発展に導くフトゥル(KHUTUL)

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私は2022年8月16日に開催された「フトゥル経済フォーラム」に参加した。国有企業セメント・ショホイ株式会社とセレンゲ県サイハン郡政府で共催となる初めてのこのフォーラムには、ゲストと代表者を合わせて200人が参加し、フトゥル市の発展の上での課題を探るべく、短期的および長期的計画についてプレゼンテーションが行われ、議論が交わされた。

フトゥル市は、工業団地を礎にした集落として始まった。1983年以降、セメントや石灰の工場を囲むようにして拡大してきたサイハン郡フルトゥ市は、1994年に国会決議第58号により市に昇格した。現在、人口は10,000人に達しており、そのうちの820人がセメント・ショホイで働いている。この工場の成長は、サイハン郡や周辺地域の発展に直結している。

フトゥル市が発展するまでの道のりは平坦ではなかった。もちろん、これからも多くの課題に直面するだろうが、将来を見据え、公正な制度を構築し、共に勇気を持って努力して取り組めば、人々が豊かな暮らしができる美しい都市となるだろう。

これまでの道のり

フトゥル市にあるこのセメント企業は、1983年に設立された。設立当初は、ソ連の湿式工法や技術が導入され、年間50万トンのセメントを生産する能力を持っていた。しかし実際には、この生産能力がフルに稼働されたことはなく、生産量が年間36万トンを超えることはなかった。2001年、政府はこの企業を株式会社にした。

2010年、モンゴル国会は国有企業の民営化と再編成の主な方針を承認した。したがって、政府(当時のバトボルド政権)は、フトゥル市の国有企業セメント・ショホイ株式会社のセメントの生産技術を乾式法に転換することを条件に、国内外から投資を受け入れる決定を出した。その後、2011年1月17日に国有財産委員会(D.スガル委員長)は、国有企業セメント・ショホイ株式会社とベイズメント社の間での投資契約の締結を承認した。

2012年10月19日、ベイズメント社は、開発銀行から返済期限5年、年利8.1%で6,130万ドルの融資を受けた。この融資により、クリンカーを製造するラインを乾式法に転換し、セメント生産能力を年間100万トンに引き上げ、露天掘り鉱山と道路輸送の複合施設の建設を目指していた。2014年5月、乾式法によるセメント製造工場が稼働を始めた。

しかし、セメント・ショホイが債務超過となったため、2015年に政府(当時のサイハンビレグ政権)は、このセメント・ショホイを民営化することを決め、国有財産委員会(Ts.ナンザドドルジ委員長)は、ベイズメント社にたった13億トゥグルグで売却した。セメント・ショホイが所有していた、今後何十年も採掘できるほどの埋蔵量を誇る石灰鉱床、火力発電所、インフラ、工場などの売価は、ザイサン丘にある高級コンドミニアム1軒分の価格にも届かなかった。この事案は、国の資金を使って国の財産を「買収する」ことに長けている貿易開発銀行(TDB)のオーナー、D.エルデネビレグによる政治家と結託して金儲けをする始まりとなった。数ヶ月後、ベイズメント社は社名をフトゥル社に変更した。企業名を変更することで支払いの明細を混乱させるためだった。1990代にエルデネト鉱業をエルデネトコンツェルンに変えた詐欺スキームがこのように続いている。

2015年、民営化に伴い、フトゥルには石灰鉱床が2床あり、製造方法も乾式法技術に転換され、稼働は安定していた。また、製品の品質も向上し、インフラも改善され、専門的で経験豊富な人材が集まった。しかし、セメント製品を生産したセメント・ショホイには売上の僅かな部分しか入らず、ほとんどが貿易開発銀行と関わりのある中間業者が搾取していた。中間業者は、セメント・ショホイから市価よりも安く、時には原価以下の価格でセメントを購入し、市場に高値で販売していたため、セメント工場は赤字に陥った。セメント・ショホイは、それまでの負債を返済するどころか、従業員の社会保険料すら払えない状況となった。

アマルサイハン副首相は、「2015年初頭、フトゥルのセメント・石灰の工場を13億トゥグルグで買収した者たちは、開発銀行から無利子、無担保で3,000億トゥグルグの融資を受けたが、今日まで1トゥグルグも返済していない。さらに、税金や社会保険料など200億トゥグルグの未納がある」と発表した。

フトゥルの今

2022年3月23日、政府は、フトゥルのセメント・石灰の工場に関連する問題について議論し、国有財産として所有権を国に戻す決議を出した。国会は、2015年の民営化の決定を無効とする決議案を5月12日に協議した。国会議員B.エンフバヤルは、「この民営化は横領であり、審議もたった1日で行われた。この会社の設立者は、最高裁判所判事であるB.バトソィール氏の父親で、当時、貿易開発銀行(TDB)の法務課の課長だった。」と話した。

