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Ts.エンフ‐アムガラン (ENKH-AMGALAN TSEELEI)

「グリーンゴールド」放牧地の エコシステム管理 プロジェクトマネジャー


October 29th, 2017


Д.Жаргалсайхан
@jargaldefacto


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29 min


Ts.エンフ₋アムガラン氏は農業経済学者である。イギリスのマンチェスター大学の社会学、開発経済学専攻で修士号を取得し、その後スイスのチューリッヒ工科大学で博士号を取得した。2008年からスイス開発協力機構(SDC)の援助で実施されている「グリーンゴールド」プロジェクトのマネジャーを務めている。


J(ジャルガルサイハン): あなたはモンゴルの放牧地の60%が衰退していて、その原因が放牧地は誰のものでもなくなっているからと説明しました。どうしてそう思いますか?

エンフ・アムガラン: この問題は私が生まれた故郷、育った環境であり、私の人生の一部でもあるため、10年間研究を行い、プロジェクトを実施してきました。憲法上放牧地は国有地です。その放牧地を民間が家畜の飼育などに利用しています。過去25年間で家畜の頭数が増加し、6千万頭になったと殆どの人が嬉しそうに話していますが、一方では放牧地が荒れていることに気づいていません。過去8年間の調査では全国土の65%が衰退しているという結果が出ています。衰退しているというのは、放牧地の水、植物、土壌、野生動物が生きる環境が危機に直面しているということです。地方の放牧地を誰が管理するのでしょうか?遊牧民に尋ねても「過剰放牧により草地が荒れている」以外に何も言いません。みんな問題をわかっていながら、それを解決するための自分たちの役割、義務を認識していないのです。県知事や郡長或いは担当専門家に話してもあまり理解していません。法的側面から調べてみると、モンゴル全土の70%を占める放牧地を管理調整する法律がありません。少しだけ触れている2つの法規定があるだけです。一つは土地法において、冬と春の放牧地は遊牧民同士で話し合い、譲り合いながら利用することができる。もう一つは民事法において天然資源を利用する者は、自然環境に対して責任があるというものです。放牧地は天然資源、特に水、土壌、植物、野生動物を含むものなので、これらを保護するための法律が必要ですが、これが置き去りになっています。

J: あなたの記事には公共の財産は誰のものでもないとあります。200年前、イギリスでは羊の頭数が多くなり、個人の放牧地が足りなくなりました。そこで共有の放牧地を作り、溢れた羊をそこへ入れました。羊を多く入れた者は、それに応じた負担を負うこととしました。こういったシステムをモンゴルではどのように実施できますか?

エンフ‐アムガラン: これについては過去10年間、様々な研究者が協力して数多くの実験を行っており、その中で良い事例もあれば悪い事例もあります。私たちは放牧地を調整し管理しようとすると、遊牧民は場所に縛られては放牧ができないから管理は必要ないと言います。実際、一つの家庭は、冬場・春場に代々から受け継がれた同じ放牧地を利用してきました。そこで私たちは、従来からの決まった場所だけで移動できる様、調整しました。最近では、家畜頭数を増やすことは良いことだという風潮があるので、遊牧民は家畜の過剰放牧をしています。問題はここにあるのです。

J 家畜の所有者が都会に住み、牧夫を雇って自分の家畜を放牧地で飼育させています。牧夫に家畜の世話をすべて任せ、放牧地への責任を持っていないという問題もあります。

エンフ‐アムガラン: 過去25年間、遊牧民の理解を深める活動が何も実施されていません。例えば、あなたは家畜1000頭を持っている。私は207頭しか持っていない。二人が一つの放牧地を使うとします。この場合、あなたは私より責任をもたなければなりませんので、私たちの責任配分を政府が調整してあげる必要があります。バグ(モンゴルの最小行政単位)に行くと遊牧民は、特定の場所で同じ遊牧民同士で一つの集団をつくり放牧地の利用調整をしています。例えば、今年利用した冬季の放牧地を来年は利用せずに休ませるなどです。国の政策を待っても何も出てこないので、遊牧民たちは自分たちで動き出しています。私たちはこのような調整を政府から政策をもって実施してほしいと思っています。 

J: 調整する他の方法があるかもしれません。例えば、バグの中で幾つかの世帯に冬の放牧地を所有させる。しかし土地を売却してはいけない。世代間で受け継いで利用することができる。世帯ごと一定数の家畜を放牧し、一定数を超える家畜を放牧する場合は税金を払うようにする、というようなことです。

エンフ‐アムガラン: 遊牧民は、自分たちの家畜の過剰放牧が進み、これが問題となっていることを認識し始めました。そしてある程度の調整をしつつある。遊牧民が家畜頭数を減らすことは難しいので、法律で規定する必要があります。私たちは西部地域で60の協同組合の活動を支援しています。その中で協同組合として成長している組合は30程です。協同組合に詳しい人が言った言葉を借りると、成長する共同組合は次の3つの場合のどれかです。組合長を信頼している、組合員同士がお互いを信用している、又は共同資産が大きい組合の場合です。

