開発銀行のドラマ

Jargal Defacto
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開発銀行が抱える不良債権に関し、「債務は債務者自身が返済すべし ~団結しよう、要求しよう~」というスローガンの下で、一部の国会議員や大臣、一般市民やほぼすべての報道機関が参加しての白熱した議論が、トゥーシンホテルで開催された。各テレビ局やSNSで全国にライブ配信されたこの議論がきっかけとなり、国民の間で不満と抗議の波を引き起こしている。

開発銀行の融資の質の低下についてはメディアでも取り上げられ、私も一年半前にこの銀行が技術的に「破綻」していることを述べた。では、なぜ、今この開発銀行に注目が集まっているのか?どのような解決策があるのかについて、国民は正しい情報と理解を得る必要がある。

なぜならば、政権を握っている人民党の指導部は、この開発銀行の債務問題を単独で解決できない状況に陥っているため、国民の支持を受ける必要があるからだ。

開発銀行の融資の半数以上が不良債権となるまで放置されてきたという事実は、モンゴル政府が長年にわたって腐敗に縛られ、この国の司法制度が汚職者やオリガルヒのために機能するようになったことを明確に示している。

開発銀行の不良債権をあらゆる方法で回収するため、権力、資金、組織、司法機関に守られている政治および経済団体と戦わなければならない。

開発銀行は、来年約10億ドルの債権を償還できなければ、利回りを保証したにもかかわらず、政府はそれを履行することができないということとなる。政府はパンデミックとの闘いや経済回復のため、1年間の予算相当の資金をすでに使い果たしているので、償還に回す資金がないのが現状だ。

また、モンゴルは腐敗を撲滅しなければ、開発銀行だけでなく、国自体が財政破綻する危機に瀕していることを政府与党はようやく理解したようだ。ここで腐敗を止めなければ、人民党は2024年の選挙で敗北する可能性が高い。

開発銀行のドラマを要約すると次のようなこととなる。

オープニング

モンゴル開発銀行は、他国同様に長期的な開発プロジェクト、特にインフラストラクチャーと輸出促進プログラムに資金を提供するため、2011年に設立された。そこへ経験豊富な韓国の開発銀行の経営陣を招聘した。海外投資家向けに債券を発行し、総額6億ドルを調達した。2012年8月10日にN.アルタンホヤグ政権が発足した。経済省が設立され、B.バトバヤルが経済大臣に就いた。まもなくして政府は、海外に向けて債券(チンギス)を発行し、15億ドルを調達した。突如として多額の資金を得た政府は、それを自由勝手に使おうとしたが、そこに規則や規制を口にする韓国経営陣が待ったをかけた。それが邪魔だったため、政府は彼らとの契約を打ち切った。

こうして、モンゴルの対外債務の歴史が始まった。過去10年間、モンゴル政府はあらゆる債務を返済していない。ただ、新たな債務で古い債務を返済してきただけだった。首相は、次の世代が返済すると公然と言って憚らない。それ以来、歴代政府は開発銀行のトップに自分たちの意のままに動く人物を任命し、自分たちが得するために数十億トゥグルグもの融資を実行させてきた。そのような中、国の財産は特定の誰かのための財産ではないということを、政権を握っている人たちが示し始めている。

展開

この10年で、6つの内閣と6人のトップが入れ替わってきた開発銀行の融資は、その半数以上が不良債権となった。政権が不安定で、政治家に多額の融資を行い、リスクファンドも設立してこなかった。融資を回収できなくなっても驚くことではない。

現在、開発銀行から66法人が融資を受けており、そのうちの14法人が正常先であり、10法人が不良債権になる可能性がある要注意先、42法人が不良債権となっている。つまり、総額2兆6千億トゥグルグの融資のうち、1兆8千億トゥグルグが不良債権に分類されているということだ。不良債権となった42法人のうち、30法人が裁判で係争中、うち22法人が第一審の裁判中、2法人が上訴段階であり、6法人に判決が下されている。こういった裁判が繰り返され、判決が出るまで5年がかかる。

2017年2月10日、開発銀行法が改正された。それまで開発銀行がどこへ融資するかに国会の承認が必要だった。しかし、法改正により、融資先を開発銀行が独自に決定できるようになった。融資先は開発銀行の取締役会が承認する。このように国の財産を横領する集団の陰謀行為は合法となった。

