井川原賢

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駐モンゴル日本国特命全権大使

井川原大使は、九州大学経済学部経済学科を卒業しました。外務省では、アジア局中国・モンゴル課、経済協力局無償資金協力課副課長を務めたほか、在中華人民共和国日本国大使館、在香港日本国総領事館、在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、在アメリカ合衆国シカゴ日本国総領事館領事、外務省アジア大洋州局日中経済課首席事務官、情報分析局上級調整官、在香港日本国総領事館首席領事、外務省アジア大洋州局中国・モンゴル第一課地域首席調整官、在中華人民共和国青島日本国総領事などを歴任しました。

2023年12月より、駐モンゴル日本国特命全権大使として着任しています。

J(ジャルガルサイハン): 本日はお越しいただきありがとうございます。まずは、日本国天皇皇后両陛下のモンゴルご訪問についてお話を伺いたいと思います。今回のご訪問は、ほぼ1週間にわたる歴史的な訪問となりました。このご訪問がモンゴル、そして世界に向けて持つ主な目的やメッセージは何だったのでしょうか。

井川原賢: 本日はお招きいただき、誠にありがとうございます。冒頭からこのような素晴らしいご質問をいただき感謝いたします。今回のご訪問は、天皇皇后両陛下にとってモンゴル国への初めてのご訪問であり、無事に成功裏に終えることができました。

私自身、大使として赴任している国において、天皇皇后両陛下をお迎えできたことは大変光栄なことでした。昨年7月に行われたこのご訪問は、歴史的意義を持つ出来事であると同時に、両国関係に新たな一章を開くものとなりました。

ご存じのとおり、モンゴル国のウフナー・フレルスフ大統領は、訪問期間中、天皇陛下と皇后陛下を心から温かく迎え、特に歓迎式典や公式行事において、両国関係の友好ムードが鮮明に示されました。

また、モンゴル国民の皆さまが心からのもてなしと温かい歓迎でお迎えくださったことは、日本国民に非常に強い印象を与えました。これらの様子は、日本およびモンゴルの報道機関でも広く紹介されました。

J 日本国内では、この訪問についてどのように報じられ、国民はどのように受け止めたのでしょうか。

井川原賢: モンゴルの報道やSNSを通じて、日本国民はまず、天皇陛下と皇后陛下に対して、モンゴル国民および政府がどれほど敬意をもってお迎えくださったかを知りました。次に、モンゴル側が周到に準備したすべての行事に対し、天皇陛下と皇后陛下が非常に満足されている様子を見て、日本国民も大変うれしく、誇らしい気持ちになりました。

J 天皇陛下と皇后陛下は、海外訪問の機会がそれほど多くないと伺っています。そのような中で、なぜモンゴルが海外訪問先に選ばれたのでしょうか。

井川原賢: ご指摘のとおり、天皇陛下と皇后陛下は、国際親善を目的とした海外訪問をインドネシア、英国から始め、その後にモンゴルを訪問されました。モンゴルは3番目の訪問国となります。これは、モンゴルを特別に重視し、親しみと敬意を持って接していることの表れではないかと思います。

J なぜモンゴルにこれほど高い重要性を置いているのでしょうか。両国関係の歴史、政治、経済的要因について、どのようにお考えでしょうか。

井川原賢: 1990年にモンゴルで民主化が始まって以来、日本はモンゴルの発展、社会・経済の安定を支える信頼できるパートナーであり続けてきました。近年、両国関係が新たな段階に入った背景には、2022年の外交関係樹立50周年に際して、フレルスフ大統領が日本を訪問されたことが大きく関係しています。

この訪問を機に、両国は「自由で開かれたインド太平洋」の理念のもと、関係を「戦略的パートナーシップ」から「平和と繁栄のための特別戦略的パートナーシップ」へと格上げしました。また、その実現に向けた「行動計画」も発表され、今後10年間にわたる多分野での協力が明確に示されました。日本とモンゴルは共通の価値観を共有しています。人を中心とした協力をあらゆる分野で発展させ、世界が直面する課題を共に乗り越えていくことを目指しています。

J よりグローバルな観点から見たとき、両国の国民・政府、そして戦略的な協力として、どのような主要課題を一緒に解決していく必要があるとお考えですか。

井川原賢: 私たちは国際社会において非常に近い立場にあります。中国とロシアという同じ隣国を持っていますし、国際情勢も大きく変化し続けています。したがって、私たちはまさにこの変化に直面しています。そのため両国は、共通の価値観に基づき、より良い状況、より望ましい環境の下で共に発展していく道を模索しています。そのために、民主主義、自由、法の支配といった共通の価値を大切にすることが、私たちにとって最も重要な点です。