 遊牧民の基本的な問題は放牧地。放牧地がなければ家畜が飼えない。家畜がなければ生活が成り立たない。家畜頭数が増えすぎて、いざ売ろうとすると家畜が病気にかかったり、売るための市場がなかったりします。例えば、バヤンホンゴル県ボゴド郡にあるバグに6000頭の羊や山羊を売りたいという調査があります。しかし、加工工場や価格を交渉する人がいない。一方、遊牧民は家畜の過剰放牧をわかっていても、市場に出す仕組みがないため解決しようがありません。また他国の事例をモンゴルに導入することはあまり良くないと思っています。なぜならば、モンゴルの自然環境は非常に厳しく、年間降雨量はたった250㎜です。土壌が乾いているため風化しやすく、放牧地を長く使うためには常に移動し放牧地を休ませ、自然に復活できるようにしなくてはなりません。この広大な草地に一度砂漠化がおこるとそのまま広がる恐れがあると懸念されています。

J: あなたはスイス開発協力機構の「グリーンゴールド」プロジェクトを実施しているマネジャーです。このプロジェクトで放牧地の土壌休暇、復活に関する実験を行っています。その結果について話して下さい。

エンフ‐アムガラン: 放牧地の実態評価を各バグにある自然環境監査研究所が設置した観測点にて8年間実施してきました。合計1500地点の情報をまとめ、当該年度の放牧地の実態や農作物量を研究しました。一つのバグの土地面積が10,000ヘクタールとするとその観測地点で得られる有効な観測数値が比較的に小さくなるため、私たちは更に600の観測点を追加して全部で2100地点にしました。そして国立大学、国立農業大学、気象庁、土地管理測地図局の研究者が現地で調査を行いました。

J: モンゴルの放牧地の実態について8年間の調査データが集められ、その結果全国土の65%が衰退しているということが分かりました。解決するために法的及び行政的な管理の必要性について話しました。あなたは特定の放牧地を塀で囲って休ませることについて記事に書かれました。この実験を私はフブスグル県に行く途中でみました。あなたが以前話していたイギリスの事例を聞かせて下さい。

エンフ‐アムガラン: イギリスのある村では放牧地が限られていました。村の住人は自分の利益だけを考えたので、家畜の頭数が増加し、気づいたら過剰放牧が進んでいました。村役場は人々と協議し、放牧地を農家に分配することになりました。放牧する家畜の数が増え過ぎた場合、増えた頭数分の手数料を村役場に支払い、村役場がそのお金を積立て他に必要なものに投資することになりました。簡単に言うと各農家の“家畜数を制限”したのです。

J: これは家畜の質にも良い影響をもたらしたと思います。数多くの質の悪い家畜の代わりに体が大きく、質の良い家畜が育っていったと思います。今私たちが話している話題について研究し、ノーベル経済学賞を受賞したアメリカ人研究者について話しましょう。

エンフ‐アムガラン: 放牧地の私有化が必要という従来の理論に対して、エリノア・オストロムは公共財産として放牧地を共有し、適切に利用する方法を提唱しました。この人の理論がとても面白く、実証を研究して理論を提唱してきました。例えば、ネパールでは農作地をどのように利用しているか、またスイスのアルプス山脈の農牧民は500年間土地をどうやって適切に利用してきたのかなど、世界では公共財産をどのように共有してきたか、その事例を研究し8つの設計原理があると結論づけました。この8つの原理がある時、放牧地は公共財産であっても適切に利用する方法があると提唱しました。

J: 8つの原理とは?

エンフ‐アムガラン: 1.共有資源の境界を明確にする。これはモンゴルでは明確であり、お互いの放牧地を把握しています。2.占有ルールが守られている。モンゴルの場合は遊牧民の間で、この人はいつからいつまでとルールを決めています。

J: 境界やルールが明確である。それから3.当事者が参加して土地利用を決める。4.公共財産を共有するすべての人がルールを認める。またこれを監視する機能がある。紛争解決の仕組みがある。最後に責任の所在が明らかなこと。オストロムが論じたこの原理は長年の研究と努力の結果であり、どの国にも実施可能なものだったのでノーベル経済学賞を受賞しました。私たちはこのように世界で実施されている実験について話しました。この中でモンゴル人ができないことは何だと思いますか?

エンフ‐アムガラン: ありません。ただ、政府が公共の財産である放牧地の利用について法整備をすすめ政策に反映させる必要があります。25年間、放牧地法案を国会に何度も提出しましたが、未だに協議されず採択もされていません。

Jどうしてですか?

エンフ‐アムガラン:様々な要因があると思います。遊牧民は鉱山会社が自分たちの放牧地で鉱物を採掘するから放牧地を利用できないと苦情を言います。一部の研究者はモンゴルの遊牧に関する法整備は慎重にならなければいけないと言います。モンゴルの国会は任期4年制で、法律規定の調整に1年が経ち、2年目で法案を採択するため協議しなければなりません。しかし選挙が迫り国会議員は別のことに注目してしまいます。そうこうしているうちに内閣が変わってしまいます。このプロセスが繰り返されるので全く解決に至りません。

J 他にどんな理由があると思いますか?国民の意見は?

エンフ‐アムガラン: ありません。私たちはこの放牧地法案をもって遊牧民から聞き取り調査を行った時、ぜひ採択してもらいたい、手数料を支払ってでも採択させたいという声があった。

2017年10月28日

デファクトインタビューの内容を一部省略しました。

インタビュー全部を http://jargaldefacto.com/article/ts-enkh-amgalan-enkh-amgalan-tseelei にてご覧いただけます。

 日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia




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