大統領の再任はあるか?

Jargal Defacto
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国家権力の分配

立法権 行政権 司法権

民主革命から30年を経たモンゴルは、発展停滞状態(交通渋滞、大気汚染、貧困、海外移住、社会的不平等、腐敗、通貨下落)に陥っており、その主な原因は国家権力の分配の歪みにあると結論付けることができる。民主主義国家と市場経済の国では、国家権力が立法権、行政権、司法権といった3本柱で構成され、それらが相互にバランスをとり、相互に制御されることで社会経済の発展がもたらされる。しかし、モンゴルには半議会制、半大統領制の政府があり、大統領は司法権を握り、行政権は話す以外に何もできないものとなってしまっている。

司法の行動や下す判決は不可解なものとなり、モンゴルには正義が不足している。一部裁判の審議は非公開で行われるようになり、誰が何の容疑で逮捕され、拘留されているのか、または誰の裁判が何年も延期され、誰を無罪にしているのかなどが極秘となり、社会の憶測の状態にある。賄賂を受け取った者、公共の財産を横領した者たちは、何の罰も受けることなく法律を逃れ、何もなかったかのように、いやまるで英雄のように振る舞うことが状態化している。司法では、“5つのSH1”という大きな腐敗撲滅作戦が“5つのCHISH2”作戦となり、反腐敗の流れを停止させた。中小企業融資、開発銀行の横領、石炭横領、教育ローン不正受給などの犯罪はすべてはじめから無かったかのように消滅した。

一方、経済を見ると、赤字の国有企業が市場を独占し、大きくなったオリガルヒたちは小企業を吸い込んでいる。土地、建築物、特別許可の取引が盛んになり、住宅価格が高騰した。官僚主義により経済の血液を蝕む寄生虫たちの私腹が肥やされ、国民の大多数が立ち上がれないでいる。自由競争はほぼ消滅し、労働生産性は大幅に低下した。銀行融資の金利は年20%を超え、ノンバンクの金利は60%を超え、個人経営は縮小している。商業銀行とその所有者が手掛ける事業だけが利益を上げ、その他の企業は倒産を余儀なくされている。税金は大幅に増加し、賃金を引き上げる機会は減少した。国民はもはや政府を信頼しなくなり、海外へ活路を見出すしか道がなくなってしまった。

このような状況にもかかわらず、これらの問題を解決し、国民の権利を保護し、民間企業の経営環境を支援し、経済を多様化させる措置を講じる代わりに、大統領の権限を強化し、任期を延長させるための一連の行動が行われている。国民全体の生活条件を改善するのではなく、一人の人物の権力を高めることが、なぜそれほど重要になったのだろうか?私たちは憲法を改正し、大統領の任期を6年1期としたのは、つい最近のことである。しかし、一部の集団は、憲法のこの規定を変更または無効にしょうとしている。国会の「改正」または憲法裁判所の「無効」とする権限を行使してこの規定を変更または無効にしようとしている。

一人の人物に国家権力が集中することは、公共の利益に反し、異なる意見を抑圧し、先制政治への道を開くという世界の歴史や最近の例を無視することで、誰が得するのだろうか?国を一人の人物が統治すると、国家権力が国内勢力や外国勢力に移り、紛争が生じ、国の独立が失われることになる。

モンゴルの将来の繁栄と独立の保障は、議会制政治であり、最終決定を下すのは一人の人物の裁量によるものではない。なぜ、この保障を強化するのではなく、弱体化させるのだろうか?ドイツのように議会から大統領を選ぶようにすることだってできるのに、だ。■

※1.5つのSH作戦とは、オユンエルデネ政権が2023年に始めた腐敗撲滅作戦である。モンゴル語でシュール(ほうき:汚職者をあぶり出す)、ショウォー(鳥:国外逃亡者を捕まえる)、シルジューレフ(奪還:奪われた資産を取り戻す)、シル(ガラス:透明性を高める)、シュゲルウレーフ(笛を吹く:内部告発を促す)がすべてSHで始まる単語なので“5つのSH”と呼ばれる。

※2.CHISHとはモンゴル語で「静かに!」という意味。5つのSH作戦のSHとCHISHをかけている。腐敗との戦いに対して「騒がず静かにしていろ」といい、腐敗撲滅作戦が形骸化してしまったということ。

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