開発銀行の管理職に就く者たちは、融資を本来の目的以外で流用、銀行やノンバンクを通じたマネーロンダリング、担保の無効などの犯罪行為を政治的影響力の下で繰り返してきた。しかしながら、これを調査し、正し、説明責任を追及するシステムはない。

開発銀行から低金利の融資を受け、さまざまな理由で裁判沙汰となると、金利は停止する。捜査には長い時間がかかり、その間に融資で得た資金を高金利の預金に回すことが常態化している。最近まで、モンゴルの4大商業銀行でさえ、開発銀行から低金利融資を受け、それを高い金利で融資していた。開発銀行の管理職は、市場価格より何倍も高い270億トゥグルグでTDB銀行の新しいビルの2階のフロアを買い取った。TDBの新しいビルは、250億トゥグルグで建てられたという。

こういった行為を政府が知らなかったはずはない。政権を握ってきた2大政党の指導者、権力者がお互いを脅迫し合い、また共謀してきたのだ。開発銀行のドラマのキャストとして、歴代の国会と内閣の多くの議員が出演してきた。

それが最近になり、人民党の指導者たちは、開発銀行の不正行為に関与した党員に説明責任を追及し、党員資格を停止し、裁判で有罪が確定した場合は党員資格を剥奪すると発表した。発表するのは良いが、それを実行するかは別問題である。金とメディアを握っている2大政党のオリガルヒたちを、本当に打ち負かすことができるかどうかは疑わしい。いずれにせよモンゴル政府は、開発銀行が実際には国の開発の足かせとなっていることを発表したということだ。

クロージング

開発銀行のような状態にある銀行は、破綻もしくは組織改革が行われる。首相は、開発銀行を破綻させず、輸出増加や輸入代替プロジェクトを支援するエクシムバンクにすると言った。要するに組織改革が行われ、活動を復活させるということだ。これを行うには3つの方法がある。

  • 不良債権を分離して資産運用会社(ACM or asset management corporation)を設立する。
  • 不良債権担保を即時売却し、融資を回収する。
  • 自己資本比率を大幅に増やし、不良債権を縮小する。

1)と3)を行う場合、開発銀行のオーナーとなるモンゴル政府にそのような資金を拠出できる余裕はない。モンゴルの商業銀行は自己資本が不足している。モンゴル銀行(中央銀行)は、財政活動が制限されている。残された道は、不良債権担保の即時売却である。

しかし、モンゴルの司法制度は非常に脆弱で、不動産の解放と売却をめぐる論争ができる専門家がほとんどいない。加えて政治家と深く繋がっている。モンゴルの国会議員、政治権力者、裁判官、警察官、司法機関の職員の収入は、国民の平均収入に比べてとても高いことが資産申告書を見ればわかる。

開発銀行を復活させ、名前を変えてもこの破綻の根本的な原因を解決しない限り、同じことが再び起こるだろう。根本にある原因は腐敗である。開発銀行は1つの例に過ぎない。

モンゴルがこのような状況に陥った主な原因は、「国有」という名のついた誰も責任を追わない組織にある。すべての国有企業を株式会社にし、責任の所在を明確にしない限り、腐敗を断絶することは不可能である。政党が民主的な選挙によって勝ち取るのは、国有財産を管理運用する権限である。しかし、この政党が組織として成熟できていないため、失われる国有財産に対して誰も責任を負わないのだ。

また、政党は価格維持プログラムなど、おおよそ実現不可能なプロジェクトを打ち出し、公共の財産を横領してきた。国会議員となり、議員特権を得て、法律の外に保護される。また、犯罪は時効を迎え、訴訟が取り下げられるという慣例が定着している。好き放題マネーロンダリングをしても、納税による恩赦という名目で無罪となってしまう。

これらすべてを変え、改善してこそ、モンゴルは腐敗社会から脱出できる。これには、国民の強力な政治への参加と要求がとても重要である。そもそも、私たちは、民主主義が自由と責任の結合であるということを忘れている。政府を腐敗から守るために、国民は自分たちの責任を認識し、積極的に戦うことが求められる。それができる国だけが繁栄する。

私たちは、開発銀行や中小企業開発基金の資産を、数人の詐欺師が貪ることを許してもいいのか。

2022年2月21日■

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia

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