J はい、民主主義、人権、法の支配といった共通の価値を両国は共有しています。こうした共通の価値観に基づき、両国には協力する権限と可能性が十分にあります。その意味で、日本とモンゴルの関係は非常に良いモデルになると思います。

先ほど、両国の共通の隣国について言及されました。それに関連して、現在ウクライナで起きている出来事について、どのような立場をお持ちですか。ウクライナ戦争に対する貴国の公式な立場はどのようなものでしょうか。

井川原賢: 私たちはロシアの侵略に反対し、それに立ち向かっているウクライナ国民と共にあり、問題を解決し、乗り越えていくために、ウクライナの立場を全面的に支持しています。

言い換えれば、国際社会において一度でも、武力によって他国へ侵攻し、侵略を行うことが許されるならば、私たちは現在そして将来において、平和を築き繁栄を実現するための根本的な土台を自ら崩すことになってしまいます。したがって、私たちはウクライナ支持の立場を堅持し、ロシアに対して明確かつ断固たる措置を講じる必要があると考えています。

J 先ほど、大使は両国関係が「戦略的パートナーシップ」から「特別戦略的パートナーシップ」へ格上げされたとお話しされました。この「特別」とは、どのような意味や理由があるのでしょうか。

井川原賢: 以前は「戦略的パートナーシップ」の水準で関係を築いてきましたが、これを格上げして「平和と繁栄のための特別戦略的パートナーシップ」へと拡大しました。

これは第一に、このパートナーシップの重要性について、国民や周辺国に対して、より深い理解を促す必要があるという考えを表しています。戦略的パートナーシップという言葉は一般的で、比較的単純な概念です。しかし、私たちは国際安全保障に対してより大きな注意を払う必要があります。そうなると、特別な取り組み、特別なレベルのパートナーシップについて語る必要が出てきます。したがって、国民の関心をそこに向ける必要があることを示しているのです。

J それでは、経済協力について伺います。モンゴルと日本は初めて自由貿易協定、すなわち経済連携協定(EPA)に署名しました。現在の貿易状況をどのように見ていますか。貿易不均衡が大きいと言われていますが、この点について大使はどのようにお考えでしょうか。

井川原賢: 良いご質問です。経済連携協定(EPA)は、モンゴルと日本の相互利益にかなう経済協力において重要な役割を果たしています。ただし両国が協定を批准したにもかかわらず、残念ながら貿易不均衡が依然として解決されていないことを指摘する人もいます。

しかし、この協定の目的は、単に関税優遇によって短期間で貿易不均衡を是正することに限定されているわけではありません。むしろ、広い意味で経済関係を強化する包括的な仕組みを構築することが主要な目的です。

つまり、対外貿易関係だけでなく、投資関係を強化することにも重点が置かれています。これには、両国間の知的財産権保護、電子商取引の発展、投資環境全体の改善などが含まれます。他方で、両国はEPAの潜在力を十分に活用し、経済関係を強化するため、継続的な対話を行い協力していく責務があります。

J 数年が経過しても、両国の貿易収支は依然としてモンゴル側の大幅な赤字のままです。モンゴル側は主として日本の製品を大量に購入している一方で、日本市場に出ていくモンゴルの製品は非常に少ない状況です。これは何が原因だとお考えでしょうか。モンゴルに十分な製品がないからでしょうか。それとも、日本が求める基準に適合していないからでしょうか。貿易赤字をどのように縮小できるでしょうか。私たちができることは何でしょうか。

井川原賢: この問題はモンゴル側が常に提起してきたことであり、日本側、そして私自身も同様に注意を払い、継続的に話し合っている重要課題の一つです。例えば、貿易・ビジネス関係の企業がモンゴルを訪れ、私たちの職場で面会することがあります。その際、私たちは常にこの問題に触れ、日本へ輸出できる良い製品をどう見つけるかについて議論しています。

しかし実際のところ、現時点では日本市場に供給できるほど十分に良い、あるいは適合する製品が、モンゴルにそれほど多くはありません。そのため、私たちは日本企業やモンゴル企業と常に意見交換し、助言し合っています。時にはモンゴル政府とも話し合い、この貿易不均衡や差をどのように縮小できるかを検討しています。

J 効果的な協力の良い例として、モンゴルの国際空港が挙げられます。これは日本の円借款で建設されました。現在、この空港はフル稼働しており、第2空港建設、または現空港の拡張が議論されています。私は、大使が空港を視察された様子をメディアで拝見しました。では、拡張計画は現在どの段階にありますか。どの程度の規模・能力の拡張になるのでしょうか。そうなれば第3段階の拡張を急ぐ必要はなくなると思いますが、この点についてお話しください。

井川原賢: チンギス・ハーン国際空港は、日本とモンゴルの協力を象徴する最大級のプロジェクトの一つです。新しいターミナル建設の必要性が高まっていることは、このプロジェクトの重要性がさらに増していることを示しています。

まず、空港そのものの役割を強調したいと思います。チンギス・ハーン国際空港は、モンゴルを世界の国々と結ぶ空の玄関口となりました。これにより、旅客・貨物の流れが加速され、モンゴルの観光、経済発展、成長を多方面から支えています。

また、モンゴルが国際社会により深く統合されることにもつながり、その結果として航空ネットワークの接続性を実質的に改善しています。近年、旅客需要は急速に増加しています。2024年には旅客数が218万人に達しました。1999年はわずか27万人でした。この急激な増加が、空港拡張の必要性を現実のものとし、時宜を得た対応になっています。

日本側はモンゴル政府と緊密に協議しながら進めています。これは、第2ターミナルをモンゴルの需要に合う形で建設し、モンゴル側の要件を十分に満たすことを目的としています。

J 新ターミナルは既存ターミナルの拡張と接続する形になるのでしょうか。それとも独立した新しい建物ですか。

井川原賢: 現時点では最終決定していませんが、私たちの考えとしては、新しい第2ターミナルを建設する方向です。

J 第2ターミナルですね、理解しました。

井川原賢: はい、単に既存ターミナルを拡張するだけではない、ということです。

J 新ターミナルは既存のターミナルと通路でつながるのでしょうか。それとも別の場所に建てるのでしょうか。

井川原賢: もちろん通路でつなげます。そうでなければ、旅客にとって不便になってしまいます。

J 第1ターミナルは約6億ドルで建設されたと聞いています。第2ターミナルはどの程度の費用になるのでしょうか。

井川原賢: 第2ターミナルの費用は、まだ確定していません。モンゴル政府内部で協議が続いており、公開の形で調査する段階にはまだ至っていないからです。

J 今回も日本側の長期借款として実施されるのでしょうか。

井川原賢: はい、その予定です。

J それは良いことですね。新空港と言われていますが、現状では期待より能力が低い面があるのも事実です。しかし、観光の急速な伸びは、この空港の能力によって実現した部分があると思います。

井川原賢: 私も同じ意見です。今後もこのプロジェクトを、モンゴルの航空ネットワーク、そして将来の経済成長にとってより有益な形で実施できるよう努力していきます。

J 次に、経済だけでなく文化分野の協力について伺います。現在の文化協力の水準をどのように見ていますか。

井川原賢: 文化は両国をつなぐ橋となる非常に重要な要素です。先ほど申し上げたように、天皇陛下と皇后陛下はモンゴル訪問中、モンゴル文化に触れる多くの行事に実際に参加されました。

特に一つ強調したいことがあります。天皇陛下は公式レセプションに出席された際、馬頭琴オーケストラとともに、チェロでモンゴルの曲を一つ、日本の曲を一つ演奏されました。これは非常に象徴的な文化交流の一例だったと思います。

J 本当に素晴らしかったです。

井川原賢: はい、本当に素晴らしい演奏でした。自然と心が動かされる出来事でした。天皇陛下はレセプション直前まで熱心に練習を重ねておられました。だからこそ、そのチェロ演奏は両国の多くの人々の心に届き、感動を与えたのだと思います。

J 私たちモンゴル人は、日本のいくつかの都市・地域で民族歌舞の公演を開催しています。一方で、スフバートル広場では日本のアーティストが来て公演したこともあります。このように多くの交流が進んでおり、文化交流は順調に発展していると思います。

また、多くのモンゴルの若者が日本で学び、働いています。私たちの推計では、日本で学び生活しているモンゴル人は約1万人ほどだと見ています。教育面では、毎年何人ほどが日本へ行っているのでしょうか。日本側にはモンゴル人学生向けの特別プログラムや奨学金はありますか。どのような機会があるのでしょうか。

井川原賢: ご質問にお答えする前に、文化分野の相互交流について触れたいと思います。モンゴルの若者が日本で学ぶ、研修する、働く機会は現在拡大しています。日本政府文部科学省国費外国人留学生奨学金プログラムでは、学士課程、工業高等専門学校(高専)、専門学校、大学院など、さまざまな分野で学ぶ機会があります。さらに、教員養成プログラムや、若手公務員向けの日本での研修プログラムなどもあります。

例えば、M-JEEDプロジェクト(工学系高等教育支援事業「1000人エンジニア・プロジェクト」は、第2期の実施に向けた準備を進めています。JICAは、農業、医療、インフラ開発など多くの分野で研修・実習プログラムを提供しています。加えて、日本の地方自治体がモンゴルの若者を積極的に雇用し、価値ある実務経験やスキルを得る機会を提供しています。

