PETROL REJECTED EVEN BY CARS
知人はレクサス570をヨーロッパから新車で購入した。ガソリンA-92を給油すると黄色のエンジン警告灯が点灯した。自動車修理工場にもっていき点検を受け、燃料噴射装置を洗浄すると警告灯のランプは消えるが、またすぐに点灯する。ガソリンA-92ではなく、ユーロ規格対応ガソリンを給油するとこの問題は解決された。エンジンの出力も良く、力強く走行しスピードも安定、燃費も良くなった。しかし、そのユーロ規格対応ガソリンを販売する給油所はウランバートルには数えるほどしかない。郊外に行けばガソリンA‐95さえ見つからないと嘆いていた。
理由を探れば、モンゴル政府は高品質なガソリンを輸入する方針をとっていないことが分かる。国の排ガス規制は1996年のユーロ2から強化されていない。2017年に全国で販売されたガソリンのわずか10%がユーロ5規格に対応したものである。残りの90%が自然環境や人体に害を及ぼす、現在の国際標準より22年も遅れた低品質なガソリンということである。ガソリン輸入業者がもっと早く手を打っていれば、大気汚染や健康被害を防げただろう。
私たちはガソリンをオクタン価だけで区別している。しかし、先進国では30年も前から燃焼後にどの様な有害物質が排出されているかを測定している。隣国のロシアと中国は、輸入車にユーロ5(CHINA5)規格に対応するガソリン・ディーゼル燃料を供給するようになった。
モンゴルと世界
ガソリン車の排気ガスに含まれる有害物質の許容範囲と測定方法を定めるMNS5013:2009(ディーゼル車の場合はMNS5014:2009)という国家規格がある。しかしこの規格には人体に最も有害とされる一酸化窒素、硫黄ガスの測定について何も定義されていない。
“1ヵ月前の道路輸送開発省の発表によれば、モンゴルでは913,723台の自動車が登録されている。そのうちの90%にあたる826,970台が乗用車で、その59%にあたる487,841台がウランバートルで登録されている。また全体の82%となる750,292台が製造から10年以上が経ち、58%が右ハンドル車である。”
ウランバートルの大気汚染の10%は自動車の排気ガスによるものである。自動車からは約260種類の有害な化学物質(Emission)が排出される。その中で人間の身体に悪影響を及ぼす一酸化窒素、硫黄ガス、一酸化炭素、炭化水素、燃焼による煤、重金属(Pb、Ca、Hgなど)、ダイオキシン、アルデヒド、粒子状物質などを先進国では特に規制してきた。
諸外国では1990年以降、新車のエンジンから排出されるこれらの有害物質を規制してきた。その条件をより厳しくしたものをユーロ規格という。自動車から排出される有害物質を人間が吸い込むと呼吸器系の炎症や病気、アレルギー、心臓血管病、腎臓・肝臓病、神経系損傷、癌などの発生要因となり、生殖器官にも悪影響を及ぼす。さらにストレスの原因とされ人々の健康に大きな害をもたらすことから、ヨーロッパ諸国ではユーロ規格が堅守されている。
イギリスのリーズ大学の調査によると、ユーロ規格の導入によりEUでは年間8万人の命が救われている。しかし、モンゴルではユーロ規格に適合した燃料が使用されていない。政府も規制しないし重視もしないので、多くの人の命が、特に子どもの命が危険にさらされている。
モンゴルの大気汚染による国民の健康被害において、10年以上使用されている自動車の影響は大きい。モンゴルでは5台に4台が製造から10年以上の自動車だ。自動車の寿命は5年ごと3つの段階に分けられる。第1段階となる最初の5年間は、自動車はメーカー保証が付いており全ての条件を満たしている。さらに排気ガスの排出量が許容範囲内で故障が少ない。第2段階の10年では殆どの自動車が2人目のオーナーとなっている。排気ガスの排出量が多くなり、故障することもしばしば見られる。多くの国ではこのような自動車を輸出する方法を探り、自動車税、保険料を高く設定し始める。そして第3段階の15年では故障が多くなり、排気ガスの排出量がさらに増加、部品の入手が困難になる。このような自動車を国だけではなくオーナーも手放したがる。だから廃車にして解体するか、途上国に安価で売却する。
パラシュートを開く時
モンゴルは第3段階の自動車で溢れている。例えると、「飛行機から飛び降りた」ので今はタイミングよくパラシュートを開き無事に着地する段階である。では具体的に何をすれば良いのか?
2020年までに製造から7年以上経つ自動車の輸入を禁止する。製造から5年以上の自動車への税金を引き上げ、右ハンドル車に特別税を課すことである。自然環境や健康への被害を減らすために現行の法律を改正し、排ガス規制を導入すべきである。さらに交通監視の強化と車検制度の改善、製造から長い年月が経つ自動車の使用を禁止するか、高い税を課すべきである。
専門家によれば、ロシアから輸入している軽油はユーロ5対応のエンジン車には使用できない。燃料を保管している設備は品質を保証する条件を満たしていない。モンゴルへのユーロ5、6規格の全面的な導入に際しては、燃料輸入業者が積極的に改善に取り組む必要がある。
“諸外国の事例をみれば、自動車メーカーは排気ガスの排出量がより少ない自動車を製造するようになっている。これはモンゴルで売られている燃料に適合するエンジンを載せた車の生産は減少しているということだ。今日のモンゴルは品質的に不適切な燃料を使用している数少ない国の1つとなっている。”
ヨーロッパにおけるディーゼル車の生産台数減少は、モンゴルの建設・鉱業分野で使われる重機や部品、労働生産効率性に間違いなく影響するだろう。自動車メーカーはユーロ5規格のディーゼル車を製造しているが、モンゴルで販売されている燃料の品質がエンジンに悪影響を与え、消費者は損害を被っている。
ノルウェーは2025年から、フランス、イギリスは2040年からガソリン車の販売を禁止する決定をした。ボルボは2019年、ジャガーとランドローバーは2020年から電気自動車を製造すると発表した。
最近、モンゴルのガソリン輸入業者がロシアから輸入しているガソリンの品質について改善を求めるようになった。また、ガソリン価格の現実的な設定や市場調整が必要となっている。例えば、ドイツでは高品質な軽油の価格は1ℓ当たり1ユーロ、モンゴルトゥグルグに換算すれば2500トゥグルグになる。しかし、モンゴルで販売されている軽油は2000トゥグルグである。
モンゴルは日本製のハイブリッド車の部品を環境への影響を考えずに処分している。これについて誰も声を上げない。これは有害物質とその影響について人々があまりにも無知なためだ。使い切ったバッテリーや廃油の処分方法が分からないので直接地面に埋めている。この様な方法は続けられない。
新車の税金を引き下げ、中古車の税金を引き上げ、消費者が新車を購入するように促すべきである。
これらの対策を実行に移すと人々の反発を招くだろう。しかし実行しなければより大きな社会的、経済的損失を被る。
“国民の健康より価値あるものが他にあるだろうか…”
2018年6月20日
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