不健全な保健医療制度

Jargal Defacto
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UNHEALTHY HEALTHCARE SYSTEM

モンゴルの社会は、保健医療分野における汚職の進行状況、現状やその根本的な理由について情報やデータに基づいて協議する必要性に直面している。このためデファクト研究所は2017年12月1日にテレビ討論を行った。この討論の冒頭で、2014年に民間非営利団体であるアジア財団(The Asia Foundation)が実施した保健医療制度における汚職実態調査の報告書を紹介した。

この調査では、ウランバートルの個人病院、総合病院、専門病院の3種18院において、これらの病院に1年以上働いている医師、看護師200人、短期間(2週間)医療サービスを受けた患者700人が対象となった。対象者の55%が何らかの形で医師、病院職員に贈答品などを渡したと回答し、そのうち23%が患者自身、32%がその家族が渡したという内容であった。

テレビ討論には保健省、労働・社会保障省の専門家が参加する予定であったが、テレビ討論直前にキャンセルとなった。これはモンゴル政府機関に働く専門家、管理職は公務員として国民に情報提供する義務があるにもかかわらず、その義務を果たしていない明らかな例といえる。そもそも内閣が半年で変わり各省の組織変更が行われるため、行政機関には仕事がわからない無能者、また管理職にも関わらず責任から逃げている者が増えている。

しかし、国際NGOのトランスペアレンシー・インターナショナル・モンゴル支部のバトバヤル理事、医学博士でもあるアマルサナー大統領顧問は時間どおりに来て討論に積極的に参加した。予定していた政府機関の代表者が不参加となったため、3人で討論というより協議となった。その協議内容は次の通りだ。

保健医療分野の資金調達

2016年の保健医療サービスを提供している全施設の資金構造を見てみると、健康保険基金から20%、国家予算から40%、残りの40%を個人が負担している。個人負担が大きいため、モンゴル国民が貧困に陥るリスクが高くなっていると世界保健機関(WHO)が懸念している。各国では、保健医療分野の資金調達には国内総生産の5〜10%を占めるのが普通である。モンゴルではそれが3〜4%である。保健医療費を増やす際、その成果を計り監査する仕組みをつくる。特に市民団体の関与を向上させなければならない。そうしなければ金だけが流れ、全ての国民が享受できる保健医療サービスを提供することはできない。

医薬品と医療体制の歪み  

ウランバートルでは薬局の数が増え、処方箋なしで薬が買えるようになっている。これが国民の薬物服用増加の原因となっている。

モンゴルは薬の不適切な服用率が高い国の一つとなっている。今年の10月に医薬品の国民負担引き下げのため国は263億トゥグルグを薬局へ交付した。この医薬品の個人負担引き下げに15%を社会保険基金が負担した。WHOの調査では、モンゴルは医薬品価格が最も高い10ヵ国の一つとなっている。

モンゴルで売られている医薬品・医療機器の3分の1が偽物である。WHOの調査によると、モンゴル国内で売られている医薬品の30%が劣悪な品質で、登録されていないものだ。

国に対して国民は就業先を通して健康保険料を支払っている。また保健医療サービスを受ける時に平均5万トゥグルグのサービス料を支払っている。さらに医師、看護師に贈答品を渡す必要がある。最も重要なことは医薬品の品質が悪く、価格が非常に高いため、国民が病気になった場合は経済的な危機に陥ることだ。

アジア財団の保健医療分野の汚職調査では、モンゴルにおいて医師、看護師、病院職員と関係する汚職が最も多い。その根本的な原因として保健医療施設で働く労働者の給与が低い、保健医療サービスを受けるための交通手段が整っていない、サービスの質が低いことが挙げられている。

一方、全ての人に保健医療サービスを届けるインフラが整備されている。前述3種の医療施設による医療サービスの整備、私立病院があるなどが比較的長所として説明されている。私立病院が増加したことが国の医療サービス負担を減らしている。しかし、私立病院のサービスに対して国の予算及び健康保険基金から交付している資金の運用について監査を改善させ、市民団体の関与を増やす必要がある。

また健康保険基金の運用を保健省が行っている。これは保健医療サービスを提供する機関自体が支払われるべき料金を運用しているため、市民団体による監視の必要性を作っている。

国民による監視 

モンゴル人が未だに良くできていない、自分たちの保健医療のために必ずすべきことが一つある。それは「国民による監視」である。国に支払っている保険料が実際に何にどのように使われているかを監視しなければ、その透明性を求めなければ、保健医療分野におけるどの問題も解決されない。

政府は健康保険料を支払っている全ての人にその保険料が何に使われているのか、ネットで簡単に見られるような仕組みを整備することが必要である。それが国民参加の監視体制を向上させる大事な一歩となる。

保健医療サービスの質を向上させるために、保健医療サービス及び健康保険分野において民間の参入を図ること。国から私立医療サービス施設に対して支払っている資金の流れを監視する市民団体の関与を促進し、マスコミが現状を自由に報道できるようにすることである。

2017年12月6日

 日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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