ARE MONGOLIAN PEOPLE THE WEALTH OF THE COUNTRY?
民主的で市場経済の国では、人材資源を有効に活かし、国民の生活に幸せをもたらすことができる。独裁政権下では自由な経済活動もないので、それが限られている。ところで民主主義の政権があり、市場経済の国と言われるモンゴルで人材資源を成長させ、資産とすることができないのか?
経済では資源を生産要素という。資源は製品、サービスの生産に利用するため、経済を構築する際の構造ともいう。資源を物質と人と二つに分ける。物質資源には自然鉱物、土地、資本つまり人間が作った製品、それを購入するための資本が含まれる。人材資源には労働力、製品を作り出している人、生産におけるその他の要因を調整する者、起業家(Enterpreneurs)が含まれる。
しかし、私たちモンゴル人は物質資源、とりわけ鉱物資源を資産(Wealth)とするのに、人材資源を資産とは言わない。しかし、鉱物資源はその全部が資産とは限らない。しかし、人間は一人一人が資産である。
例えば、不可逆的な鉱物資源。鉱山の探査には膨大な資金が使われるが、鉱脈が発見されるのは稀である。発見されても地下深部から掘り出し、精鉱するのに探査時より多くの資金が必要となる。収益が総費用を超えるようであれば、それは健全な経済活動となり、資産となる。
しかし、人材資源は永続的な資産である。一人一人が幸せな暮らしをし、夢や希望を実現させるために平等に権利をもって生まれてきている。だが、必ずしも全ての人が幸せに暮らとはかぎらない。今日では、モンゴルの人口の約3分の1が貧困層である。理由はすべての国民の労働環境が整っているわけではなく、人材力として製品やサービスといった生産活動に参加することができていない。
人を資産とするための基礎的な条件
経済協力開発機構(OECD)の報告書によると、すべての子どもに教育、社会参加への能力を身に付けさせることができれば、低所得国は年間28%、高所得国は16%の割合で今後80年間、国内総生産を上げていくことが可能であるとされる。
質の高い人材を育成し、高い能力を持った労働力、つまり人的資産を開発するための基礎的な条件は、国民の教育である。モンゴル教育文化科学スポーツ省の報告によると、現在モンゴルの子ども全体の97%が初等教育を受けており、この数字は世界的に見ても高いものである。
しかし、授業の質において現状は異なる。2016-2017年度において798校に562,000人の児童生徒が就学しており、そのうち首都ウランバートルの全235校(内私立102校)に全児童生徒の41.4%が就学している。しかし2015-2016年度において、ウランバートル市内24校6,300人の児童生徒が三部制で授業を受けていた。その数が2016-2017年度では学校数34校、児童生徒数9,923人に増加した。ウランバートルの学校に児童生徒が入り切れない、地方の村の学校では児童生徒が見つからなくなっている。
三部制を廃止するためにモンゴル政府は32校(うち29校がウランバートルにある)の校舎を、指定管理契約で建てる費用を2018年度の予算に盛り込んだ。また、中国から援助を受け、年内にウランバートルに7校、2018年に地方アルハンガイ県に幼稚園1園、学校14校を建設する予定のようだ。
私たちは教育分野への投資において国内総生産の5-6%、国家予算の5分の1を使っているが、これは十分な数字とは言えない。韓国では教育分野への投資は3.3%であったが、発展を始めた1960年では15%、1970年では17%を教育につぎ込んでいた。今日、韓国は経済発展を成し遂げ、発展が軌道にのった後は5.0%としているが、教育分野における資金総額は増え続けている。
質の高い教育制度の構築には、専門的に学び、高い能力を身に着けた教員という職に就く人々には情熱や希望があり、また社会に広く認められた教員なしでは考え難い。ところで、教員一人当たりが指導する児童生徒数は40-50人である。公立学校の教員の給与は低く、みんなローンを抱えているため、教員たちはしばしばストライキを起こす。
モンゴル人を「教育」している教員たちの生活水準が低いため、仕事の成果も良くないのは当然だ。その結果、教員に絶えず能力向上を図るように圧力がかかる。子どもに知識だけを教えるのではなく、初等教育の段階で人に育てる、基本的な生活習慣を身に付けさせる、協調性のある人間に育てる必要がある。
人を資産とする準条件
学校教育を礎に高等専門教育を受け、高い知識、能力を身に付けることができれば、それは人的資産となり、就業することができる。モンゴルでは専門学校、大学を通して人材を育成している。 これらの専門教育機関は質を改善させるとともに、「21世紀の能力」と言われる批判的思考(Critical Thinking)、問題解決(Problem Solving)、創造力・独創力(Creativity)、情報リテラシー(Digital Literacy)などの能力をすべての学生に身に付けさせる必要性に迫られている。
全ての人が新しい技術の活用、常に変化する環境に順応できるよう絶えず自己研鑽を重ね、生涯に渡り学びつづける時代がきている。私たちの日常に浸透する情報通信技術の革命は、発展途上国では経済、社会を更に発展させるための貴重な機会となる。モンゴル国は2030年までに「情報化された社会と能力の高いモンゴル人」を育成する目標を昨年打ち出した。
この目標では、例えば2030年には「国全体における労働需要に応じるため、高い専門能力をもつ人材を供給できること」、また「世界的にも認められた知識、能力を有する学生を養成している高等教育機関が構築されていること」とある。だが、これらの目標をどのように達成するのかその方法は未だ示されてない。
その方法は何なのか、私たちはまだ手探りの状態である。これについてはモンゴル政府、ビジネス業界、民間団体が具体的且つ統一した理解がない。各々が協議、議論することなく、互いを批判し、選挙のためだけのポピュリズムを広げている間に、この国は世界の発展から取り残されてしまっている。
スイスのローザンヌに拠点を置く国際経営開発研究所(IMD)が出す世界競争力2017年の報告書では、63ヵ国を経済、政治、ビジネス及びインフラ環境で順位付けしている。総合点でモンゴルはベネズエラに次いで最下位から2番目となっている。また高等教育、創造性、知識共有などでは63番つまり最下位となっている。インターネットの活用、電力安定性、国際特許数、通信の安全性、水資源、航空輸送の質、知的財産保護などで62番となっている。世界の中でモンゴルの順位がわかり、今後どうするか?
モンゴルで国際競争力がある分野として、鉱業、観光、情報通信技術、食肉、カシミアであるとハーバード大学教授のマイケル・ポーター(M.Porter)教授の2008年の研究調査がある。これらの分野をチリの経験に重ね合わせると、最初に政府が主導し、国内外の専門家と協力して利益が出るようにし、その後株式会社へと民営化する。ライバル会社が現れた時には資金援助をして経済を活性化させ、鉱業分野への依存度を小さくする。
モンゴルは国際競争力をつけるために自らの短所を分析し改善する。インフラを整備し、自由な競争ができる機会を民間企業に与え、産業のみならず情報化にも経済資源を注力する。
人々が新しい知識を得る能力を身につけさせ、革新性や創造性、情報通信技術、ソフト開発などの分野で世界のニーズに応えられる政策を施すことができる。いずれにしても私たちは人材を資産とする機会を失ってはいけない。
2017年10月11日
記事№400
日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia