RARA AVIS (ラテン語:稀な鳥)

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RARA AVIS

1886年にロシアの劇作家アントン・チェーホフはRARA AVIS(邦題は「かもめ」)という戯曲を書いた。この戯曲では、刑事事件について長編小説を書く作家がある警察署長に泥棒や詐欺師などあらゆる罪を犯した犯罪者を紹介してほしいと頼む。警察署長はこの要望に直ぐに応じ、犯罪者たちを紹介した。また作家は犯罪者とは逆に正義を行う者を紹介してほしいと頼むのだが、警察署長は深く考え込み頭をかく。

モンゴルの広大な大地にいる正義を行うべき政治家、政府高官は「RARA AVIS」のようになっていることをこの数日間の出来事が証明している。政治家や政府高官が中小企業開発基金、国債、アジア・欧州首脳会議(ASEM)の資金を横領してきた証拠書類がマスコミに報じられ、ソーシャルメディアは国民の怒りで沸騰している。

人民党・民主党の間で迷い込んだ経済

民主党が政権を握っていた2012〜2016年、モンゴル帝国時代の王たちの名を冠した30億ドルの債券を発行し、政府高官らは何の計画もないプロジェクトをでっち上げその資金を自分たちの懐に入れてきた。食肉と小麦を確保し価格を維持するプログラム、建築分野を支援する住宅ソフトローン、ガソリンの小売価格維持、輸入製品のコスト削減、石炭輸出の安全と確保、厳しい冬の間のエネルギー価格の維持、大気汚染削減など、聞こえの良いプロジェクトはそれを管理する政府高官らを肥えさせてきた。これらのプロジェクトの資金調達は政府ではなく中央銀行に任され、中央銀行は総額5兆4千億トゥグルグをばらまき、そのツケを納税者である国民が払わされてきた。そして物価は上昇し、トゥグルグのレートは下落した。

2016年に人民党が政権を奪還して以来、今日までのこの2年間、政府高官らと人民党の政治家が所有する企業は中小企業開発基金から1150億トゥグルグを横領したことが先週明るみに出た。これが本当の中小企業経営者たちの怒りを買った。この基金のからくりは人民党内の派閥抗争によって暴かれた。現在、国民はその他の28の基金についても捜査を要求している。

政権を握ってきた人民党と民主党の国会議員、官僚の中から公共の財産を横領した者たちではなく、横領していない者の一覧を作る方が時間と紙を節約するかもしれない。

正義感のある政府高官を見つけることは大変だ。その理由の1つは正義感のある者がいないのではなく、彼らを信じることが難しくなったからだ。政府高官による財産の横領が当たり前になり、正義を行う者は珍しくなっている。行政システムの上位にいる政府高官が国家予算、債券、入札、プロジェクト、購買などを牛耳り公共の財産を横領するようになって20年が経っている。その間、政府の下級職員は当たり前のように賄賂を要求するようになった。

政府がこのような状態になっているから正義は忘れ去られ、ビジネス環境が縮小して雇用機会は失われる。失業者は仕事を求め海外へ渡る。その結果、国内では失業率と貧困が深刻さを増し、国民の将来への期待も失われている。

今回の出来事はモンゴル国民とモンゴル政府にとって「歴史的な試練」となっている。しかし見方を変えれば、国を変えるための「歴史的な機会」ともいえる。

歴史的な機会

政府高官による公共財産の横領がこのように明るみに出たということは、モンゴル国民が政治家に対して行政機関の強化を図る機会を与えていることでもある。私たちは、まず次のことに取り組まなければならない。

  • 憲法改正を行い、民主主義国家としての公共ガバナンスの三本柱である立法、行政、司法の三権分立を確立し、その役割と責任を改め、この三権の独立とバランス、相互監視の体制を構築すること。
  • 公共ガバナンスの透明性と説明責任を果たすこと。
  • 法制度の強化として全ての人が法の下に平等であるという原則を実行すること。
  • 国民の所得増加のために経済の自由化を図り、市民社会の強化、国民参加の向上、国有企業の民営化を実施すること。

歴史的な試練

現在、モンゴルの政党、とりわけ人民党と民主党の党員は歴史的な試練に直面している。政党は次のような取り組みをしなければならない。

  • 政党は公共の財産を横領した党員に、その役職に関係なく責任を追及すること。
  • 政党の責任、党員参加の仕組み、資金調達の方法を改め透明性を図り、党内の民主化を推し進めること。
  • 組織としての政党の強化、つまり一人の人間に権力が集中しないようにすること。

もし、政党が自ら改革を断行しなければ、政治の舞台から姿を消すこととなる。

2018年11月07日 

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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