予算と負債、そして国民

Jargal Defacto
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BUDGET, DEBT, AND YOU

2022年11月11日に開かれた国会で、2023年のモンゴル国家予算案が承認されました。緊縮財政といわれるこの予算は、1兆4000億トゥグルグ、GDPの2.6%に相当する赤字が計上されている。しかし、赤字額は前年比の2分の1に減少したという。

来年、GDP成長率は5%まで上昇し、54兆4000億トゥグルグ(現在の相場レートで160億ドル)に達する見込みだそうだ。歳入は19兆トゥグルグ、GDPの34.9%、歳出は20兆4000億トゥグルグで、GDPの37.6%に相当する。2023年末にはモンゴルのインフレ率は1桁台になるという。

この予算は、新規投資の不実施、歳出の制限、投資やビジネス環境への税政策による支援、鉱業や産業分野の大規模プロジェクトの完了、エネルギー分野の新規プロジェクトの実施、ウランバートル市の公共交通機関の停留所改装、サービス分野の質に関する問題の包括的問題解決、交通渋滞の緩和、ウランバートルから地方への移住を支援するための税制や給与に関する政策の実施、経済の安定化、あらゆる段階での財政規律の実施を目指している。

果たしてこの予算はどれほど現実的で、国民の生活にどのような影響を与えるのだろうか?

負債

財政赤字とは、国の負債または借金ということである。マクロ経済の安定は、政府の歳入と歳出の規模が同程度の時にのみ維持される。モンゴル国は、2012年から外国人投資家向けに国債を発行してきたが、その資金を活用してドルを獲得できるような真の価値を生み出すことができなかった。そのため、金利と元本を返済するために更なる借金を積み増し、負債を負債で返済してきて今日に至っている。この無責任な行為は「再資金調達」という大層な言い方をされている。

2023年にチンギス国債の5億ドル、開発銀行発行の債券8億ドルを「再資金調達」する。もし国際的な融資提供者たちがモンゴル政府を信用せず、これらの借金の返済を要求すれば、モンゴルの外貨準備高28億ドルのうち13億ドルが債券の償還金に充てられてしまう。そのような事態に陥れば、モンゴルは2〜3ヶ月分の輸入代金を支払えなくなり、トゥグルグの為替レートが急落するということになる。そのため、政府は、財政規律がある国ということを証明するために、赤字のない予算を承認すべきだった。他方、政府の全負債はGDPの70%に相当する(その90%が外国向け債券である)ため、再資金調達はすべきではない。本来、国の負債はGDPの50%以下であることが理想だ。すでに莫大な借金があるにもかかわらず、さらに借金を増やせば、利息が増えていく一方である。

政府が削減すべきだった大きな予算の1つは、パンデミック時にGDPの4%に相当した子ども手当である。しかし政府予算には、月収350万トゥグルグ未満の各家庭の子どもに毎月100万トゥグルグ給付するという子ども手当が盛り込まれた。そしてこの子ども手当は、モンゴル国内の子ども全体の90%が対象になるが、これは2024年の総選挙を見据えた取り組みのようだ。この子ども手当を低所得世帯つまり貧困家庭の子どものみに給付すれば、コストは2分の1に削減され、GDPの2%に相当し、赤字のない予算になるはずだった。票目当てに子ども手当を広くばら撒くより、本当に必要な世帯に給付することが適切である。もちろん、これは政治家の選挙にかつ算段には適さないのだが。

国民

財政赤字が増加するということは、政府の負債が増えることである。負債が増えれば増えるほど税金が引き上げられ、民間企業の投資が低迷し、雇用が縮小する。または、国有企業が数多く設立される。そこにはビジネスはなく、予算性の強い仕事が行われ利益は減少し、雇用も減少する。競争が弱体化し、イノベーションが低迷し、生産性が低下する。

国有企業が増えれば、才能や能力ではなく、縁故採用での雇用が拡大し、その分野の経済が低迷する。働き続けているにもかかわらず、貧しくなっていくという現象は国有企業に起因している。政府が雇用を創出するのではなく、現金の給付を始めると、商品サービスの価格が上昇する(インフレ状態に拍車が掛かる)。

そのため民主主義の国では、国民は政府の活動について予算を通じて、情報や知識を持って監視し、改善を要求する。モンゴルでこれができた時、国民の生活および働く環境条件が改善し、人々が外国に出稼ぎに行く必要性がなくなる。

2022年11月16日■

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