基金と腐敗の構造

Jargal Defacto
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FUNDS AND THEIR MILKERS

マスコミは国会議員、閣僚、政府高官が中小企業開発基金から彼らが所有する会社に利率3%という低金利の融資を受けていたと報道した。これについて証拠書類も公表された。

中小企業開発基金は食糧・農牧業・軽工業省が担当する。この基金からB.バトゾリグ食糧・農牧業・軽工業大臣の妻であるL.オトゴンジャルガル氏が所有するTeever Achlal社が14億トゥグルグの融資を受けていた。さらにYa.ソドバートル道路・運輸開発大臣のEpato Anarvaan社は12億トゥグルグ、Kh.ボロルチョローン議員のDornod Guril社は9億5千万トゥグルグ、G.ソルタン議員のMongol Shaazan社は9億5千万トゥグルグの融資を受けていた。日本の国会にあたる国家大会議76議席のうち人民党は65議席で、その過半数が中小企業開発基金から融資を受けていると民主党は主張している。

中小企業開発基金は2000年に設立された。基金の財源は国が確保し、中小企業経営者に対して条件付きで低金利の融資を行う。中小企業の経営安定化を支援し、雇用増加に繋げることが目的だ。この基金からの融資は主に、中小企業の業務のマッチング活動、事業の宣伝広告、展示会などへの参加などに使途が特定されている。融資期間は最高5年、年利3%、返済開始は融資開始から12ヵ月後である。

中小企業開発基金には、国家予算から2009年に300億トゥグルグ、2010年に304億トゥグルグ、2011年に2900億トゥグルグ、2016年に567億トゥグルグ、2017年に506億トゥグルグ、2018年に650億トゥグルグが積み立てられた。更に2013年、2014年にはモンゴル開発銀行発行の債券からそれぞれ489億トゥグルグ、999億トゥグルグが積み立てられた。

中小企業開発基金は融資の利子で資金が増加するはずだった。しかし、この基金の詳細な会計報告書はどこにもなく、密かに行われてきた不正融資がこのように暴かれ始めた。

本来ならばモンゴル国家監査庁が基金の会計報告書を監査し公表するべきものだ。しかし、国家監査庁長官D.フレルバートル氏が所有するTsen Style社はこの基金から融資を受けていた。また国家の安全を担うべき諜報庁の元長官B.ホルツ氏が所有するGrand Step社もこの基金から融資を受けていた。

政府から億万長者が生まれるネットワーク

マスコミは以前にも中小企業開発基金の資金を政治家たちが横奪していることを報道した。その時は世間を騒がせもしたが、間もなく真相は闇に消えた。政府から億万長者を誕生させているのはこの基金だけではない。価格維持プログラムや農業経営支援基金など、十数の基金が存在する。また、政府の国債発行も政治家が億万長者となるきっかけだった。

農業経営支援基金から2017年の冬を越すために51,000トンの飼料が輸入された。これを緊急性が高い県へ分配する目的で400億トゥグルグの融資が実施されている。この融資も全て政治家の企業が対象となっている話が浮上してきている。この融資を誰が受けたか、その成果について報告書は未だに出されておらず、もちろん国家監査庁の承認も受けていない。

これらの基金を管理監督する政府高官の殆どがモンゴルでは大富豪になっている。これは彼らの毎年の所得申告を調べれば一目瞭然だ。それぞれの基金から資金を横奪する政府高官の富が増加し、国民がさらに貧困になる根本的な原因はこのような汚職(腐敗)である。

過去30年間、人民党と民主党は交互に、時には協力して政権を握ってきて、どちらの党も資金調達が不透明であることが政治の腐敗を生んできた。政府のポストを求める党員にその役職を金で売り600億トゥグルグの資金を調達するとの人民党執行部の会話を録画したデータが流出したのがいい例だ。しかし、賄賂対策庁はこの会話のデータが捏造されたものだと言い捜査もしないありさまだ。政治家の汚職を捜査すべき賄賂対策庁は、今では政治家の犬になりさがったことを示している。

政府の役職を与える、在外公館への赴任、公共事業の入札での便宜、好条件での融資など、これらは政党への寄付金の見返りである。こういった汚職が慣例化し、モンゴル政府の名誉を落とし、国民の怒りに火をつける。様々な基金を設立し、国民の税金が政治家とその身近にいる者、政治家に賄賂を渡す少数の有力支持者によって搾取されている。これは民主主義国家の名を汚すだけでなく、国の経済的発展をも妨げている。

商業銀行の貸出金利が22%という状況の中で、大臣や国会議員が所有する会社だけが利率3〜5%、5分の1以下か無利息の融資を受けている。これでは民間企業は競争できなくなり事業を縮小、人材を削減せざるを得ない。その結果、失業者は韓国へ出稼ぎに行き、国内の労働力低下に繋がっている。

政府高官は自分の利益しか考えなくなった。地方開発が遅れ、豊かさを求め人口の過半数が首都に集中し、それが深刻な渋滞や大気汚染の原因となっている。

銀行の金利を引き上げている根本的な原因は腐敗

国家予算から様々な基金やプログラムという名目で数億トゥグルグが権力者たちの会社に流れるようになっている。これは銀行間の預金誘致合戦を引き起こしている。特に小規模な銀行が大口預金者に高い金利を約束するようになったことにより、大きな銀行も預金金利を引き上げ始めた。

預金金利の引き上げは貸出金利も引き上げるので、モンゴルの民間企業は高金利の融資を受ける他に選択肢がない。また、銀行も融資に際して連帯保証人を要求する。だから多くの中小企業はノンバンクを頼る。ノンバンクは銀行の金利より50%も高い金利で融資する

悪質なのは、基金から数十億トゥグルグの融資を受けた政治家の企業が、その資金を銀行やノンバンクを通じて利ざやを稼いでいることだ。実際、銀行やノンバンクを所有している国会議員は多い。

どんな社会にも腐敗は存在する。モンゴルは議院内閣制だからこういった汚職があり、またそれが発覚した。政府主導の基金は1日で作られたものではない。これは長い間、意図的かつ計画的に練られた陰謀である。この陰謀を絶つためには、不正を行う者たちを役職から解任し、即刻融資を返済してもらわなければならない。また、融資した資金を追跡し銀行或いはノンバンクを通じて高利で利ざやを稼いでいればその収入を差し押さえ、正義をなさなければならない。

首相がこのような正義を行わなければ、モンゴル政府は危機に陥る可能性が高くなる。18ヵ月後、モンゴル国民は政権を変えるかどうかの大きな選択を行う。その前に国会を解散することになれば、国民は18ヶ月も待つ必要がなくなる。

2018年10月31日

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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