日本政府は、日本留学フェア、就職フェア、高校留学に関する情報フェアなども支援しています。これは若い世代が正確な情報を得る上で重要です。

J 特に、技術系の「高専(コーセン)」と呼ばれるプログラムがあります。高専プログラムは、モンゴルの教育制度の中にうまく導入され、拡大していますが、今後の高専教育の将来をどのように見ていますか。

井川原賢: 高専は、ご指摘のとおり、日本の技術教育がモンゴルで成功裏に実施されている非常に良い例です。その理由は、高専をモンゴルに設立した出発点が、日本政府の主導ではなく、日本の高専で教育を受け、経験を積んだモンゴルの若者たち自身の意欲と熱意にあったからです。

彼らは、高専をモンゴルに根付かせることを強く望み、粘り強く取り組んできました。その結果、高専教育制度の構築は成功しました。多くの若者が主体的に関わりました。言い換えれば、高専の教育手法がモンゴル社会のニーズに非常によく合致していることを、モンゴルの若者自身が見抜いたということです。10年以上前から、モンゴル社会には技術水準や品質を高める必要性が強くありました。これは社会的な要請でもあったのです。

J モンゴルの若者の中には、高専教育を基盤として日本で働く人もいます。具体的にはどのような仕事に就いており、人数はどのくらいいるのでしょうか。

井川原賢: 正確な人数については、現時点では把握していません。日本で働く高専卒業生の総数を正確に把握している人はいないのではないかと思います。ただし、高専卒業生が活躍している分野は非常に幅広く、製造業、IT分野、農業、医療分野など、多岐にわたっています。

J 次に、日本の対モンゴル投資について伺います。中国や他国と比べると、日本からの投資は相対的に少ない状況です。しかし、日本には世界的な大企業が数多く存在します。そうした企業をモンゴルに呼び込むためには、何が必要で、どのような環境整備が求められるのでしょうか。

井川原賢: 正直なところ、この質問に答えるのは簡単ではありません。以前は、日本企業は政府の方針や意向を非常によく重視していましたが、現在では産業界やビジネス界は、日本政府の政策から独立し、より自律的に判断するようになっています。そのため、ご指摘の課題を解決するための有効な方法を、現在も模索しているところです。

例えば、日本大使館はモンゴル国経済・開発省やモンゴル商工会議所と協力しています。また、日本の地方商工会議所とモンゴルの商工会議所、そしてそれらの関連機関が、相互の連携を強化する取り組みも行っています。こうした形で解決策を探っていますが、現時点では、すぐに実行可能な決定的な方法はまだ見つかっていません。

J 背景にはさまざまな要因があると思います。例えば、モンゴル市場は規模が小さいため、大企業にとっては魅力が限定的かもしれません。一方で、中堅企業と協力する余地はあると思います。彼らの関心を引きつけ、近隣諸国へ製品を展開できる環境を整える必要があるのではないでしょうか。そのためには、モンゴル側で政策を策定し、実行していく必要がありますね。

井川原賢: はい、そのとおりです。

J 10年後の両国の協力関係を、どのように展望していますか。

井川原賢: 近年、日本企業の中には、モンゴル市場でビジネスを成功させ、さらにモンゴルのパートナーやディストリビューターと共に中央アジア市場へ進出している好例があります。私は、この新しい方向性と協力の形に大きな関心を持っています。

これまで多くの日本企業は、モンゴル市場を小さいと見て慎重でした。しかし、モンゴルを中央アジア市場への「入り口」と捉える方が、より現実的だと考えています。こうした成功事例や経験を積み重ねていくことは非常に重要であり、多くの日本企業にとって一つの指針になり得ると思います。

J つまり、中央アジア市場を見据えた関係強化が重要だということですね。

井川原賢: はい、そのとおりです。

J 本日はさまざまな分野についてお話しいただきましたが、この短いインタビューですべてを網羅することはできませんでした。モンゴル国民は日本により親しみを感じるようになっており、日本国民も同様にモンゴルに近づいています。その象徴的な例が、天皇皇后両陛下のモンゴルご訪問です。

今後、さらに努力して協力を深め、両国間のビジネス協力を拡大していけることを期待しています。本日はインタビューにお応えいただき、誠にありがとうございました。

井川原賢: 本日はお招きいただき、誠にありがとうございました。最後に申し上げたいのは、日本の人々がモンゴルの文化や国民について知れば知るほど、理解が深まり、より好きになっていくということです。同様に、モンゴルの皆さんにも、ぜひ日本を訪れ、交流を深め、日本をよりよく知っていただきたいと願っています。こうした積み重ねの上に、両国関係はさらに深化し、今後も世界の平和と安定のために共に協力し続けていくことになるでしょう。

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