デファクトレビュー (2018.05.13)

Jargal Defacto
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DEFACTO REVIEW (2018.05.13)

住宅ソフトローンの交付が困難な状況に

2013年にモンゴル銀行は政府と合意し、3兆8000億トゥグルグを商業銀行に年利3〜4%で貸出し、商業銀行は国民に年利8%で住宅ローンの提供を始めた。返済された資金はモンゴル・モーゲージ・コーポレーション社が一括管理し、それを住宅ソフトローンの原資とする理論だった。モンゴル・モーゲージ・コーポレーション社は交付したローンを債券化し、その90%をモンゴル銀行が、10%を商業銀行が買った。もし住宅ソフトローンが一般市場におけるローンだったら、これらの債券を投資家が買ったはずだ。理由は住宅を担保にしたローンはどの国でも優良な債権であり、長期的に投資を行う投資家はこの種の債券を好む。しかし、モンゴル銀行と商業銀行以外に買い手がいないということは、市場金利より安すぎるローンだからだ。

国際通貨基金(IMF)は、住宅ソフトローンを国の財政において良質なローンだとみて、モンゴル銀行ではなく国家予算に移すように要求し、結果その通りとなった。住宅ソフトローンの現状について経済常任委員会のD.ダムバオチル委員長は、「過去4年間でモンゴル銀行は住宅ソフトローンによって3兆トゥグルグの累積赤字を計上した。2017年に4億トゥグルグの赤字幅を減らしている。モンゴル銀行も赤字に関して適切に対応している。住宅ソフトローンには3400億トゥグルグの融資をしているが、まだ資金が足りない状況だ。住宅ソフトローンの交付は困難な状況にある」と国会で述べた。モンゴル・モーゲージ・コーポレーション社の債券の金利は4.5%だが、モンゴル銀行の政策金利は10%だからその差額となる5.5%の金利でモンゴル銀行が赤字を受けているとD.ダムバオチル委員長が説明した。

現在、住宅ソフトローンを利用する人は93,099人。この人たちの年間返済額は約2000億トゥグルグである。モンゴルに約8万戸の住宅が建設中であり、3万戸が完成していると建設・都市計画大臣が述べた。しかし、完成している住宅は売れていなく、20万世帯が住宅ソフトローンを受ける為に待機させられている。3万戸の住宅が完成しているのに20万世帯が待機している理由は、住宅ソフトローンの頭金30%を支払える人がいないからだ。国民は住宅ソフトローンの返済は今の条件で続けるしかない。政府が交付している1200億トゥグルグは特別な目的をもったソフトローンであり、高齢者などに供給するローンの資金である。商業銀行を通じて行われる貸出を政府が続ける事は不可能である。これらの改善に向けて省内ではワーキングチームが結成されていると大臣が言っていた。これらの問題は政府が市場参入してもろくに成果が得られないことを現している。第1に資金不足、第2に新しく融資を行う資本がない。投入した資金に見合った成果が得られないということを見せている。

モンゴル銀行と政府は、住宅ソフトローンの資金を月に2回定期的に供給している。5月4日にモンゴル銀行から157億トゥグルグ、政府から294億トゥグルグの融資が行われた。この融資で新たに657人が住宅ソフトローンを利用している。住宅ソフトローンが始まってから2013年に住宅価格が上昇した。2009年に1㎡あたり99万トゥグルグだった住宅価格は、2010年に100万トゥグルグ、2011年に130万トゥグルグ、2012年に160万トゥグルグ、2013年に200万トゥグルグまで上昇した。モンゴル銀行は2013年を住宅価格のベースにし、これ以上価格は上がらないと言っている。2013年は住宅価格が上昇した時期なのでその時の価格をベースにすること自体が間違っている。2013年に1㎡あたり200万トゥグルグだった住宅価格は、翌2014年の7月に20%も上昇した。その後下落に転じたが、今は住宅ソフトローンの頭金の30%を支払える人がいないので、住宅ソフトローンの条件を変えなければならない。

政党の資金調達は違法である

モンゴル政党法は2005年以降改正されていない。

国会で政党法と選挙法の改正のためにワーキングチームが結成され、法律改革の取り組みが始まった。法律改革に関して情報提供の支援、政治資金調達の透明性、監視の改善のためにオープン・ソサエティ財団と民主主義・選挙支援国際研究所が協力し、「政治資金調達、倫理、責任」プロジェクトが欧州連合の支援のもと始まった。

政党の資金調達が不透明である事を全国民が知っている。不透明な資金調達により誰が一番被害を受けるかと言えばもちろん国民の私たちだ。政党の資金調達を秘密にすることが賄賂の源である。政党による損害やマフィア活動の経費を私たちが支払っている。国民の私たちは給与の40%を国に納税しているが、その恩恵を受けていない。

代議制民主主義は政党なくして発展は不可能である。そのため政党の資金調達を適切に行わせるしかない。ドイツでは政党は法律に従って資金調達を行い、何らかの不正が発生した場合は、以後資金を出さないという条件で国の予算から資金を交付している。また、政党に対して獲得した議席数に応じて資金が交付されるが、議席がない政党にも交付される。それは今の私たちのやり方より損失が少ない。だからこのような他国のやり方を取り入れるべきだと思う。