本来、一度民営化された企業を再び国有企業の戻すならば、裁判所の判決によって確定され、まず国が財産を没収するべきである。しかし、モンゴル国の裁判所には独立性がなく、この種の紛争は数年にわたり長引くようになっている。いずれにせよ、政府は新しい社長を事実上任命し、そのチームは迅速に仕事に取り掛かっている。

国および地方の財産に関する法の第62条には、「買収側が、資産の価格、法律、契約書に定められたその他の支払いを期限内に完了しない場合、又は支払いが違法だった場合」、「買収側が法律に定められた以上の免責や特権が与えられた場合」、「買収側が、公的財産の民営移管に関する契約書による義務を契約期間において適切に履行していない場合」といった根拠があれば、民営化を違法とし、無効にできるという規定がある。また、コンセッション法の第8条1項2には、「コンセッション契約書の期間中にコンセッション項目の民営化を決定することを禁ずる」としている。

新たに任命されたL.ナランバートル社長と彼のチームは、売上の一部を横領する者を排除したことで、4ヶ月前まで1,200億トゥグルグの赤字だった工場は、4月から7月までの4ヶ月間で135億トゥグルグの黒字に転じさせた。さらに、未納分の社会保険料175億トゥグルグを支払った。加えて、81,000トゥグルグしかなかった口座残高が、今では100億トゥグルグとなった。従業員の給与は約2倍に増え、平均給与が250万トゥグルグとなった。

現在、長年使用されてきた総延長60mの炉の内壁を修理するなど、設備面での修理と改修が行われている。パンデミックの影響でエレンホト市の国境が閉鎖され、耐火レンガの到着が1ヶ月遅れたが、それでも工員たちは21日以内に炉の内壁を修理し終え、10月1日からセメントの供給を再開する予定である。したがって、今年は、40万トンのセメントを生産し、過去最高記録を更新するという。国有企業だとしても、経営陣が横領しない限り、大きな変化をもたらすことができることをこの会社が証明した。

フトゥルの将来

フトゥル市は、自然環境や産業集積地の観点から、モンゴルのもう1つの大きな都市、および開発中心地になる可能性を秘めている。

フトゥルは、ダルハン、エルデネト、ウランバートルというモンゴル3大都市に囲まれた場所に位置している。そして道路および鉄道でこの3大都市と結ばれている。つまり、フトゥルは、黄金の三角地帯の中心に位置しているということだ。発展をもたらす主要なエンジンは、セメント・石灰産業である。生産、開発、輸送および物流ネットワークの構築という政府の政策により、産業、エネルギー、インフラ関連のプロジェクトが実施されるほど、セメントの需要と消費は増加する。これにより国内産業は活性化され、フトゥル市は今後も成長を続けるだろう。フトゥルのセメント産業は、モンゴルの中部およびハンガイ地方の建設資材の需要に完全に対応できることも付け加えておこう。

このセメント・石灰の工場は、フトゥル市に暖房を供給し、エルデネト鉱業には石灰を供給している。

またフトゥル市には、コンクリート製の枕木を生産する工場もある。年間18万個のコンクリート枕木を生産する能力を持つこの工場は1997年に稼働しはじめた。

サイハン郡フトゥル市の将来の姿を定義する開発計画実施には、おおよそ3,200億トゥグルグの投資が必要であるという。そのうちの1,600億トゥグルグは、フトゥルのセメント工場の設備、および技術革新に充てられる。このような多額な投資を誘致するためには、国際投資家が何を求めるかを考慮する必要がある。今日、大規模な投資家は、物質的リスク、資産を増やす可能性を考える際に、財務だけでなく、自然環境や社会、ガバナンスなど非財務的要素も考慮するようになった。

次に、セメント工場は、環境に配慮したものにするため、爆破ではなく資源を分けて採掘する新しい技術を導入することを目指している。ボーリング、爆破、破砕などの採掘コストを抑えるためにWirtgen SM 2200という機械を導入するという。年間100万トンの石灰岩を分類し、採掘する。これにより粉塵が大幅に減少するという。この機械は、Shivee Ovoo炭鉱で試用され、成功したそうだ。

社会的発展に目を向けると、従業員の給与は2倍になり、社会保険料の未納分を支払ったため、商業銀行は従業員に住宅ローンを提供できるようになった。住宅団地の建設に技術的支援、従業員の住宅ローンの保証など、段階的かつ現実的な対策を講じ始める予定であるという。

ガバナンスの面では、透明性を高めることによって、他の国有企業にとっても良い見本となっている。経営陣が不正を働かず、ガバナンスが透明であり、ビジョンが明確で、誰もが信頼を得るために努力すれば、大きな変化と改革を起こすことができる。

また、全国にこのセメント工場の事例を紹介し、共感を得ることができれば、株式発行で資金を調達することもできる。最近、2兆8000億トゥグルグの資金を国民から調達した事例もあるほどだ。

いずれにせよ、フトゥルのセメント工場の経営陣、および従業員は、フトゥル市の発展のために動き始めた。

2022年9月27日■

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