、4ヵ国で10%、5ヵ国で5%、2ヵ国で5%未満となるように法律で制限されている。(「Banks and Systems」Journal.06 February 2009)
2021年2月3日
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