いかなる組織でも、資金の出どころを知っているのがその組織の長だけというのはマフィアと同じである。そしてその長の権限は無限になってしまう。モンゴルの政党はまさにこの状態になり、党員も政党の資金調達について何も知らない。残念ながら私たちはこのような政党に権利を与えている。結果としてこの国では、民主主義の基本原則となる立法・行政・司法機関による相互監視の仕組みが崩れた。

モンゴルの政党法は2005年以降改正されていない。モンゴルの政党法をみると政党法違反に関して党員の場合は4万~6万トゥグルグ、政党の場合は20万~25万トゥグルグの罰金を科すとある。「実際に政党に対して20万トゥグルグの罰金を科したところでどうなりますか?過去に罰金を科した例は1つもありません。(政党資金調達の研究者B.エルデネダライの言葉)」現行法では監査庁、選挙委員会、国税庁などの機関が政党の資金調達を監視する事になっている。しかし、どのように監視するかについて法律では詳細に示されていない。だから単に監視という名前に過ぎない。

2019年の国家予算

予算収入の73%を経常支出、27%を投資として使うことが予想される。

5月11日の国会で2019年度の国家予算、2020~2021年の予算法案について協議し、議員の大半が賛成した。

2019年の予算収入は約10兆9000億トゥグルグ増え、ここ数年兆単位で推移していた政府借入金は3,000億トゥグルグ減って8,600億トゥグルグになる。政府の総負債の国内総生産に占める割合は約10%減少し、国内総生産の55%となる。政府の国内総負債は中期的に下がり、投資及び純貸出は7600億トゥグルグ増える。財政赤字は3140億トゥグルグ減り、財政赤字を補うために国内債券を発行しないなど、肯定的な状況ができると予想されている。

2019年の予算に関する報告、2020~2021年の予算案では、財政収支の国内総生産に占める割合を2019年に‐6.1%、2020年に‐4.3%、2021年に‐2.5%となるとみている。予算の73%を経常支出、27%を投資として使う。そして来年は為替レートを1ドル2280トゥグルグで予想している。

Ch.フレルバータル財務大臣が、好き勝手するために補正予算を組むやり方は認めないと言っていたとおり、補正予算は組まれない。5月中旬に来年の予算案の協議を始めていることは、制度が一歩前進していると言える。

エルデネト鉱業はモンゴル経済の中核企業である。しかし、ここ2年間は大きな論争の的となっている。モンゴルでは国有財産というものはなくなり、それらは政党の財産というものになっている。財務大臣によればエルデネト鉱業を100%国営企業とし、2019年に1750億トゥグルグの税収を予想している。

釈放と逮捕を繰り返す裁判所

賄賂対策庁が元首相S.バヤル、Ch.サイハンビレグをオユ・トルゴイ鉱山の契約問題で4月10日に逮捕した。5月10日朝、チンゲルテイ区裁判所で第一審刑事裁判が開廷し、元首相S.バヤル、Ch.サイハンビレグ、国税庁管理協力局の元局長B.バダラルの3名を引き続き30日間拘束するという検察官の提案を審議した。裁判所はS.バヤル、Ch.サイハンビレグ、B.バダラルを保釈し、出国禁止の判決を下した。

しかし、判決が下されたその日の夕方に、判決を不服として検察庁から裁判所長官宛に訴状が提出された。訴状を審査した結果、S.バヤル、Ch.サイハンビレグおよびB.バダラルの3人に対する第一審の判決を無効にし、検察官の提案を受け入れ30日間拘束することとなった。

モンゴルの首相経験者2人に対する判決が、政治的な決定であることは国会が証明していた。このオユ・トルゴイ契約事件に関して政府は迅速に対応しなければ、国民の反感だけでなく諸外国、外国投資家にも不信感を与えることとなる。元首相Ch.サイハンビレグが自身の手紙でこの件について“ビシンスキーのやり方”と書いた。ビシンスキーは1930〜36年にソ連の検事総長だった人物である。ビシンスキーが言った有名な言葉がある。「自分の無罪を証明することは監禁された本人の仕事」、「すべての国の敵と行われている取り組みは法の下で行われなければならない」と言った言葉がある。私たちは政治による囚人ができるのではないかが心配だ。その人が有罪であることを立証できるまで、推定無罪だということを私たちは民主主義の力で得ることができたのだから。

オユ・トルゴイ鉱山の採掘投資契約書の履行を監視するために結成されたワーキングチームのリーダー、D.ダムバ‐オチルを解任し、代わりに国会議員D.テルビシダグワを任命した。また、ワーキングチームのメンバーに国会議員T.アヨールサイハン、J.バトザンダン、Kh.ボロルチョローン、D.ガンボルド、M.オヨーンチメグを追加した。また国会議長の2018年3月23日付けの指令では、ワーキングチームのメンバーとして国会議員N.アマルザヤ―、O.バーサンフー、B.バトエルデネ、B.ジャフラン、Z.ナラントヤー、Ya.ソドバータル、A.オンダラーの名が連なっている。

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